食卓

お題：マイナーな食卓 制限時間：15分

食卓

「ねぇご飯食べないの？」

「食べる必要がないからね。食べ得られるのは満足感だけであって栄養じゃない」

「そんなこというの君だけだよ？　サプリメントだけなんて絶対身体に悪い」

「僕の身体を見てそんなことがいえるのかい？」

「確かに君の身体は普通の人より筋骨隆々だけど……さ」

「せっかく作ってくれたお弁当を食べないのは悪いって思ってるけど、これは真理だから変えられないんだ」

「でもサプリメントってお金が凄くかかるでしょ？」

「これは自作なんだよ」

「へぇ……えっそうなの？」

「あぁ成分表さえわかれば簡単なものだよ」

「薬って許可なきゃ作っちゃダメじゃない？」

「君も言ってるじゃないかサプリメントと。それなら問題ない。ミキサーで野菜ジュースを作るようなものさ」

「ミキサーでできるものとはちょっと違うような気もするけど……人差し指の先っちょで隠れちゃうジュースなんてないよ」

「まぁ……確かにジュースではないよ。そんな美味しい味はしない。病的までに凄くまずいカプセルの味だ。中身はもっとまずい」

「お腹空かないの？」

「そういうトレーニングしてるから大丈夫だ。人によっては水だけで生きてるモノもいる。サプリメントだけなんてまだ優しいものだ」

「そういうものなのかな？　将来不安になるよ」

「将来？　未来もきっとこの生活を続けてるさ」

「ち、違うよ……私との生活がさ？」

「そうだな。きっと僕は家にいることが少ないだろうからおかずぐらいは口にするだろうね」

「ほ、ほんと！？　じゃぁ頑張るね」

「あぁ。味の評価は期待しないでくれよ。旨いものを旨いといえる状態じゃないんでね」

「そこ自慢げにいうことじゃないよ……。はぁ未来の食卓はやっぱ不安だよ」

「大丈夫。生きるってことは必ず食べるが機能してる必要はない。いつだって人間は進化を求められる。その第一歩がこうなってるだけに過ぎない」

「そうかなぁ。もし赤ちゃんができてそうなったらちょっと怖いかな」

「遺伝は多少あるかもしれない。サプリメントしかとれない遺伝ってのは想像つかないけど」

「うーん……なるようになるしかないかな」

「そうだね。決まった未来はないし、決まらない未来もない。未来は未来でしかない」

「そんな言葉遊びみたいなこと言われても困っちゃうなあ」

「確定した未来ってのはないんだから気にせず行こう」

「はぁ……そうかもね。あっこの新作の菓子パン美味しい」

「そっか」

「そうだよ」