記憶
バブみ道日丿宮組
お題:記憶の人体 制限時間:15分
記憶
「知識が継承されるというのはつまり死んだことにはならないのか?」
「さぁ私も私であってかつての僕でもあるわけですからね」
部室で読書に勤しんでる幼馴染はいかにもどうでもよさそうだ。
「覚えてるだけであってその人ではないから生きてもいないと思うんですよ」
「なんだそれ、はっきりしろよ」
「私に言われても困りますよ。世界がこうなんですから」
酷く不機嫌にな幼馴染だが言葉をやめることはできない。なぜなら俺という俺がわたしであってわたしじゃないのは凄く気持ち悪い。
「かつて女だった男がお前のこと好きだって言ってもいいのかよ」
「別に私は構いませんよ。愛に思い出はいるかもしれませんが別の人生を歩んでも良いはずですよ。あぁちなみに私と付き合うのはやめたほうがいいです」
パンツを見られることを気にしないことを言ってるのかはさておき。
「性別って大事じゃん? ほら、男が好きな男になるってことでもあるしさ?」
「いやぁもう性別変わってるんですから気にしてもあれですよ。あぁでも……成長期過程で変わったら私でも気にしますかね」
幼馴染はパタンと本を閉じた。
「大体全部の記憶を覚えてるといっても記憶を辿る方法がないんですから意味ないですよ。どれだけの記憶が人体にあるかわかってます?」
「わからん! だが気持ち悪い」
「話になりませんね。私がキャロルであり、ロミオであり、ルーズベルトでもある。けれど、それは過去で今の私ではないです。あーでも読んだ本がたくさんあるのは残念ですね。新しい本は読んだことがないって言えますが……、古い本になると記憶が戻ってくるのか内容知ってるんですよね」
だからこそ人間は悪い成績を学校では取らない。
今の時代、いい成績をとる=いい性格であることが決定づけられてる。誰しもがどれもこれもできるのだから仕方のないことではあるが、特性が強くない個性というのはおかしい。
「納得できないなら……そうですね。ここで私と性行為をしてみますか」
「なっ、なにいってるんだよ!」
「ほら、そこは経験のない男性の反応じゃないですか。過去にやってたという記憶はあるのに」
「だってしょうがないだろ!?」
したことないんだから!
「はじめてと感じるならもう過去は過去と割り切ってることですよ。なので」
幼馴染が制服のボタンを外しながら迫ってくる。
「過去を忘れてしまうくらいのことをすればいいのです」
そうして俺ははじめての口づけを奪われそれからなすがされるがままに未来をもらった。
記憶 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます