第27話
※更新頻度落とします
「なぁんだ、あっきー今日は勉強とかしてないんだ?」
「今日はたまたま予定があったんだよ」
「ふーん、」
寧々は俺の事を舐めまわすようにジロジロ見てくる。
「それで?2人はなんで?」
「なんでってそりゃ八焼き食べに来たに決まってんじゃん。
他に何があるの?」
「いや、そういうことじゃなくて···」
なんか話してたらここに来たくなったとかそういう話を俺はするのかと思ったらまさかの真顔でそんなことを言われるとは···
まぁたしかにそう言われればそうなんだが···
ってかなんでほんとにこの辺の人は何かあるとここに来たがるんだか···
「ってことでオヤジさん、私は八焼きで、白愛ちゃんは?」
「え、あ、じゃあ同じもので」
小鳥遊さんも寧々と同じように頼むと2人は俺の右隣りに座ると置いてあるおしぼりで手を拭き始める。
「いいのか?前は八八を頼んでたけど···」
オヤジが珍しく客に話しかけていたのと小鳥遊さんが八八を食べていたという2つに俺と寧々は驚きを隠せなかった。
「うそ、だろ···?」
「白愛ちゃん、あれ食べたの?」
とはいえ、俺は少し考えたら彼女なら大丈夫だと思い込む。
味覚がない人が辛いものを食べた時にどうなるのかは知らないが多分大丈夫なんだろう。
だが、それを知らない寧々からしたら···
「白愛ちゃん味覚大丈夫!?あれを食べて平気とか···」
寧々のギリギリ辿り着きそうで辿り着かない質問に小鳥遊さんは慌てながら誤魔化していた。
それが当たりだとほぼ確信しているがために小鳥遊さんが慌てているのがハッキリと分かるのだが、もし知らなかったならそれにきっと気付けなかった。
「そういえば青山先生も普通に八八を食べてたな」
「えー!ってかあっきー、青山先生といたの?」
「あ、やべ」
多分だけどこれはあまり言っていいことじゃないだろう。
仕事時間に先生が生徒と一緒に飲食店にいるなんて普通の生徒は知らないことだ。
要するにああやって呼ばれるのは色んな意味で問題児ということだ。
実際何度か呼ばれた俺もまた先生たちからすると問題児なんだろうか····
「ん〜?あっきー何その意味深な慌てようは?」
「なんでもねぇよ」
「まぁいいや、あっきーなら色恋沙汰では無さそうだし」
「どういう意味だコラ」
「そのままの意味だって〜せっかく告白されたのに断っちゃうんだからあっきーが結婚する未来は来ないかもね」
「そんなことは無いだろ···」
「そんなことあるって!あっきーと結婚しようとする人は多分変わった人だよ、うん」
寧々はそう言って深く頷く。
「白愛ちゃんもそう思わない?」
「さ、さぁ?」
ここ最近関わりがあっただけの小鳥遊さんにそれを聞いたところで分からないのが当たり前だろう。
「もぅ〜私の味方はいないのか〜?
あれ?あっきーそのたこ焼き食べないの?」
「あぁ、俺はいいかな」
「ふーん、じゃああたしが貰ってもいい?」
「別にいいけど···」
そう言って俺は寧々のところにそのたこ焼きをスライドする。
「一応聞くけど八八とかを頼んでたりはしないよね?」
「ん?あぁ、俺はいつも頼む時は八焼きだよ」
出てくるのは八八だけどな、
俺はそう思いながらいつもいじられてる仕返しとばかりに寧々を騙す。
とはいえ、別に嘘はついてない。
俺がいつも頼むのが八焼きなのは本当だ。
だが、届くのが毎回八八なだけだ。
よって悪いのはオヤジだな、
なんて思ってると思わぬところから横槍が入る。
「寧々ちゃん、それは八八だ」
「え?嘘!?あっきー!!」
「なんでオヤジがそんなこと言うんだよ!!いつも喋ると昔の喋り方になるかもって喋らないで寡黙なキャラを突き通そうとしてるのに!!ってか俺が八焼きを頼んでもオヤジが八八を出すんだろ!?」
「オヤジさんがそんなことするわけないじゃん!この裏切り者!!危うく死にかけたわ!!」
グッ、まさかオヤジが寧々や小鳥遊さんの前で喋るとは思ってなかった···
「ふふふっ、あっきー、私を怒らせた罰だよ」
「お、おい待て、なんでそのたこ焼きを掴んでる!待て!おすわり!」
「ほほう?私は犬じゃないので待てないなぁ〜」
「悪かった!俺が悪かったから!お願いだからその凶器を置くんだ!!」
「おい律坊、人の作った食べ物を凶器だァ?ヤキ入れて欲しいんか?」
「今まさに受けようとしてますが!?」
「ヤキってなんのこと?」
「お前は知らなくていいわ!ってか、しなくていいわ!」
聞きなれない言葉に寧々の頭の上にはクエスチョンマークが乗ってるがそれでもその凶器を持った手は止まらない。
「や、やめ····」
そしてその凶器は口の中に放り込まれる。
さっきはすぐに水で全てを洗い流したが寧々がそれを許すはずもなく水に手が届かない。
「させるわけないじゃん?」
寧々はニコッと笑ってるがその笑顔は俺には悪魔のようにしか見えない。
そんなことを思っていると尋常じゃない辛さが込み上げてきて体温が一気に上がった気がする。
「ぐっ、ごっ、み、水を寄越せ!」
「ダメ〜」
「し、死ぬ!」
「死なんわ」
「おまえがさっき、言ったんだろ!?」
「あ、あの、大丈夫ですか?」
心配に思ってくれたのか小鳥遊さんが水を差し出そうとするがそれを寧々が阻止する。
「白愛ちゃんダメだよ、この男には罰を与えなきゃ!」
「で、でも、凄くキツそうですし···」
「そう、だぞ!いい、から水を!小鳥遊さんの優しさを無下にする気か!?」
「はぁ、まぁもういいや、ほれあっきー、お水だよ?」
俺は渡されたというかほぼ奪った水を思いっきり飲み干す。
「ぶはっ!マジで死ぬかと思った。
誰がこんなに辛い物を作ると思うんだよ!」
「ん?なんのこと?」
「なんでもない···」
そんなこんなあり、寧々達が食べるのを見ながら話しているといつの間にか夜も深くなっていたので俺たちが帰ろうとするとオヤジがほかの2人には聞こえない声で俺に話しかけてきた。
「律坊、さっきはあんな事を言ったが、一人で抱え込む必要もない、何かあったら俺に言えよ?手は貸してやる」
「オヤジの手を借りるような事には巻き込まれないようにちゃんと断るものは断りますよ」
「おう、それが一番だ。
あとこれは覚えておけ」
そう言うとオヤジは普段の厳つい顔からは想像ができないような優しい顔をする。
「おれぁ、お前が抱えて生きると決めたもんが正しいと信じてる」
「凛みたいなことを言うんですね」
「俺は、律坊に恩があるからな」
「恩を売った覚えはありませんよ、ここはオヤジが作り上げた場所です」
そう言うと俺は八焼きを出る。
◇▢◇▢◇
「へぇー、あっきーと白愛ちゃんって家、同じ方向なんだね」
「あ、あぁ」
「じゃあ、ちゃんと送ってあげてね!」
「当たり前だろ」
「じゃああっきーも白愛ちゃんもバイバイ!また来週〜!」
寧々が元気よく手を振るので俺と小鳥遊さんも軽く手を振り返す。
寧々ならそこら辺のチンピラに襲われても凛と同じように大丈夫だろうから俺は小鳥遊さんと一緒に帰ることとなる。
というか寧々の家は結構遠いので軽い気持ちで送っていくことは出来ない。
「じゃあ行こっか、それにしても小鳥遊さんが寧々と二人で買い物に行くほど仲良くなってたとは」
「私も驚きましたよ」
まぁ寧々なら1日前に初めて話した相手でも気さくに遊びに誘うこともあるか····
「まぁ、これを機に仲良くなればいいじゃん」
「そう、ですね···」
少し小鳥遊さんが躊躇いを見せたことが妙に気になってしまう。
壊れてしまうかもしれない、
きっとそんなことを青山先生から聞いたからだろう。
どんな人だってそれが壊れやすいものだと聞いたなら見る目も、触り方も変わってくる。
それが人の命だと聞かされたならより一層変わってくるものだろう。
先生が言った子のようにもしかしたら小鳥遊さんはいつの間にかどこか遠い場所へと行ってしまうかもしれない。
その時俺は先生のように一生後悔をするのだろうか。
もしも、俺がそれを望まなかったとしたら····
未来へは誰も行けない、だから、俺がどんな選択をして、どうなるのかは誰も知り得ない。
それが正しいことかも、それがどれだけ、辛く苦しいものかも。
そんな時、俺の横には誰がいるのだろうか···
はたまた、そんな人はいないのかもしれない。
いなくなっているかもしれない。
未来とは、幾つもの可能性を秘め、そして、幾つもの困難が待っている。
だが、それを知るすべは神ですら持ち合わせていないだろう···
「そういえばあの子、いつの間にかいなくなってたな···」
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