第22話
※途中暴力表現を含みます。
苦手な方は飛ばしてください
私がその言葉を言うと凛会長はすぐに行動をしてくれた事で学校では常に生徒会の2年生や3年生、それに加えて彼も協力して、私が学校で1人にならないようにしてくれる。
そのおかげで学校で青木君達が私のことを虐めてくるようなことはなくなって言った。
とはいえ、それで友達ができて言った訳ではなかったが、彼や凛会長は彼の妹の小夜ちゃんも加えて私を遊びに連れていってくれた。
その頃にはもう殆ど虐められておらず、上履きも新調した。
彼と学校で話す頻度も増えて、以前までとは行かずともそれなりに私も元気が出てきた。
それで私達も油断していた。
その日は生徒会で大事な会議があるようで普段ならそういうときは私が会議が終わるまで待ってから彼や凛会長が家まで送ってくれていた。
だが、どうしても早く家に帰らなければならない用事が出来たために凛会長は渋っていたが最終的にはここ最近の被害もなかったために私が1人で帰る事を認めた。
きっと青木君には自分を振った私が彼と楽しそうに話しているのが気に食わなかったのだろう。
私の家の前には青木君とそれを囲むようにチンピラみたいな人達が3人いた。
「今日は邪魔者もいないようだし、来てもらおうか」
凛会長のように強くもない私にはそれに従うほかなかった。
近くの路地裏に連れ込まれた私はもうダメだと覚悟した。
青木君は気が済むまで私を蹴ったり殴ったりしてくる。
最初の方は痛くてしょうがなかったが今ではもう、痛みすらも感じ無くなっていた。
私が呻き声を出すのが楽しいのかお腹を何度も蹴ってくる。
青木君の顔が優越感に浸って満足気だったことを今でも鮮明に覚えている。
いつ終わるのだろう、私はずっとそれだけを考えていた。
彼らと一緒に遊びに行ったのも結局は人生の中の一瞬に過ぎない。
だが、何故かこの時の時間はその一瞬と比べたら短いはずなのに、私には永遠にすら感じてしまう。
世界が私に甘かったことなんか1度だってないんだ。
私の心を支えていた地盤は脆く砕け、いつしか楽しかった思い出もモヤがかかったように消えていってしまう。
まだ鮮明だった彼の姿にもやがてモヤがかかってくる。
だが、それが消えることはなかった。
「いだっ!!」
「てめぇ!!」
何が起こったか私には分からなかった。
だが、それが鮮明になる頃には青木君達は走って逃げていっていた。
「おい!大丈夫か!?」
まだボンヤリとしていたが私の頭の中には彼が映し出されていた。
「待ってろ、今救急車を呼ぶから!」
彼がその後私に何を言ってたかは覚えていない。
ただ、一生懸命に私に話しかけて手をギュッと握ってくれていた。
その手はとても力強く、そして暖かく感じる。
もちろんそれは彼の体温が高かったからではなく私の体温が低くなっていたからだろう。
救急車は直ぐにやってきた。
そして、目が覚めた時には病院にいた。
あとから聞いた話ではかなり危なかったらしい。
それでも私は生きていた。
とはいえ家から出る勇気はもう無くなっていた。
部屋に閉じこもって何もしない時間だけが過ぎていく。
それでも、毎日のように彼は学校が終わると直ぐに私の元に来てくれた。
私が返事をしなくてもめげずに何度も何度も話しかけてくれた。
時には凛さんや小夜ちゃんもやってきて私に話しかけてくれた。
いつだっただろうか、彼が子供の頃小夜ちゃん達に置いてかれて静岡に置いてかれてしまった話をしてくれた。
そこで、お化けのような子がお化けなんてないさを歌っていたとか、その子のことを好きになったとか、
彼自身その事をあまり覚えてないのか話がめちゃくちゃだった。
それに思わず私は笑ってしまった。
すると彼はようやく笑ってくれたと喜んでいた。
それからも彼は放課後私の家にやってきては色んな話をしてくれる。
その内、私も喋るようになって一緒に編み物をしてみたりと色んなことをしていた。
そして、私が恐る恐る、青木君の事を聞くと、彼は渋々話してくれる。
彼によるとあの後、凛さんに見つかってそのまま警察に突き出され、凛さんはその男たちの証言を持って彼の父親の会社に乗り込んだことで事件が大きくなり、彼らは海外に逃げていったと聞かされた。
その後、私はゆっくりとだが学校にも復帰するようになった。
その頃には私は彼の事が好きになっていた。
高校は彼と一緒の所を目指して何とかギリギリで受かることが出来た。
高校では虐められないようにと色々自分を変えて行った。
服を派手にしてみたり、髪の色を染めてみたり。
どんどん変わっていく私は楽しくなり、いつの間にかギャルだと言われるようにもなる。
その頃には彼と話すことはあまり無かったが、私はそれでも彼の事が好きだった。
彼は恋とは無縁そうだったので、彼が学校一美人と言われる小鳥遊さんに話しかけに行ったとき、私は内心、ハラハラしていた。
結果的に告白ではなかったがそれでも、私には焦りが募った。
だから私は彼の下駄箱に手紙を入れた。
◇▢◇▢◇
結局、私は振られてしまった。
涙は拭いても吹いても流れてくる。
階段を降りるとその先には今の友達たちがいた。
どうやら、私が今日、告白することに気づいていたようで先に帰ってもいいと言ったはずだが、待っててくれた。
涙で化粧は崩れてしまい、今の顔はとてもブサイクでそれは、私達が嫌がる物だろう。
けれども、彼女たちは私の背中を撫でて慰めてくれる。
「はぁ、マジで美紀を振るとか有り得ないんだけど···」
「ほんとそれ!意味わかんない!こんなに可愛いのに!」
「他に好きな人とかいたんじゃない?」
そう言われて、私の頭の中には小鳥遊さんが思い浮かぶ。
彼女なら恋に無縁だった彼が一目惚れをしてしまってもおかしくはない。
「他にって誰だよ!」
「あのちっちゃい子とか小鳥遊とかじゃね?」
「はぁ?あんな奴らのどこがいいんだよ」
「いや、寧々はないでしょ」
「じゃあ小鳥遊?」
「じゃない?」
「マジであの女ムカつくよね、モテてるからって調子に乗ってる感じがさー」
「それマジでわかる!」
「あいつ見てると無性に腹立つんだよね〜」
「美紀もあんな奴の性で振られるとかちょー可哀想なんだけど」
私はこの先にどうなるのかがわかっていた。
きっとこのまま私が言わなければきっと彼女たちは····
けれど、その言葉が喉につっかかって出てこない。
その痛みは私が1番知っているはずなのに····
知っているからこそ、私と同じ目に····
私の痛みを知って苦しめば···
悪い事だとは分かっている。
自分がそれでどうなったかも知っている。
だが、やはりその言葉は出てこない。
だって私は、律のことが大好きだったのだから。
友達の中の1人が切り出す。
「ねぇ、あの女のこといじめない?」
やめて、の言葉は誰からの口からもこぼれることはなかった。
どうして、苦しんだ私よりもあの女が選ばれるのかが理解できないから。
それはまるで理解できないものを拒絶し排他する様に、大切な人を奪われた者が復讐を決意するように、
きっと人間が抱く最も美しくて汚くて、大きい物だろう。
だから、
だから愛は罪なのだ。
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