第2話

「なんか理解出来てないような顔をしているんでもう一度言いますね?私って文系だと思いますか?それとも理系だと思いますか?」

「いや、質問の意味は理解してるよ。ただそれをなぜ俺に聞く?」

「私ってテストでいつも満点取っちゃうくらいに天才じゃないですか」

「おい、待て誰も聞いてないし質問に答えろ!」

「いいじゃないですか、乗りかかった船ですよ」


誰がいつ乗ったそんな恐ろしい船に!

そんな事を思っていると後ろから声が聞こえてくる


「あ、あの小鳥遊さん!そちらの男子は!?」

「あぁ、田川さん。こちらの男性は乗組員です、」

「「は?」」


誰かもよく分からない田川くんと見事に声がハモる。


「あ、いや船長の方が合ってますね。訂正します。こちらの男性は船長です。」

「おい、待て。話を勝手に進めるな!まず俺は乗ってすらいない!」

「それで?田川さん、話とは何ですか?私、早く学校をでないと不味いので早めに済ませてくれると助かるのですが···」


あれ?俺今完全に無視された?あいつが話を降ってきたくせに?

こんな横暴なやつ見たことも聞いたことも····あぁ、そう言えばついさっきにもいたな。

そんな事を心で言いつつ俺は担任である青山先生の顔を思い浮かべる。

うん。なんかムカついてきた。

もう帰ろうかな、

思い立ったら即行動。

それが俺の理念だった。

やらなければ何事も始まらないのだ。

だが、一応、言っとかなきゃな。


「俺、帰りますね、、」


田川くんは俺の事を空気を読んでくれてありがとうという目で見ていた。

ごめん、ただ、俺が帰りたいだけなんだわ。

という事でそそくさと教室を出ていく。

彼女には先生が紙を出さないから困ってるということは伝えたし、自分が文系か理系か分からないのなら先生に聞くのが1番だろう。

っていうかあれのどこがロボットなんだよ、めちゃくちゃ喋るじゃん。

そう思い振り返ると、田川くんが教室から半べそかきながら出てきて俺の事を追い抜いていく。

そんな彼に誰が廊下は走っちゃダメなどと注意できようか。

きっと彼は軽いノリで告白したのではなく真剣に告白したのだろう、そして、砕け散った。

南無·····

そんなくだらないことをしていると田川くんに続き小鳥遊さんまで、やってくる。


「あ!アッキーさん、まだ居たんですね」

「秋山な?それと、小鳥遊さんはこっちじゃなく職員室の方へ行くべきでは?」

「バックれます」


そんな彼女の腕をガシッと掴む。


「いいわけないだろ?」

「セクハラですよ、船長」

「ぐぬぬ」


そう言われれば何も出来なくなってしまうのは男の性だろうか。


「っていうか何をそんなに急いでんだよ」

「あぁ、私は早めに学校を出たいんですよ」

「早く家に帰りたいじゃなくて?」

「いや、私は一人暮らしなので別にそういう訳ではないですね。ただちょっと···」

「ちょっとなんだよ」

「い、いえ。秋山さんには関係の無いことですので···」

「そ、ならいいや」


彼女の方が強引に話に引きずり込んで来たにしては関係ないというのは珍しい···

だが、彼女の言う通り俺は関係ないのでそのまま下駄箱に向かう。


「··········あの、」

「はい?」

「なんで後ろに着いてくるの?」

「いいじゃないですか、どうせ下駄箱は同じなんですし」

「確かにそうだけど····」


目線がね······

ただでさえ、教室で話しかけたことで注目されるのにさらに天使様と一緒に歩いているところなど見られたならどうなる事やら···


「そう言えば、あれなんだったの?」

「あれ、とは?」

「自分が天才だ、とか言ってたじゃん」

「あぁ、それですか。私って天才なんで文系の教科でも理系の教科でも満点を取っちゃうから自分の得意教科が分からないんですよね」

「全部満点ねぇ、」


本当の天才には本当の天才なりの苦悩があるんだろうか···


「そう言えば秋山さんもかなり頭が良かったではありませんか確か、最初のテストでは2位でその後はずっと3位だとか」

「知ってたんだ」

「まぁ、一応」


その割にはクラスメイトである事を忘れてた気がするけどね···

ところでこの学校にはほかの学校にはないような特色が幾つかある。

その最たるものが月の初めに開かれる学年集会では前回の中間、期末の1位が自分の勉強方法をみんなに教えなければならないのだ。

だが、これのいただけないところが勉強方法と言っておいて生活の習慣をほとんど話さなければならない事だ。

勿論、本来ならば全教科満点である彼女がするべきことなのだ。

だが、彼女は1度たりとてそれを行ったことはない

その理由は簡単だ。

そう、今、文理選択の紙を渡すのをバックれているように学年集会をもバックれるのだ。

そのお陰で1番最初の役は2位だった俺が急遽やるはめになったのだ。

それからは2位にならないように尚且つ高得点で居られるように頑張ったものだ。

そのせいで今の2位の人は皆からまたお前の話かよ、早く小鳥遊さんのことが知りたい、など散々な目にあっているとか···


「なぁそろそろ学年集会をバックれるのは辞めたらどうだ?皆、小鳥遊さんがどんな勉強してるのか気になってるだろうし」

「普通に嫌ですよ、どうしてよく知りもしない人に私のプライバシーを教えなければならないのですか?女子にそれをやれと強要するのはセクハラですよ」

「男子はいいのかよ」

「嫌なら秋山さんもバックれてしまえばよかったのに」

「いや俺も最初そうしようとしたんだけど青山先生に止められたんだよ無理矢理」

「そうなんですか。私の時は逆に言いたくなかったらバックれちゃえって言ってくれましたけど?」

「え、嘘」

「嘘じゃありませんよ」


あぁ、何か分かった気がする。

自分で小鳥遊さんにバックれる癖を与えた以上無理矢理捕まえて紙を回収するのが厳しいから俺にやらせたのか···あの先生は全く

気付けば下駄箱に着いていたため俺たちはそのまま分かれることとなった。


「じゃあな、」

「はい、また明日ですね」


▢◇▢◇▢


俺の住むマンションは6階建てで俺はそのマンションの5階の一室を借りて住んでいる。

両親は父の仕事で母親や妹と共に大阪の方に行っているため、俺は1人でこっちに残って一人暮らしをしていた。

俺は家では基本的に勉強をしてるそれは、もし20位以下になったなら大阪に来いと言われているためだ。

元々俺は天才とかではなく、毎日のように勉強をしなければテストで、上位など取れない。

今日も帰ってから1時間ほど勉強をしたところで、

時計を見たところ時刻はやく6時半頃になっていた。

今は、まだ夏が終わったばかりでこの時間でも少し明るいが腹が減ったためにキッチンの所に置いてある夜ご飯を探す。

しかし、家の中に夜ご飯が何も残っていなかったため、夜ご飯を買う為に近くのコンビニまでいく。

やはり、低コストでこの質、カップラーメンは最高だ。

だが、これを敦也に言うと馬鹿なんじゃないか?と至極当然のようなことを言われてしまうだろう。

そんな事を思いつつ、まだ夏の暖かさが残ったような空気の中、家に戻ろうとして道を歩いていると、

見覚えのある人物を見かける。

というより、あんなに肌も髪も白いのはこの辺りでは彼女ぐらいのものでは無いだろうか。

彼女は辺りを見渡してキョロキョロとしていた。


「小鳥遊さん?何してるの、こんなところで」

「あ、アッキーさん···これはその、」

「秋山な?このくだりいつまでやるんだよ。それで?何してるの?」

「家に帰っています、」

「は?いや、俺たち分かれてから1時間は立ってるよな?」

「そ、それは···これには重大な事情というものが」


学校からここまでは20分もかからないはずだ、

そんな場所に1時間前に下駄箱で分かれたはずの彼女がいるのはやはりおかしい、ビニール袋や、スクールバッグ以外のカバンを持っている訳でもないので買い物をしてたという事でもないだろう。

ってことは···


「誰かと遊んでたのか?」

「そ、そうですね!そんなところだったりもします」

「そうか、じゃあ気をつけて帰れよ」

「ちょ、ちょっと待ってください」


そう言って彼女は俺の腕に抱きついて止める。

そしてもちろん青山先生程ではないが程々にあるそれが男心を刺激する。

はぁ、日に2回も···厄介事の予感が···


「何ですか?」

「気をつけてくれって心配してるってことですよね?」

「まぁ、そうなるな···」

「なら、ちゃんと家まで送ってあげるのが男子ってものじゃないですか?」

「偏見だ!離せ!俺は勉強をしないと行けないんだ!」


そうやって俺は彼女を引き剥がそうとするが彼女はより力を込めてくる。

だから、当たってるんだって···


「知ってますか!?世界にはアルビノの人間で呪具を作るために拉致したり殺したりする人がいるんですよ!?しかも私ぐらいの美少女になるとあんなことやこんなことまでされてしまうかもしれないんですよ!?」


あんなことやこんなこと····

って!


「変なこと想像させんじゃねぇ!」

「ど、どんなことを想像したんですか!?」


そ、それは···

聞くなよ!

はぁ、ったく


「それで?送り届けてやればいいのか?」


俺がそう確認するとコクと頷く。


「はぁ、わかったからその腕を離せ、さっきから当たってるんだよ」

「な、な」


すると彼女は雪のように白かった顔がトマトのように赤くなる。


「な?」

「変態!!」

「お前が当ててきたんだろ!?」

「早く言ってくれれば良かったじゃないですか!もしかして時間を稼いで堪能とかしてたんじゃないですか!?」

「そ、それは」


否定できない···


「ま、まぁいいですよ。もう、一応送って貰うのでそのお礼ってことで···」

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