唐揚げとAV、翌朝の19歳
「りつ、14時」
すごく近くから砂糖さんの声がする。じゅうよじって何。
「りつ、気温低いから服着な。」
肌に直接布団カバーが触れていて気持ちいい。何も着ていない方がよく眠れる気がする。
「りつ、起きないの?」
「ねる」
だって、昨日は明るくなるまで起きてたじゃんか。つかれた。遠くからパトカーの音が聞こえる。猫の鳴き声も。邪魔。うるさい。
「砂糖さんたってますね」
喉がカサカサして話しづらい。昨日声出しすぎたかな。わざとらしかったかもしれない。
「りつ、僕バイト行くよ?」
「やだ」
砂糖さんに抱きつく。どうして私を置いて何処かに行ってしまうんだろうかと考える。足りない。私には、なんにもなんにも足りてない。
「りつ、今日はちょっと寒いから服を」
「着ない」
肌が直接触れ合っているから私は少し安心できるのに、服を着るなんて何を言っているんだ砂糖さんは。
「服。着せようか?」
「やだ」
足を砂糖さんに絡める。
太ももに固いものがあたる。とりあえずは私を必要としてくれていることがわかる。嬉しい。
同時に、どうして誰も私を本当に心からは必要としてくれないのだろうと思う。
ずっとずっと私を丸ごと必要としてくれてる人は現れないし見つからない。現時点では、それまでのつなぎである砂糖さんしか、見つからない。どうして?私の何が問題なのかさっぱり分からない。
私は、寝起きで乾ききった口を開く。
「もう一回すればあったかくなるよ」
「りつ声かすれてるよ? 昨日何回したか覚えてる?」
ああ、とってもいい。この会話の感じ。
多分、まるでカップルみたいだ。愛し合う、みたいなことを錯覚することができる。
そんな愛し合っているカップルの彼女の方が、ここで可愛らしくこう言ったら多分100点だろう。
「しよ?」
思わず口角が上がる。幸せの錯覚ができる。
すると、砂糖さんの左腕が私の頭を抱え、右腕が背中を撫でてくる。顔は私の頭にうずめられる。
少し驚いたけど、すぐに最高、と思う。タイミングもばっちり。私の本当に欲していることをしてくれた。セックスじゃなくてハグ。大切にされている感覚。
本当に私に都合良い人。そんな都合良さがとりあえず大好き。涙が出ちゃうくらいには最高。幸せ。これが幸せの錯覚。とりあえず幸せ。
このまま、まどろんでしまおうと思う。そしたら砂糖さんは動くことが出来なくて少し困るだろう。そんなのまるで仲良しのカップルみたいじゃない? 多分、とっても素敵。
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