唐揚げとAV、翌朝の30歳

 りつの肌は病的に白い。そして痛々しいかき壊しでボロボロだ。肌が弱いらしく、いつも大量の薬を塗り込んでいる。何も着ていないりつは弱々しく見える。

 上半身がとても薄いりつとの行為は、なにか壊れやすいものを犯している様でなんとも言えない優越感の様な興奮を感じる。

 首の下あたりまで伸びた細い髪の毛は、透明感のあるベージュ色に綺麗に染められていて、りつの弱々しさを際立たせている。

 細くて、まっすぐで、柔らかい、自分のそれとは全く異なるりつの髪の毛を触る。前に髪を褒めたら、「ある程度金をかけた結果」とのことだった。

 もうすぐ14時になる。あと少しでコンビニでアルバイトだ。

 白くてハリのある胸を触る。かなりいやらしく触っても、起きない。少し唸るだけだ。

 りつは、目覚めが悪い。そして寝付きも悪い。行為後、かなり疲れていてもすぐには眠れないようで不安そうに抱きついてきて、「寂しい」と言う。泣いているときもある。そういう時のりつは、普段とは真逆でとても幼く見える。

 彼女の両親は、彼女に愛を注ぐことを少々怠っていたらしい。

『子供の頃は、親からの愛が欲しかったけど、親の事を客観的に見れるような歳になってからは、そうも思わなくなった。こんな人に愛されても嬉しくないな、って。でも寂しさだけはしっかり残ってる』

 彼氏つくって愛してもらうのがいちばん良いのは分かってるんだけどね、と以前言っていた。きっと彼女は自分が随分と寂しそうな顔をしていた事に気がついていないだろう。


「りつ、14時」

 りつは、なにそれ、言って寝返りをうつ。明らかに寝ぼけている。

 りつが動くと、掛け布団がずれてその白い胸がみえる。左胸に2つ並んだホクロと目が合う。この2つのほくろはスマイルマークの口を消したみたいな配置で、個人的にとても好きだ。りつはほくろが多い。

「砂糖さんたってますね」

 りつの寝起きの声は普段よりもさらに低い。

「りつ、僕バイト行くよ?」

「やだ」

 抱きついてくる。

「りつ今日はちょっと寒いから服を」

「着ない」

 りつの体は少し冷たくなっている。

「服、着せようか?」

「やだ」

りつが足を絡めてくる。

「もう1回すればあったかくなるよ」

「りつ声かすれてるよ? 昨日何回したか覚えてる?」

 いーじゃん、と言って手も絡めてくる。そして小さい口を開く。

「しよ?」

 りつを抱きしめる。柔らかい髪に顔をうずめる。僕と同じシャンプーの香りがする。

 りつは、酔うと「セックスもしたいけどそれ以上にハグがしたいんですよ」とよく言っている。それから「未成年飲酒、って語呂が良い」もよく言う。後者はよく意味がわからない。

 僕は、左腕でりつの頭を抱えるようにして、右手ではりつの背中を撫でる。僕のTシャツの胸のあたりが湿ってきたのでどうやらりつは泣いているようだ。

 りつは、優しくされるとすぐに泣く。優しく近寄ってくる悪い男に簡単に引っかかりそうだ、と常々思う。

 しばらくすると、りつはまた寝息をたて始めた。動けない。

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