第12話
~物語の終わり~
最後に言っておくと、俺はただの人間だった。
いや、そうありたかった。「人らしく」生きたかったんだ。
メモはこんな内容だった
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俺の名前は「尾更木」殺人をしてはいけない理由が分からなかった。でも人らしくありたかった。
そのために、どんなへんな治療でも受け入れた。そんな時、物好きなジャーナリストがもぐりこんできた。で、その手帳を至極大事そうにしていたよ。
彼は神薙村の奥地に行こうとしていた。俺は彼と入れ替われば、「普通の人間」の生活をすれば「人らしく」なれるのではないだろうか。
まずはあいつの口調から真似しよう。「僕」が一人称だ。これは俺の決意のページだ。もう二度と開かない。尾更木は死んだ。彼に俺はなりきるんだ。そして獄中で彼の腕を縛っていたひもを解くと自分に巻き付けるんだ。そうして俺は彼として生きてみよう。
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それが今、もれだす記憶とともにすべてが無駄になったということだな、このメモを見ているということは。
所詮人は変われない。
面白おかしく、犯罪を扱った本を見て、それに感化されてまねごとをしていた日々。もう、戻れないのか。
あの殺してしまった幼女は、どうなっただろうか。
愛が分からなかった俺は、幼児向けアニメで描かれた母親の様なものを彼女に求め続けた。もちろん、出来なければ殺すことを繰り返す続けた。
でも、後悔はない。ああ、サイレンの音か。あいつの仕業か。ジャーナリストめ、死んでもなお俺を追いかけ続けるんだな。
もう終わりか。
でも、一つだけ言っておく。
「人らしい」ってなんだ。人並みの人生を生きて飯を食って命をつなぐ。でもその命なんて、ナイフでぶっさせば一瞬で終わる。そんなもろいものに執着するお前らはいったい何者なんだ。
人らしく また冬 @tsubakisaki
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