第9話

自分へ


記憶をなくした自分に向けて将来の文章を書くなんて思いもしなかった。しかし、ここにすべてを書いておこうと思う。今多分、自分は神薙村にいるはずだ。ここは、薬を回された患者たちが最後の時間を過ごすための村のはずだ。


腕がない理由だよな、気になってるのは。

ジャーナリストだった。そこで、ある精神病棟をずっと取材してたんだ。毎日生理食塩水を注射するという意味のない行為を繰り返している病棟があって、そこで行方不明者が続出しているといった話があったんだ。そこで俺は、敢えて病気の診断を受けてそこにもぐりこんだんだ。で、自分にもついに薬が打ち込まれたんだ。


そこで俺は隠していたひもで腕をきつく縛り上げ、バスでこの町まで輸送された。物質の違いなのか幻覚はまわっているが毒はギリギリ抑え込まれていたらしい。毒が回らないよう、協力者に連絡を入れて腕を切り落としてもらう算段だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る