第8話

「誰かが考えたんです。余計な死ぬべき命があるのではないかって。」

そう男は言うと、長々と話し始めた。


大方あらすじはこんな話だった。

人は増えすぎた。「間伐」してやらなければならない。じゃあ、どうすればいいのか。少子高齢化問題が取りざたされているなか、考えられたのは老害の大量虐殺だった。年金問題を解消する上に、高齢化問題・病院の占有など一気に片が付いてしまう。しかし、政治家たちは考える。その年になってしまったら、自分たちも殺されるという仕組みが出来上がってしまうのでは?それを恐れた政治家たちは、自分が殺されないシステムを模索し続けた。

そして、白羽の矢が立ったのが病気の人だった。医者に支給される国家予算も医者の意義をなくせば解消される。そこで、入院1か月以上が診断された人間は片っ端から殺されることになった。

1番に目をつけられたのが、精神病棟の末期患者たちだった。彼らは、もう死ぬまで出られないのだから。と。


話が終わっても何も分からなかった。

「まて、なんで俺とそれがどう関わるんだ?で、この町は何なんだよ?」

「いやだから、あなたもその集団殺人の瞬間に居合わせたんですよ。」

「は?」

「毒物と幻覚剤と睡眠剤が混ぜられた注射を打ち込まれて、皆この町に連れてこられたんですよ。」

男は、メモを読みながらそう言った。

「なんだそのメモ?」

「はい、お返しします。もともとあなたのですからね。」

それを受け取り俺はびっくりした。見覚えのある自分の字がそこには書かれていたのだった。

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