第7話
「じゃあ、いいですか。話しますよ」
俺はいらだちながら頷いた。
「早く話せ」
「あなたが、腕がない理由でしたよね。それは、私が切ったからです。」
「は?」
「ですから、私が切ったからです。」
一瞬意味が分からなくて、頭を抱えたくなる。しかし、その肝心の抱えるための手が俺にはないのだった。
「でも、あなたが聞きたいのはそういうことじゃないんでしょう?なぜ、無くなっているのかの直接的原因を聞きたいのではない。経過が知りたいんですよね?」
「なぜいちいち確認をする。いいから早くそのまま続けろ」
「ええ、では言いますけど、あなたはもう少しでまわっていたんです。」
「まわる?」
「アメリカの死刑囚制度はご存じで?」
「興味ないが・・・」
「いわゆる薬殺刑の対象だったんですよ。あなたは。」
「はあ・・・」
「だから聞いたんです、経過を知りたいのか理由を知りたいのか。」
「頭の痛みが治まらないが、経過をすべて教えてもらっていいか?」
「分かりました、では、全てをお話ししましょう。」
そう言われると俺は、最悪な記憶を思い出さなければならないことを覚悟した。きっと、これまで敢えて封印してきた記憶であり、何も触れてこなかった記憶がここにあるのだと思われる。そんな「記憶」にふたをし続けた自分の在り方に疑問をもち、全てを受け入れる。これはどうしても避けられないのではないだろうか。そう心の中で感じてはいるのだが、やはりやるしかないのだろう。あの少女の名前を思い出すことが大事にはなるだろう。
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