第6話
何度も同じ世界をループしたような感覚が頭痛を助長する。頭の痛さは相変わらずのようだった。
「何度も会ったはずのあの子は誰だっけ。」
思わず独り言をいう。
「え、どの子のこと言ってます?ここらに若者なんてほとんど少ない。」
先ほどの男が目の前にいた。こちらをのぞき込んでいる。
なるほど、布団の上で寝ているのか、俺は。
先ほどと言っても何日も前にあったような感覚だ。顔をよく見ると、30代というよりかは20代くらいだろう。所々ニキビの跡が頬に残っている。振り返ることなく話していた印象があったため、いざ顔を見ると得体の分からない不安感は払しょくされた。
「まあ、でも子供がいない町なんてないですからね。どこかの子供でしょう」
すこし、ひきつった笑みを浮かべながら男は笑う。
確かにそうなのかもしれない。
「それより、もう体は大丈夫ですか?」
沈黙に耐え切れなくなったのか、男は話しかけてくる。こちらとしてもありがたいことだが、はて、どこか体調を崩したのだろうか。確かに、頭が痛いがこれはよくある寝起きの頭の痛さだと思うが・・・・
左腕がかゆいと思い、右手を左腕にやると空を切った。思わず左手に手を向ける。いや、左腕があった場所というのが正しいのかもしれない。
「なん・・だよ・・これ。」
「大丈夫ですか、打ち切るために肘から下は落としたんですけど・・・・」
相手は何か物騒なことを言っているのが分かった。しかし、自分の見ている風景が実際のものだと受け入れることが出来ない。
「何があった!?」
思わずご気が荒くなる。どうしようもないこの現状を受け入れられない。頭が痛いし、イライラが募るがやり場のない気持ちを言葉に込める。
「説明しろ、このクズ。何があったんだ。いい加減吐きやがれ!」
髪をわしづかみにして俺は男につかみかかった。
「いいんですか?」
「いいもクソもない、切ったのはお前だろうが。ふざけるなっ!」
意を決したような顔をした男は話し始めた。
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