第5話

目が覚めると、そこには顔があった。

「あ、目が覚めた?」

優しい口調だった。声の質は先ほどの幼女を彷彿とさせる。

「ここは?」

「あー、まだ動いちゃだめ。また、やらかしたんでしょ?またぎゅーってしてあげるね。」

確かに体全体に幼女の重みがのしかかってくる。


落ち着いてあたりを見渡す。コンクリートに覆われた冷たい場所かと思っていたが、和室だった。ほんとに、ただの和室…

「ねえ、どうしたの?私は、幸せだよ?」

泣きそうな顔で少女は言う。

壁にかけられた刃物が怪しげなシミとともに光っているのがちらちらと目につく。


記憶の混在で頭が痛いような感覚が襲う。さっきまでこの部屋にいてここで倒れたような気がするのだが、そうでない記憶を頭に持ち合わせているような感覚。なんか、道なき道を延々と歩かされ続けたような感覚が頭をよぎる。

「俺は、いつからここに…」

少女は悲しそうな諦めたような顔をしながらこちらを見ている。


なるほど触れてはならないのか。そんな気がした。ただ妙な安心感がある…なんだろうかこの場所は。実家のような温もりを備えつつ、程よい凛とした空気が心を洗ってくれるような感覚がある。


響く声の中眠気が襲ってきた。

眼を瞑ろうとした瞬間、彼女の首元のあざが見えた。

何だろうこのあざは・・・

見覚えのある手形のあざの様な気がしたが、俺はまた眠りについた。

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