家庭編

第4話 エレクトロマスター

ある暑い日の昼下がり。


「月の姫神子はいるか?」


暑さに頭がやられた人が訪ねて来た。



みちるさんがまた鍵を忘れたのかと思って不用意にドアを開けると、金髪にピアス、スポーツサングラスをかけた派手な装いの見るからに怪しい男が立っていた。


装いと第一声からして怪しさが満点である。


「すみません。ここじゃないです」

「いや、ここのはずだぜ?以前もここに封書送らせてもらった」

「ええとどちら様です?」


とりあえず名乗れ怪しい奴。

男は名を求められるとドアの戸当りにもたれかかりサングラスを外し前髪をかきあげて名乗った。


「俺は・・・『†蒼天に轟く雷電†』《シャイニングサンダー》と、そう呼ばれている」


いやだから誰だよ。

とにかく一挙一動がウザイ。


「まぁ慌てるな。俺も異能者さ、お前と同じな。まぁ俺の能力は最強の能力と言っても過言ではないが。まぁ見せてやるよ」


そういうとウザイ男はポケットからスマホを取り出し、充電端子に指を当てた。


ピロン!

聴き慣れた効果音を出すとロック画面には充電中のアイコンが表示された。


「ふっ驚いたか?これが俺の『電磁操作《エレクトロマスター』だ!」


そんなにドヤ顔で自慢されても反応に困る。

そんなことよりさっきのスマホの待ち受けの写真、見間違いでなければみちるさんではないだろうか?

月の姫神子かどうとか言っていたが・・・



次の瞬間、ウザ男はこっちに向かって吹っ飛んで来た。

間一髪でかわすと——ぶつかる直前に一瞬時が止まった気がするが——その後ろは靴裏をこちらに向けているみちるさんと時雨さんが立っていた。


「私の部屋の前で何やってんの、ロリコン」

僕の部屋である。


顔面から床に突っ込んだ男は不敵に笑った。


「ククク・・・我々の業界ではご褒ゴフッ」


あ、今の蹴り鳩尾に入ったな。

その後もみちるさんは黙々と執拗に連続で蹴りを入れ続ける。

虫けらを見るようなみちるさんの目には、えもいわれぬ恐ろしさを感じた。


あんまりやるとあなたと違って死にますよ?



あまりにレベルの高いやり取りにドン引きしていると、時雨さんが手でちょいちょいとこちらに来るように促してきた。


外に顔を出すと一人の全身ゴスロリの女の子が半泣きで震えながらぬいぐるみを抱きしめて突っ立っていた。


「わ、私は異能者ユニオンの、幹部!です。・・・なのです。」


なんかキャラが有るらしいが恐怖に慄き過ぎてブレブレになっている。

異能者ユニオンって何?

少なくとも今嬲られてる変態野郎よりはか少し話が通じそうだ。


そんなわけで部屋にあげて詳しく話を聞くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る