第14話 マナコードとは
試験前日の一限目はロングホームルームだった。
ずらりと並ぶ軍服男性四人が教卓を挟むように二人づつ並び背筋を伸ばしている。そんな中を優雅に歩く舞先生の姿に教室内は動揺を隠しきれない様で隣同士の会話が目立つ。
「お静かに」
軍人の怒鳴り声に生徒は皆、背筋を伸ばした。
「揃ったな。ではロングホームルームを始める。一ヶ月の授業で絶対値に変化があたものは挙手しろ」
静まりかえる教室からは動きがない。一ヶ月あまりで能力のノウハウを理解した生徒は多いだろう。でもあえて手をあげないといった空気ができていた。和希や千秋のように周りに影響され、自己評価から能力値を大幅に向上させたものも少なくない。零次のように急激な成長はなくともクラスメイトは何かしらの進歩を感じているはずだった。
「まぁいい」と舞先生は教卓に手をつく。
「ページ1のドベには朗報だ。明日から行われるテストは振いをかけるものだが三ヶ月後、姉妹校である四学校が揃い学校のランク分けが行われる。これは君たちの将来に関わることだ。それでだ。今回の試験に生き残れたものに私達、学校側から君達へささやかなプレゼントを用意した」
背を向けた舞先生は黒板に向き「マナコード」と書いていく。
シェアウェブで連絡を取り合う各チームの中、集のチームだけ窓際に置かれている和希の弓が入ったケースへ視線を送っていた。
「マナコード。いわゆる絶対値の付与に必要なナンバーのことだ。絶対値を付与してどうなると思ったものも多いだろう。けして無価値なものではないぞ。物に能力を与えるだけで所有者を選ばず他人の絶対値を利用できるって話だ」
舞先生の話より軍人が気がかりな生徒達の反応は薄い。
「人によって単品では微弱な能力だが欠けている部分を補うことで使い道が広がるなんて能力も少なくないと思わないか」
話を割くように数人が手を上げ舞先生は指名していく。
「どこで調べたのですか」「危険性は?」「噛み砕いて話してほしい」
などなど本質からはずれた質問へは回答せず舞先生は黒板へ向かって何かを描きだした。
不器用に描かれた絵は三人組が描かれていた。違いは中央のものは体格はいいが手ぶらで右側のものに剣、左側に盾をもった人間が描かれていた。
「この絵を見てほしい。左から順にABCと名付けるとしようか。Aのものは刃こぼれしない鋭利な剣をもっているが素養がないため価値が薄い。Bのものは身体能力向上系の絶対値を持ちながらも得物がなく殺傷の能力が低い。Cのものは発現速度は速い盾を携えている防衛向き。チームとしては弱小だがBがAの剣を使えたらどうだ?単体では機能せずとも三人の能力を複合することで個人を高めれる思わないか?先ほどの質問にも答えよう。マナコードを調べたのは入学初日に行われた実技試験だ。測定から零れたものもいるがクラスの大半は判明していると思ってほしい。危険性は国家機密に抵触する為、この場では開示できない」
生徒へ視線を向けた舞先生は大きく呼吸する。
「マナコードは持ち主の死後も継続して機能するものだ。公式発表があってから間もないが戦地に赴けば付与されたアイテムが眠っていることはざらだ。実力次第で底辺からでも昇級できると覚えておけ」
ロングホームルームはマナコードの価値観を示し生徒のやる気を向上を目的とされた内容で小一時間続き休み時間に入る。
教室では浮足立った話が占拠している。残留が決まれば天国、敗退すれば実験体送りという事実は生徒の意識から削がれ劣等感から解放される機会と勘違いしているものが多い。開示されている情報は一ヶ月の成果を披露する場との各自にメールが届いていた。対戦形式も正式に発表さてはおらず校内SNSでは対戦相手は上級生ではないのか、など憶測が飛び交っている。
十分と短い休み時間の大半がマナコードの話で持ちきりとなり二限目の様子は想像できるものだった。休み時間を終えるチャイムが校内を鳴り渡り二限目の授業と思いきやスピーカーから異音が聞き取れた。
『一年ページ1、夜辺 集。今すぐ校長室に参られたし。かの生徒を除き本日をテスト前日の休日とし十一時までの下校を強制するものとする』
アナウースが終わり歓喜の声が校舎全域から聞き取れた。それと同時に指名を受けた集の顔色は悪く心配そうな顔でDチームの面々が集める。
「なにしたんだ?謝るなら早い方がいいぞ」と言い残し和希は教室を去っていく。
帰宅準備に取り掛かる零次達を見守り集は指定された校長室へと足を運んだ。
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