第13話 秘策

 フェンス際に担ぎ込まれた二人は身動きとれずに天上を見つめていた。

 

 回復に努める沙耶の姿など、どうでもいいかのように二人は大笑いをした。込み上げた笑いは長々と続き口がきけるほど回復したところに「悪かった」と零次の素直な謝罪に「お互い様だろ」と微笑を返した。


 下校時間が過ぎるまで治療を受けた二人は保健室へ運び込まれ今だ沙耶の治療を受けている。心配そう和希は腕を組み千秋ときたら泣き出す始末だ。帰宅を知らせるチャイムが校内で鳴りだした頃、疲れ果てた沙耶はベットに腰を掛ける。


 生活に支障がなくなるくらいまで回復は終えたのか零次から敗因について持ちかけられた。

「集の能力なら最初の一手で終わったはずじゃないか」

 零時の話に集は首を振る。

「残金がなかったから…ってものあるが。チームの指揮に影響があるのは問題だろ。ならって」

「集らしいな。一ついいか」


 あらたまる零次に「なんだよ」と気怠そうに返事をする。


「今回、集が使った能力はなんだ?集の能力は言葉を用いた共通認識による事象改変じゃないのか」

「それはメインであり柱だな。持ち金の都合や諸事情により使い道がないものが多いけど日常的に使える能力の一部だ」

「あれで一部…。メンバーも揃ってることだし、ここなら情報漏洩もないだろ。話してくれないか」

「ざくばらに話すと今回使ったものは身体強化。能力の断絶、最後に力場の残留だな。俺が能力を発動するのにおおよそ三工程必要になる。まずは発声から他人の絶対値を読み取り記憶すること。次に会話し発生した齟齬に絶対値を加え代価で可能な絶対値を発現するってまでが俺の絶対値……能力だ」


 一呼吸置き話は続く。


「今回は予算から身体強化メインで攻め力場操作でゲーム盤をひっくり返す。ここまでが現状できる零次の対抗策ってわけさ」


「力場ってなによ」沙耶が口を挟む。


「零次が殴った座標に殴った力場を残留させたんだ。戦術としては直線状でカウンターをもらい続けて最終的に空間にあった力場に触れた零次に同じだけの力積を与えたわけだ」


「最初からそれを狙って正面切ってたわけか」

 零次は腕で目元を隠す。

「計算力と対抗手段には驚かされたよ。チームメイトが零次でよかったよ」

 慰めの言葉に零次の口元だけは笑っていた。

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