第11話 実習風景
教室が賑わう中、舞先生が登場する。ここまでは日常といたところだが黒板に書きだされた日程に教室は凍りついた。
「以上。解散」
黒板には一限から五限まで自習で埋め尽くされていた。連動したように二、三年生の下校する姿が目に入る。意図をくみ取ったのかクラスメイトは慌ただしく教室を出て行った。
どうやら、だらけるもよし訓練に励むもよし。ぺージ2以上の生徒からすると登校ぞあれ休日のようなものになっていた。集が加入するチームは励む側のグループなので実習で使われる地下グランドに能力向上に励む。
地下グラウンドに到着したDチームは集を補助に零次、沙耶は能力増幅のトリオで集まり千秋と和希は百メートルの間隔で睨み合っている。
零次からの案が幾重にも出されていたが結果的にバランスの良い形で実習はスタートした。集が零次を増幅し負傷した体を沙耶が直すというのが一点。ここまでは前回と変わりない。変更点は集による増幅効果が見込めない二人にあった。
増幅ができないから特訓には参加できないでは不平等との意見もあり、盾役である千秋を和希が狙い撃つといった効率重視で危険性と隣り合わせの訓練方法だ。弓を弾く側はコントロールを問われ缶を打ち抜くほどの矢を打ち消すバリア強度を構築するトレーニングとなっており一石二鳥だと異論はでなかった。
懸念される点があるとしたら金銭面だった。集の能力はクラスメイトの大半が万能と解釈さているが事象改変規模に金額が影響する。
零次へ増幅をかけ五百円、治療をする沙耶に五百円と五分間隔でコインケースから硬貨が姿を暗ます。本来なら倍近くかかる代償を出力メインではなく体を慣らすレベルに抑えることでコスト削減へ繋げていた。
まだ訓練を初めてまもなくのことで大きな欠陥があることなど知らず五人は、がむしゃらに能力開発を続けていたが三日目が過ぎたある日のある不安要素が明るむにでる。
「零次。体に異常ないか?」と心配そうに集はいう。
零次の訓練も大詰めに入っていた。体内のイオンを電気として出力していた頃の零次は弱弱しいスタンガン程度の電撃が精一杯であったが三日目にして本来の能力である磁場から供給できるまでに成長を遂げていた。単純な放電から体への信号強化、捨て身の一撃である高出力まで可能となっている。
沙耶は傷んだ神経細胞、筋肉への負荷を的確に治癒しており二人とも進歩が見られた。盾と矛も同じく鬼気迫る矢を受ける千秋とバリアを貫通できない悔しさから装填の工夫を編み出す和希も含めチーム一同はクラスで一目置かれる存在になっていた。
放課後にグランド隅に集まるDチームは三角座りで意見交換を重ねていた。
各自の役割の再確認。苦戦を強いられた際のプランなど多岐にわたり話が展開されていく中ある点が浮上した。
「なぁ。集って実践前提だと、どの程度戦えるんだ」和希が唐突に言い出す。
続くように零次まで。
「集のことだ。なんとかなるんじゃないか」
零次に続く者はおらず陽が残したセリフがみんなの脳裏にあった。チームメイトが抱く集への評価はいわゆる強者。実技試験で見せた能力は一見しただけで実技試験を受けた者の中で頭一つ抜ける印象を与えた。その後、実践はなく現在まで来ている。自習期間も他人のホローに徹し訓練を強制しないチームも過去の栄光からくる信用から口出しすることもなかった。
「俺と手合わせしないか。集」
突然、零次から思いもよらないことを切りだされ間の抜けた声を漏らした。だが立ち上がった零次に連れられ重たい腰を上げる。
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