第8話 各自の能力

 その日の放課後、零次ではなく仕切りに不向きな集がチーム四人へ集合をかけていた。下校後の教室には五人の落ちこぼれが残り最前列に座っている。


 集はチョークで黒板に各自の能力と向上手段を簡潔に書き込んでいく。短期間で向上可能な沙耶と零次のことだけ書き綴りチョークを手放した。


「質問があるものは挙手してくれ」


 一斉に挙げられる腕に、ため息交じりに順番に指さす。右から順に零次、沙耶、和希、千秋と並んでおり零次の質問に答えていく。


「増幅された能力は身に着けることができるのか」

「慣れの一言に尽きるな。電撃を扱う原理は置いといて増幅を繰り返すことで突破口が開けると思う。体で覚えろだな。まだ体内からの供給のみだから本来あるべき能力の磁場を利用する感覚を体に馴染ませることだな。零次の能力は足先から磁場を吸収するものであるけど神経は足だけに巡ってるものじゃない。急激な放電が必要な際は手足を使えば並列ってわけではないけどある程度の進歩が望めると思う」


 お次に頬杖をつく沙耶。


「沙耶だが見る限り回復ではないと思われる」

「なんでよ」との反論に聞く耳もたず説明を進める。


「あれは白い波紋側は治癒能力で間違いないが逆刃からは回復に必要な生命力を周囲から奪っている。表での斬撃では回復。逆刃での切り傷は生命力を吸い上げている。まだ一目しただけだけど成長が期待できる能力だ。零次もそうだが増幅効果を体で覚えればページ3に匹敵する出力は期待できるはず。後は努力次第ってところだな」


 そこまで話した集は後ろめたそうに千秋と和希へ顔を向ける。


(千秋はホロウできるが和希は……)


「千秋だがバリアの原理がわからないから現状維持で問題ないんじゃないかな。プラズマ、原子分解など様々なものが論理的にあるけど分類が分からない以上、増幅はできないし身を守るだけなら発現速度も加味して実用的だと思う」


 残されたのは矢の職人、和希だった。話すことが見当たず手を叩いく。


 「今日はここまでにしようか。帰宅時間も過ぎてるしな」


 和希には触れず集はエスケープを図ろうとするが「俺は俺は」と食いつく和希の瞳に、どうであれコメントせざる負えない。


「そうだな~。弓兵ならまずは弓を買わないか。矢を振り回すだけなら原始人にもできる。話はここまで」


 幕を引いたつもりが4人の話し声の中に「買い物へいこう」との不吉なワードが聞き取れた。足止めをくらうまいとバックを肩へかけ出口へ足を急がせる。そんな浅はかな行動は読まれたように千秋から「買い物いきませんか」と誘いがかかり語りすぎて言い訳も出てこない集は了承せざる終えなかった。

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