第27話:Out Of The Blue
恋とは予期できないものであり、ある日突然やって来る。
金川沙耶は10歳の頃から人生のほとんどをバスケットに捧げてきた。
バスケット以外のことに熱中することもなく、坂女に入学してからも迷うことなくバスケ部に入部した。
そんな沙耶だったが、坂女に入学してから通い始めた美容室で何気なく読んだファッション雑誌が沙耶の人生を大きく変えた。
沙耶はその雑誌に載っていた『梅澤美波』というモデルの美しさに衝撃を受けた。
そして、沙耶は『梅澤美波』について調べていく内にモデルに憧れを持つようになっていった。
金川沙耶はモデルという職業に恋をした。
そんな沙耶にまさかまさかの急展開が訪れる。
高校一年生の秋頃、沙耶はモデルにならないかと街でスカウトされたのだ。
沙耶にとっては願ってもいないチャンスであった。
スカウトした人物は沙耶にプロのメイクを受けてみないかと提案した。
モデルのようなメイクに憧れていた沙耶は二つ返事でメイクを受けてみることにした。
そして、メイクが完成した自分の姿を鏡で見た沙耶は驚きを隠せない様子だった。
沙耶(これが私?)
沙耶は今まで見たことない自分との出会いに興奮している様子だった。
すると、話はそのままトントン拍子に進み、沙耶は『梅澤美波』も所属する有名雑誌の研修生として、表舞台に立つためにモデルという職業について学んでいくことになるのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
田村保乃は10歳の頃から人生のほとんどをバレーボールに捧げてきた。
バレーボール以外のことに熱中することもなく、坂女に入学してからも迷うことなくバレー部に入部した。
保乃には同じく坂女に通う双子の姉がいる。
姉の名前は田村真佑といい、野球部に入部している。
二人ともスポーツ万能で、生徒たちからも一目置かれる存在であったため『まゆぽの』の愛称で親しまれている。
『まゆぽの』の二人には双子ならではの共通点が多く存在するが、中でも性格がそっくりだと言われている。
どちらも普段は穏やかでのんびりしたところがあるのだが、スポーツのことになると人が変わったように厳しくなるのだ。
さらに保乃はバスケ部の沙耶とライバル関係にあると言われており、ちょっとしたことで事あるごとに張り合っていた。
一方で口には出さないものの、保乃は自分と同じように人生の大半をスポーツに費やしてきた沙耶のことを尊敬していた。
そんな沙耶がモデルになったらしいという噂が耳に入り、保乃の心は内心穏やかではなかった。
その日、部活が始まる前、保乃は沙耶に挑戦状を叩きつけた。
保乃「この浮気者!うちがその根性叩き直したるわ。今から体育館3往復勝負よ!」
沙耶「はあ!?急になんなのよ!いいわよ、やってやろうじゃない!この年中体育半ズボン女!」
突然始まった二人の口喧嘩に、バスケ部マネージャーの北川悠理は慌てた様子でバレー部マネージャーの筒井あやめの元に駆け寄った。
悠理「あやめちゃん、どうしよう。また喧嘩が始まっちゃった」
あやめ「また?どうせいつもの下らない勝負事でしょ。だったら、しばらく練習は始まらないわね。私、レイちゃんとおしゃべりしてくるから、また後でね~」
悠理「あやめちゃん!?え、私、どうしたらいいの?」
あやめ「放っておけばいいのよ。いっつも勝手に始まって勝手に終わるんだから。じゃあね~」
そう言うと、あやめは帰国子女である清宮レイと中庭のベンチでおしゃべりを始めた。
なんとなくでバレー部のマネージャーになったあやめは、時々こうして好きな時間を過ごしては部活をサボっていた。
あやめが居なくなってしまい悠理は一人でおろおろしていたが、そんな悠理にはお構いなしで保乃と沙耶の勝負は始まった。
二人とも運動神経が抜群に良いため、何をやるにも勝負は五分五分だった。
しかし、この短距離走に関しては、保乃が沙耶に勝ったことは一度もなかった。
そして、今回もギリギリのところで勝ったのは沙耶だった。
保乃「あー!悔しい!なんで勝てないのよ!浮気者のくせに!」
沙耶「さっきから浮気者、浮気者ってなんなのよ!私が何をしたっていうのよ」
保乃「あんた、モデルになったんやってな?バスケ一筋やったくせに。そんなんで全国行けると思ってるんか?スポーツなめんな!って、勝負に負けといて言えた口やないけど…」
保乃はしゅんとして落ち込んだ様子を見せた。
沙耶「なるほど。そういうことだったのね。だったら余計なお世話よ。私はモデルもバスケも完璧に両立してみせるわ。バスケで全国優勝して、雑誌の表紙も飾るのよ!」
悠理「やんちゃん、学生の本分は勉強だよ」
沙耶「も、もちろんよ。バスケとモデルと勉強、完璧に三点倒立してみせる!」
悠理「やんちゃん、また変なこと言ってる…」
保乃「あほらし。もう好きにしたらええわ。あやめ!練習するよ!練習!あやめ!あやめー!」
そんな事とは露知らず、あやめはレイとおしゃべりを続けていた。
レイ「なんか遠くの方からあやめちゃんのことを呼ぶボイスが聞こえない?」
あやめ「ん?そう?気のせいじゃない?」
保乃「あやめ~~~!!!」
続く。
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