第2話:Eccentric

屋上から大声で叫んでいた生徒のことが頭から離れなくなっていた麗奈は心ここにあらずといった感じだった。


??「すいませーん。あれ?聞こえてへんのかな?すいませーん」


声の主は麗奈にグッと顔を近づけて覗き込んだ。

あまりにも突然のことにさすがの麗奈も驚いた。


麗奈「きゃっ」


一瞬、クラス中の視線が麗奈へと集まった。


麗奈「ご、ごめんなさい。私、ボーっとしてたみたいで。あ、あの~」


??「私、増本綺良です。席が一個前の。よかったら友達になりませんか?」


麗奈「増本さん…う、うん!私で良ければ。あ、守屋麗奈って言います」


綺良「守屋麗奈さん。れな…レナ…じゃあ、『ベバ』って呼びますね」


麗奈「え?」


綺良「嫌ですか?じゃあ、『オーシメ』はどうですか?麗奈の奈から取ったんですけど」


麗奈「いやー、それはちょっと…」


綺良「だったら無難に『ナモリ』とかですか?」


麗奈「無難…かな?」


綺良「なかなかうなずいてくれないですね。逆に何て呼んだらいいですか?」


麗奈「れ、『れなぁ~』とか?」


綺良「『れなぁ~』ですか?攻めたあだ名付けますね。変わってるって言われませんか?」


麗奈「うーん、どうだろう(変わった子だな~)」


かなり困惑した様子の麗奈だったが、そんなことはお構いなしに綺良は話を続けた。


綺良「あ、そうや。守屋さんって部活は何に入るか決めたんですか?」


麗奈「(あだ名で呼んでくれないんだ…)私はまだ悩んでて。中学で一緒にバトントワリングやってた友達がチアリーディング部に入るみたいだから、どうしようかなって」


綺良「へえ、うちの高校にチア部なんてあるんですね」


麗奈「増本さんは?」


綺良「私ですか?私はルービックキュー部ですね」


麗奈「え?えーと…あ、そうか!な、なんでやねん!なんちゃって…あはは…」


綺良「何がですか?」


麗奈「い、いや。なんでもないです…」


綺良「やっぱり守屋さんって変わってますね。エキセントリックってやつです」


麗奈「あはは…(あれ?これって私が変なのかな?なんか分かんなくなってきた)」


綺良「変わり者でいいじゃないですか。それって自由ってことですよ。周りから理解されなくても自分のやりたいことが出来るって素晴らしいと思いませんか?」


麗奈「(あれ?その言葉、なんか聞き覚えがある)」


気がつくと麗奈は綺良の話に引き込まれていた。

麗奈は綺良からもっと色んな話を聞きたいと思ったが、入学式が始まるというアナウンスが入ったため会話を中断して体育館へと移動することになった。


体育館へ移動すると麗奈はキョロキョロと周りを見渡した。


麗奈「(この子たち、みんな同級生なんだ)」


隣のクラスでは未来虹と美佑が早くも数人の友達と仲良く話をしているのが見えた。


麗奈「(二人ともさすがだな~)」


けれど、麗奈はもう不安ではなかった。

ちょっぴり変わったところもあるけれど、高校で初めての友達が出来たからだ。


綺良「結構、人いますね。これ全員を笑わせることが出来たら気持ちいいでしょうね」


麗奈「え?増本さん、何か言った?」


綺良「いえ、こっちの話です」


綺良は何か企んでいる様子だったが、麗奈が質問する前に入学式が始まってしまった。

その後、入学式は淡々と進行していき、あっという間に終わりを迎えた。


教師「これにて入学式は終了となり…」


綺良「ちょっといいですか!」


綺良は大声で叫ぶと、威勢良く挙手をしながら立ち上がった。

全校生徒の注目が一斉に綺良に集まる。


教師「どうしました?えーと」


綺良「増本綺良です。一発ギャグやります」


麗奈「(え?増本さん?)」


あまりにも突拍子もない発言に、その場にいた全員がざわついた。

しかし、綺良は臆することなくさらに大きな声で叫んだ。


綺良「増本綺良です!キラキラ~、キッラ~ン!」


ざわついていたはずの場は一気に凍りつき、次の瞬間、教師の怒号が体育館中にこだましたのだった。

たった一人、林瑠奈という生徒だけはその様子を見て笑い転げていた。


瑠奈「あかん、腹痛い。くくくっ…おもろいやつ見つけたで」



続く。

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