二年生対一年生III
久嗣とリリスは襲ってくる二年生をなぎ倒しながら進む。
「ええい、鬱陶しいわね。ちょっと退いてなさい、久嗣」
言われた通り久嗣は物陰に隠れる。
「無茶はすんなよ」
「ふぅ、燃え盛りなさい!"
リリスの剣から摂氏5000度の業火が放たれた。
生身の人間が受ければ即死であるが討滅官は生まれながらにして超人的肉体となるため死にはしない。
学院の制服は耐火性もあるため心配は不要である。
「えぐい破壊力だな」
近くの壁が崩壊し、月が見えている。
「ふふん、もっと褒めてもいいわよ」
勝ち誇った顔をするリリスだがまだ敵大将である彩葉と副将の銀上には遭遇していない。
「騒がしいから来てみれば二年が一年相手にこのザマとはな。呆れる」
倒れている二年生達の上を東堂が踏みつけながら歩く。
「あんたねぇ、それでも!」
「リリス、お前は彩姉の所へいけ。この先輩は俺が潰す」
後ろ姿でも分かるくらいに怒りを顕にしている。
「だから私に指図しないでってば!」
リリスが彩葉のいる南広場へ走り出した。
「お前か、あの女の強さは聞いているからこそ手合わせしてみたかったがお前みたいな落ちこぼれが相手とはな」
銀上は分かりやすくため息をつく。
「先輩、とりあえず倒れてる人から足退けてもらえます?」
「自分の心配より倒れている敵の心配か。呆れるな、それでも討滅官、かっ!」
倒れている二年を東堂が下のフロアに向かって蹴り飛ばした。
「ちっ!!」
久嗣は走って落下する二年を掴み、下のフロアに着地すると物陰で下ろした。
「心底呆れるぞ、後輩」
「・・・」
「雑魚は雑魚らしくくたばれ!」
「さっきからごちゃごちゃとうるっせぇよ!」
殴りかかってきた銀上の頭を掴み、壁へ叩きつけた。
「ぐっ、て、めぇ、、雑魚の分際でこの俺に楯突くか!」
銀上は立ち上がると額から出た血を拭う。
「あんたを潰してやるよ、先輩!"霊装"起動!"黒狼"!」
久嗣は"霊装"を具現化させ、構える。
「後輩がっ!"霊装"起動!"天上天下唯我独尊"!!」
その台詞と同時に具現化したのはメリケンサック型の"霊装"だ。
「如月流剣術第六秘剣"一刀破断"!!」
久嗣の剣が
「くぅっ!!この程度かよ、後輩!」
構えると銀上は見えない速さでラッシュを繰り出し、押されながらも久嗣は刀で流す。
「まだまだ!!」
二人の攻防が十分間続き、息を切らして二人は床に倒れる。
「はぁはぁ、なかなかやるな、後輩。すまねぇ、お前の拳と交えて分かった。俺は本当の強さを知らなかった。中学の頃から俺は不良でよ、力だけが絶対だとそう思ってた。でもてめぇと戦って理解した本当の強者ってのは力だけじゃねぇ、お前の持っているような優しさもあってこその強者なんだってな」
「はぁ、そうっすか。先輩も強いっすね、ここまでやられるとは思わなかったです」
「ふん、これからは兄弟と呼ぶぜ」
「兄弟は勘弁してください」
互いに拳を交し、立ち上がる。
すると誰かがこちらに近づいてくるような足音が聞こえてきた。
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