仲直り

校舎敷地内にある自販機前のベンチに座り、お茶を飲んでいると後ろから肩をつつかれる。

「ん?」

「こちらにいましたか、睦月様」

「あんたは確か、、、誰だっけか」

「エルフィーア王国第一王女、ユリア・リル・エルフィーアと申します」

スカートの裾を軽く持ち上げ、会釈する。

「そうか。それで、何しに来た?第一王女殿下」

「ユリアと呼び捨てで呼んで頂いて大丈夫です」

ユリアが久嗣の隣に座る。

「じゃあ、ユリア。俺を説得しにでも来たか?」

「いえ、説得しても無駄だと沙耶音様が仰っておりましたから」

「沙耶音め、変なことを」

「リリス様を悪く思わないであげてください。彼女は何度も護衛を目の前で亡くしてるんです。だから彼女なりに貴方が殺されないためにあういう発言をしたんだと思うんです」

ユリアの目からうっすらと涙が浮かぶ。

「俺はあの女にそこまで弱い人間として見られているということか、、、はぁ」

「睦月様?」

「気が変わった。あいつとお前の護衛を俺が引き受けてやる。このまんま舐められたままだと腹が立つ」

中身を飲み干したお茶の缶をゴミ箱に投げ捨てる。

「こらぁ!」

いきなり頭を叩かれ、後ろへ振り返ると生徒会の副会長こと如月彩葉が仁王立ちしていた。

「いってぇな!彩姉。いきなり何すんだ」

「ゴミはゴミ箱に捨てなさい!!」

はいはいと言いながら久嗣が缶を拾いゴミ箱へ捨てる。

「口で言えば分かるんだよ!バカ姉」

「いっつもいっつも、同じ事ばかり言わせて、、」

「いつもじゃねぇよ」

「ところで貴方は久くんの彼女?」

「い、いえ!、ち、違います」

顔を赤らめ、ユリアが横に頭を振る。

「はは〜ん、怪しいねぇ」

「余計なことを言うな、彩姉」

「あうっ」

久嗣が彩葉の頭を叩き、近くにいた彩葉のクラスメイトに彩葉を引き渡した。

「悪いな、ユリア。うちのバカ姉が変なこと言って」

「い、いえ!大丈夫です」

何故かユリアの口元が緩み、喜んでいるようにも見えた。

ユリアと共に久嗣が理事長室へと戻る。

「ようやく戻ってきたか」

「ふん、てっきり泣きべそかいて帰ったのかと思ったわ」

「おい、リリス。仕方ないから俺がお前とユリアの護衛任務を引き受けてやるよ、感謝しろ」

「はぁ?何偉そうに言ってんの」

「言っておくが、俺はお前が思うほどヤワな人間じゃねぇよ」

「どうだか」

「さて、話はまとまったみたいだな。睦月、毎年行われる模擬戦を知っているか?」

「ああ、確か本土にあるショッピングモールを貸し切って行う二年と一年による模擬戦」

「そうだ。で、お前らにもその模擬戦に参加してもらう」

模擬戦で使う自分の名前が刻まれたドッグタグを渡された。

「そう来なくっちゃね」

リリスは俄然やる気を見せる。

「沙耶音もか?」

「はい、私も久嗣様が参加するのであれば」

「私も参加させてもらいます」

「だそうだ、どうする?睦月」

「はぁ、分かりました。参加します」

「うむ、分かった」

模擬戦へ参加の書類に判子を押した。

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