第19話 来訪者

「こーくん今起きてる?」


 俺の部屋に来たのは亜紀だった。

 いつもは明るい顔をしているが、今はどこか悲し気な顔をしている。


「こーくんのお母さんに電話したってことは私の向こうでのことも聞いちゃったんだよね?」


「・・・あぁ」


「やっぱりね。あの時戻ってきたときこーくんぎこちなかったもん」


 何とか動揺を悟られないようにしていたが、亜紀にはばれていたようだ。


「ごめんね。黙ってて」


 泣きそうな顔で亜紀が言うが、普通虐待されていたことなんて思い出したくもないし、ましては言いたくもないだろう。


「別にいいよ。あんなことされてたなんて言いたくなかっただろうし」


「やっぱりこーくんは優しいね」


「そうか?」


「うん。だって私が虐待されたって言っても特に何も聞こうとしないんだもん。あいつらが逮捕されたニュースが出た次の日なんて、普段話さない人までそのこと聞いてきたし」


「・・・そうか」


 野次馬はやってる本人からしたら興味本位かもしれないが、本人からしたらただの迷惑行為だし、そっとしておいてほしいだろう。


「私は・・・グスッ・・ただ放っておいてほしかった・・・ヒック・・・だけなのに・・・」


 とうとう亜紀は泣き出してしまった。

 辛かった日々を思い出してしまったのだろう。

 胸に抱きよせて泣き止むまで頭をなでてやる。



 しばらくして泣き止んだ亜紀は部屋に来た時とは違い、少しつきものが落ちたような顔をしていた。


「じゃあそろそろ寝ようか」


 そろそろ十二時を回り、眠くなってきたので亜紀に雫の部屋で寝るように言ったが亜紀はスマホをいじって出ていく様子がない。


「あの亜紀さん?」


「どうしたの?」


 そう言いながらこっちを振り向いた亜紀の顔は、昨夜俺を襲った時と同じ表情をしていた。


「まさか・・・」


「康太!!来たよ!!!」


 バァンと扉が壊れるような音を立てながら部屋のドアを開けて雫が入ってきた。


「雫!!?何でここに!!?」


「私が呼んだんだよ」


 亜紀が見蕩れたような顔でスマホの画面を見せてきた。

 そこには今、雫とやり取りしたであろうライスのトーク画面が写っていた。


 そこには亜紀が雫を俺の部屋に誘う内容だった。


「あ!亜紀ちゃん明るい顔してる!ちゃんと受け入れてもらったんだね」


「ん?雫は亜紀のこと知ってたのか?」


「電話から戻ってきた康太の様子がおかしかったから亜紀ちゃんにさっき聞いたんだ」


 亜紀だけではなく雫にもばれていたことに肩を落とすが今、雫と亜紀の仲が悪くなっていないということは特に俺がどうこう言うことではないということだろう。


『それじゃあこーくん(康太)、またかわいがってね♪」


 

 亜紀と雫の声を聞きながら、俺は今夜も寝不足になることを悟った。


_____________________________________


 どうも始龍です

 いや二日って言ってたのに三日空いてしまってほんとすいません。でもこれでようやく課題が終わりました。


 さてさて今回野次馬の話がちょろっと出てきたと思うんですけど、ほんとに野次馬は被害者のつらい記憶を思い出してしまうことになるのでほんとやめましょう。変な態度とか取らずに自然にいつもどうり接することが一番です。下手に慰めるのもやめたほうがいいでしょう。


 もしこの話がもしよければ応援と星とフォローのほどよろしくお願いします。いつも自分の励みになっています。それではまた次の話でお会いしましょう。


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