夏の予定は決まってる?
三人でお昼ご飯を食べるのが当たり前になって、今日もいつも通り屋上で私たちは弁当を食べています。
「藤白さんの作ってくれたお弁当最高!·····いつもありがとうございます!」
陽介くんは私に向かって深々と頭を下げます。
作ると話していていろいろあってなかなか作れなかったのですが、作る時間があったので作ってみることにしました。
千紘ちゃんは陽介くんが食べている弁当を恨めしそうに見つめます。
「陽介ずるいなぁ、夏奈の手作り」
「良いだろ〜?」
陽介くんは緩みきった表情で千紘ちゃんを見ます。
千紘ちゃんはそんな陽介くんをスルーして、私の方を向きます。
「ねぇ夏奈、夏休み暇?」
「あ!ずるいぞ千紘俺が先に·····むぐ?!」
千紘ちゃんが陽介くんの口にウィンナーを突っ込んで妨害してます。
「ん?!·····んぐぐ!んぐ!」
「という訳で·····はいっ!」
千紘ちゃんは抗議の声を出している陽介くんをスルーして、私の目の前に一枚のポスターを出します。
ここの高校の近所の商店街の夏祭りのポスターです。
「夏祭り一緒に行こ!」
「·····良いんですか?、私·····初めて誘われました」
こうやって誘われる経験が無いので驚いています。
私は、どう答えれば正解が頭の中で考えます。
「いいに決まってるよ!夏奈が暇だったらだけどね」
「行きたい·····です」
「よし決まり!」
千紘ちゃんはガッツポーズをして陽介くんに向かって誇らしげな顔をします。
「どうだ陽介、私の勝ち」
「·····何が勝ちだ!今のは妨害行為してんだから不正だ不正!」
「ま、まぁ、二人とも落ち着いてください」
私を挟んで二人牽制し合います。
「えっと、三人でお祭り行きましょうよ!·····あ、圭くんも誘って、四人·····とかどうですか?」
私の言葉に二人は目を丸くします。
その発想は無かったと顔に書いてある様な感じがしました。
「そうしよう、うん!決定!·····千紘もそれでいいだろ?」
「人は多くて困る事無いしね、じゃ、陽介は前野に連絡しといてね」
先程牽制し合ってたのが嘘だったかの様に二人はガシッと握手をしています。
私はその様子に戸惑います。
千紘ちゃんは先生に呼ばれていたらしく、先に行ってしまい、屋上には私と陽介くんしかいません。
「楽しみだね藤白さん!」
陽介くんが目を輝かせながら私に言います。
「そうですね·····良い夏になりそうです」
「·····藤白さん」
「何ですか?」
陽介くんが不安を帯びた声色で話しかけてきます。
どうしたのでしょうか。
「今、楽しい?」
「楽しいですよ」
「ごめんね、嫌だったら嫌って言っていいんだよ?」
「私は大丈夫ですよ、友達と遊ぶって·····すごく楽しみですし」
陽介くんはそれを聞いて満足したのか「そっか」と言った。
「·····あ、そうだ藤白さん」
「何ですか?」
「勉強付き合ってくれたお礼をしたいんだけど、何か考えておいてよ」
陽介くんはじっと私を見つめながら言います。
私は断ろうとしてたのですが、陽介くんの目が断る事を許しません。
私は観念して考える事にします。
「まぁ、また思いついたら教えてよ」
「·····そうさせてもらいますね」
「断られたらどうしようかと」
そう言った時少しだけ私は陽介くんを睨みます。
「断らさせる気、ないですよね?」
「バレた?」
イタズラが成功したかの様な笑顔で陽介くんは話します。
「今日、部活見に来る?」
「あ〜、前回見れてなかったですよね·····見に行っても良いですか?」
「じゃ、今日もグラウンドでやってるから」
「はい、また後で」
陽介くんは手を振って屋上から出て行きました。
私はスマホを取り出しカレンダーアプリを開きます。
私は八月八日に皆とお祭りと入力しました。
そして入力した後私は緩みきった頬を引き締めるために頬をパンパンと叩きました。
少しだけヒリヒリして私の頬の緩みは少しだけマシになりました。
「·····か、藤白」
私は名前を呼ばれて反射的に振り向きます。
そこには、近藤くんがいます。
入口付近に立っていて、何か言いたそうな顔をしています。
「·····何かご用ですか?·····用事が無いのなら、私も次の授業の準備をしたいので失礼しますね」
私がそう言うとますます気まずそうな顔をします。
私が屋上から出ようとした時に、近藤くんが「待ってくれ!」と言います。
「この前の事·····謝らせてくれ、謝っても許されないって分かってるけど·····伝えたいから·····だから!」
私の好きだった頃の目で私を見つめてきます。
今は何とも思いません。
私は深呼吸をして、近藤くんを見ます。
「·····許されないって、分かってるんですね」
「お前の気持ちを遊んで·····傷つけて·····本当に悪かった!·····これが償いになるとは思わない!でもっ!·····殴ってくれて構わない、どれだけ罵ってくれたって構わない!」
近藤くんはキュッと目をつぶり私に殴られる準備をします。
私は近藤くんに近づきます。
本当は殴りたいですが、私は近藤くんの胸ぐらを掴みました。
その様子に近藤くんは目を見開いて私をみます。
「·····殴りませんよ私は、ただ絶対!許しませんっ!·····また誰かを傷つけたりしたら許さないから!」
そう言って手を離し階段を降りていきます。
近藤くんは呆然とそこに立ちすくんでいます。
私はもう一つ言いたかった事を思い出し近藤くんの方を振り向きます。
「·····ありがとう近藤くん!、私、好きだったよ!貴方のこと」
私は今できる精一杯の笑顔で、 言います。
胸の中にあった重たいものがスっと抜けていく感覚を感じながら、私は教室に戻ります。
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