親友

もうすぐ夏休み私は今年も家に籠ってのんびりしてようと思っています。


「藤白さーん!」


ぶんぶんと手を振って陽介くんがこちらに走ってきます。

私は手を振り返します。


「陽介くんどうしたんですか?」

「再テスト帰ってきたから、やっぱり最初は勉強見てくれた藤白さんに見せたくてさ」

「私は何もしてませんよ」

「藤白さんのおかげで登場人物の心情の読み取りとか、続きを想像する問題好きになったよ!」


渡されたテスト用紙を、恐る恐る見るとゼロに近い点数·····ではなく完璧に赤点を回避した余裕な点数です。

私は嬉しくなります。


「·····よかったぁ·····!あ、えっと、よかった·····です」


私は素を出してしまいます。

そんな私を見て陽介くんは笑ってしまいます。


「藤白さん、ありがとう·····自分の事みたいに喜んでくれるんだ·····頑張った甲斐があったよ」

「あれ?ようちゃん?先生が呼んでたよ」


圭くんが陽介くんを呼びます。

陽介くんは面倒くさそうな顔をします。


「嫌だ、藤白さんとの時間を取られるのは·····先生に抗議してくる」

「すぐ戻ってくればいいだろうが·····」

「それもそうだな·····圭、藤白さんに変な事したら許さないからな?」

「何もしないから·····ね?夏奈ちゃん?」

「そう言うところだぞ?!」


陽介くんは全力で廊下を走っていきました。

圭くんはその様子を見て嬉しそうに笑う。


「あいつは一途だな」

「そうですね」

「他人事みたいに言うじゃん」

「私を好きな人がいるとはなかなか思えませんよ」


私は困っ様な笑みを浮かべます。


「····少しだけ昔話をしようか」


俺は高校生になるまでは結構グレていた。

いわゆる不良って奴。

そんな時にようちゃんが俺に近づいてきたんだよ。


「えっと、前野くんだっけ?」

「·····何?」


普通の奴なら俺に声を掛けることすらしない、掛けたとしても俺の事が怖いのか、ビビりながら声を掛ける。

でも、ようちゃんは俺の事を怖がる事無く笑って話し掛けて来たんだよね。


「良かった〜!名前間違えたらどうしようかと·····あ、俺、西野陽介ねよろしく!」

「要件をとっとと言えって·····お前の名前はどうでもいいし」

「つれないなぁ·····俺と前野くん同じ委員会だからさ、明日委員会あるからって伝えようと思ってさ」

「面倒くさ·····お前一人でいいだろ」


俺がそう言うところこいつは口を尖らせた。

俺が面倒臭いと思いながらタバコを取り出すとパシンと陽介がタバコを持っている方の手を叩いた。

俺は何が起きたかしばらく分からず呆然としてたけどすぐ俺は陽介を睨んでいた。


「お前何すんだ!」

「·····タバコはだめだよ、ごめんね手、大丈夫?」


あの時のあいつ怖かったよ正直言うと、顔笑ってなかったし、すっごい鋭い目つきで手叩いてたし·····俺そこからこいつは怒らせたらやばい!って思って、タバコやめたんだよね。


「来てくれたんだ」

「·····言われたからな」


俺が勝手に入れられていたのは美化委員会で呼び出されたのは花壇の花を植え替えるためだったんだよ。

それで俺が来たらようちゃんすっごいびっくりしてて、他の奴らは「なんであいついるの?」みたいな帰りたいなって思ったよでもようちゃんがすっごいしつこく俺に話しかけるから、最後まで仕事して、先輩たちが「仕事丁寧だね」って言ってくれてさ·····嬉しかったなぁ。


「ありがとう前野くん来てくれて助かったよ!」

「そりゃ良かったな」

「そうだ!今からなんか食べない?·····恥ずかしながら俺お腹すいちゃった」

「·····そうかよ」


俺がどれだけ雑に返してもようちゃんは俺を見捨てたりしなかった。

昔は鬱陶しくて仕方なかったけど、今はようちゃんいてくれたおかけで真っ当な道進めてるから感謝してる。

で、どこの高校にしようって悩んだんだよね俺、特にやりたい事無かったしさ。


「西野·····は行きたい高校決まってるのか」

「そうだな·····ここから少しだけ遠いとこ」

「なんだよ決まってるのか」

「そういう前野くんは?」

「決めてない·····まぁ、まともな事して無かったし·····俺を拾ってくれる高校があるとは思えないけどな」


本当に俺みたいな奴どこの高校も絶対拾ってくれないって思っててそしたらようちゃんが俺に言ったんだよ。


「じゃあ、俺と一緒の高校入ろうよ」

「はぁ?·····何言ってんだよ」

「だって、前野くん頭は良いじゃん素行が悪くても頭は·····俺心細かったんだよね〜·····一緒に受験会場行ってくれる人いなくってさ」


俺はその言葉のおかけでここに行く事にしたんだ。

それで前つるんだた人たちと完全に縁を切る事にしたんだ。


「悪い、お前らとはもうつるめない」

「はぁ?、何言ってるんだよ圭!」

「俺·····真っ当な道に進みたいんだよ、こんな俺でも怖がらないで一緒にいてくれる、友達になりたいやつがいてさ、ちょっとはずい言い方するけど、そいつに恥ずかしくない生き方をしたいんだよ」


俺がそう言うとボス格の奴が殴ってきて、他の奴らも倒れてる俺を蹴るわ殴るわ·····痛かったよ。


「圭、舐めたこと言ってじゃねぇよ·····そいつに遊ばれてんじゃねぇの?·····そうだよな!お前ら!」


そいつがそう言うと周りの奴らもケラケラと笑ってさ。

事実かもしれない、こんな奴に真剣に関わってくれるわけない。


「俺、悔しかったよ·····その通りだからさ」

「そ、そんな事無いですよ!」


圭くんは苦しそうな顔をします。

私はそんな彼を見て辛くなります。


「そんな時だよ陽介が、お巡りさんここですっ!ってでっかい声で言ってさ、そいつらビビって逃げたんだよ」


陽介が俺に駆け寄る。


「前野くん!」

「·····西野か、警察は?」

「嘘に決まってるだろ·····呼ぶ時間なんて無かったんだから!」

「そう、かよ·····何泣いてんの?·····恥っず、本当に高校生になる奴かよ」


俺は殴られた傷が痛みうずくまる。


「悪いかよ!友達が傷ついてるの見て悲しくなるのが悪いかよ!」

「あっ、え?」


俺てっきり友達って認められてないと思ってて、ようちゃんと俺の友達の定義が違っただけなんだけどさ。


「友達じゃないの·····?」

「いや、その友達だって·····思われてないものかと」

「なんでだよ?!·····えー、俺友達だと思ってたんだけど!」

「なんだよ·····俺、西野と友達になってたのかよ····あ~あほくさ」


俺の目から俺の意思に反して涙が出る。

陽介はそんな俺を見て笑う。


「やーい、泣き虫」

「うるさい」

「立てる?」

「何言ってんだ、立つんだよっ!」


俺は陽介が差し出した手を握って立ち上がる。

そして陽介の肩に手を回す。


「俺、歩くの辛いから介護してくれよ、友達?」

「仕方ないなぁ·····任せてくれよ親友!」

「親友に昇格するの早くね?」

「え〜、西野くんと俺の仲じゃん」

「なんだそれ」


夜の道を笑いながら俺たちは歩いた。


「·····って、夏奈ちゃんなんで泣いてるの?!」

「何故か涙が·····その、出てきちゃってごめんなさい」


私は溢れる涙を拭う。

そんな時廊下をドタドタと走る音が近づいてくる。


「藤白さん!·····圭に何もされてない?!」

「してねぇよ!·····お前さ俺の事信用して無いの?」

「うん」

「即答·····?」

「嘘嘘!信用してるって!親友!」


そう言いながらバンバンと圭くんの背中を陽介くんは叩きます。


「ったく、相変わらず変わらないな·····」


私は嬉しそうに肩を並べて笑う二人を見ています。

そうすると陽介くんが手招きをしてきます。


「藤白さんもおいでよ!」

「い、いえ私は·····」


陽介くんは私の手を引っ張ります。

私は抵抗するのを諦め陽介くんの手を握り返す事にしました。









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