私は人形じゃない
俺は急いで藤白さんのいるであろうコンビニまで自転車に乗って全力で漕いだ。
こんな時間になんで出てるんだという怒りも多少あるが、女の子がこんな時間に出歩くこと·····ましてや自分の好きな女の子がそういったことをするので心配になった。
これが千紘なら問題はないのだが、むしろ心配になるのは千紘に何かしようとした人だ。
あいつは1度痴漢した人の手の骨を折りかけた。
俺が止めないと確実に折ってた。
そんな事を思いながらペダルを全力で回していると目的のコンビニにが見えてきた。
どこにいるか分からないから一度降りて電話することにした。
「·····陽介くん?」
「もしもし。もうそろそろ着くけどどこにいるの?」
「今·····あっ」
「藤白さん?」
「·····もしもし陽介?夏奈と一緒にいるから安心しろよ」
聞いたことのある声に俺は目を見開いた。
俺は怒りで胸がいっぱいになるが、我慢した。
感情的になれば会話にならないからだ。
「なんでお前が·····藤白さんといるんだよ」
「いやぁたまたま会ってちょっと話してるんだ·····邪魔すんなよ」
そう言ってから一方的に切られた。
「·····くそっ!」
俺はあの時なんで止めれなかったんだろう。
あいつが·····遊びで彼女に告白したって言ってたのを目の前で見てたのに·····
後悔がどんどん積もっていく。
俺は彼女に会って一緒に笑う資格があるのだろうか、止めれなかった俺が、何も出来なかった俺が。
そんなこと言ってる場合じゃない。
後悔するのは後だ。
私は震えながら彼を睨みました。
彼はヘラヘラと悪気のないような顔をしています。
「携帯……返してください」
「あっ、ごめん」
彼は私に携帯を返しました。
そして熱のある視線で私を見ます。
私はその目に不快感を覚えます。
「さてと·····さっき言ったことの返事教えてくれる?」
「あ…」
嫌なのに断ろうとしてるのに声が出ない。
喉が渇いていたい。
そんな私にしびれを切らしたのか、近藤くんは
「いいの?嫌なの?」
と言います。
冷水を被ったような感覚を感じます。
(嫌だ·····この人は嫌だ)
この人の言葉に頷くわけにはいかない。
また我慢しないといけないのでしょうか?
やっと·····やっと陽介くんや千紘ちゃんが見つけてくれたのに·····今の自分を受け入れようって思えたのに。
私はギュッと手を握りしめて言います。
ここで都合のいい人になるわけにはいかない。
「·····です」
「え?なんて?」
「嫌って言ったんですよ!」
私の言葉に近藤くんは、ぽかんとします。
私もこんな声出るんだと驚いています。
「わ、私は貴方のしたことを忘れてません·····遊びで私と付き合っていたこととか·····私が何も感じないとか·····」
私は今まで持っていた彼への怒りをぶつけます。
今まで言えなかったことを今ここでぶちまけるくらい許してくれるでしょう。
「私は·····何も感じない人形じゃない!ふざけないでっ!」
私は目に涙をいっぱい貯めて言いました。
近藤くんは先程とは違い不機嫌そうな顔をします。
「お前が·····?愛想がなくて、こんなにつまらない女いるかよ!·····ちっ、人が下手に出てりゃいい気になりやがって、調子に乗るなよ!」
彼の手が飛んできます。
私は反射的に目を瞑りました。
衝撃を覚悟してたのにいつまでたってもきません。
私は恐る恐る目を開けます。
「女の子に手出すって、近藤お前さ·····あきれるほどに最低だよ」
陽介くんの背中が私の目の前にありました。
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