差し出した手を
「……なんでそんなこと言うの?俺は藤白さんのこと絶対に嫌いにならない」
優しい口調で言う貴方にますます腹が立ってしまいました。
私のなにを知っていて、そう言うのか。
「そんなこと口でならいくらでも言えるでしょ!」
長い間ずっと我慢してたのに今更溢れてきて止められなくなってどんどん自分がわからなくなってしまいます。
なんでこうなったんだろう……。
『藤白っていっつも何考えてるか分かんないのによく付き合おうとか思ったな』
『すっげぇ暗いけど顔は可愛いし体もいいしな』
『おい!お前そんなこと言った傷つくだろ!』
一人が彼を注意します。
『別に藤白さんは傷つかないって!』
三人がそんな会話をしていました。
私はその言葉を聞いてしまったのです。
私のことが好きって言って嬉しくて頑張って隣にいるための努力もしてたのに、全てが無駄になったような気がしました。
その人はその話をしていた三日後に別れ話をしてきました。
『ごめん……その別れて欲しいんだ』
私は何も言えませんでした。
私とは遊びだったんだとか、最低とか、言いたい言葉があるのに言えませんでした。
殴るぐらいすればよかった。
その日を境に私は上手く笑えなくなりました。
作り笑いが多くなりました。
人と関わることに対して恐怖するようになりました。
「……もういいんです貴方もあいつみたいにどうせ!遊びとか言ってすぐに離れるくせに!もう嫌なんです……」
本当は悲しいはずなのに泣きたいはずなのに全然涙が出てきません。
目の前にいる彼はずっと黙っています。
(私何してるんだろ……)
どうせすぐに私なんかオモチャみたいに飽きたらポイの癖にそんな彼にどうしてこんなにも感情を剥き出しにして他人である彼に話しているのでしょうか。
きっと彼も私に対して好きだなんて感情もうないでしょう。
これでいいんですから笑うこともないし、「おはよう」「また明日」なんて使わない生活に戻るだけです。
「言いたいことはそれだけだよね?」
ゆっくりと彼は口を開きました。
「なんだよさっきから聞いてれば、俺が離れる?口でならいくらでも言える?遊び?俺は藤白さんのこと遊びで好きになった訳じゃない!勝手に決めつけんな!」
さっきとは一転して荒々しい口調にビクリと肩を揺らします。
私は驚いて何も言えません。
「これから俺が証明する!俺が……絶対に1人にしないから離れないから!」
「……嘘」
「嘘じゃない!」
また即答この人は……
「全くわけのわからない人です…なんでそう優しいんですか…なんで私のこと見捨てないんですか」
「……君が好きだから」
私はその場にへたり込んでしまいました。
どこまでも真っ直ぐで私は彼が眩しく見えます。
「……分かんないならこれから俺の事知ってくれると嬉しいな ……というわけで俺と友達になってよ!」
そう言って彼は私に目線を合わせた。
「じゃ改めて!初めまして俺は
そう言って地面に書きました。
「……貴方らしい名前ですね」
「よく言われる〜!で君の名前は?」
あれだけ私は貴方を傷つけたのになんで笑うのでしょうか。
私は変われるのでしょうか?
神様私にほんの少しだけ、こんなにも救いようのない捻くれ者な私に勇気をください。
「……私の名前は、藤白夏奈、ですこんな捻くれ者ですけどよろしくお願いしますっ」
私は笑えてるでしょうか。
「やっと笑ってくれたね今度は笑ってないとか言わせないからね……藤白さん!」
彼は手を私に差し出しました。
私は彼の手を戸惑いながら取りました。
「……はい認めざるを得ないですね」
もう一度自分を捨てることは無いでしょう。
私を見つけてくれた貴方が迷子になっても無くしても見つけてくれるのだから。
俺は彼女に謝りたかった。
俺は直接関わっているわけではないが、間接的にだけど、俺は関わっている。
被害者ヅラする権利俺にはない。
「あの……」
俺は屋上にいる彼女に話しかけた。
友人が言ってしまったことを謝らないとそう思って声をかけた。
「……何か用事ですか?」
泣きつかれたのだろう、目が腫れている。
俺はバツの悪い顔をしてしまう。
「あいつの……事なんだけど」
声が震える。
俺の意気地なし。
「……あぁ、あの人の事ですか別に気にしてませんよ」
少しだけ悲しそうな表情をする彼女。
「その……あいつの友達なのに止めてやれなくてごめん……俺がもっと強く止めてれば君を傷つけなくて済んだのに」
「なんで貴方が謝るんですか」
彼女は笑った。
俺の胸に彼女の悲しい笑顔が胸に深く深く刺さる。
「俺はその……」
彼女は何か思いついたのか俺に話しかけた。
「あ、そうだ申し訳ないって思うのならひとつお願いを聞いてくれませんか?」
「できることならいいですけど……」
「じゃあ今日ここで私に会ったこと忘れてください」
俺は彼女が何故そんなことを言ったのか分からなかった。
どうしてそんな笑顔で言うのだろうか。
「分からないって顔してますね」
彼女は俺の考えを読んだのだろうか。
「きっと私は明日からこうやって今みたいに笑ったり泣いたり、怒ったりするのもできない……もう疲れちゃって……感情なんて持ってない方が楽だなぁと」
俺の友人と……俺は彼女をここまで傷つけたのだ。
もう俺にはどうすることも出来ない。
後悔が募る。
「だから忘れてください」
そう言って彼女は俺に最後に満面の笑みを向けて屋上から出ていった。
俺はただ呆然と彼女のいなくなった屋上に一人佇んでいる。
「なんで……」
そんなこと言うのだろう。
彼女はもう笑わない。
もう泣かない。
怒りもしない。
悲しくて泣きそうだが、彼女の方が辛いはずなのに。
泣くことなんて出来るはずがない。
友人が彼女と付き合っていた。
だから諦めた。
図書室で真剣に勉強してる君に一目惚れした。
時々見せる笑顔が可愛くて、友人といる時にだけ見せる特上な笑顔が羨ましくて悔しくて。
でも……諦めたくなくって。
君には悪いけど…。
「……藤白さん今日の放課後空いてる?」
忘れてなんて君は言ったけど……忘れてやるつもりなんてない。
「……空いてますよ」
表情一つ変えない君は屋上で話した時とは大違いだなと思った。
「じゃ藤白さんのクラスで待ってるから!」
「分かりました」
ねぇ……君はきっと俺の告白を断るよね。
でも何回でも君に伝えるよ。
好きだって……大好きだって。
同情なんかじゃないから、こんな自分勝手で傲慢な俺をどうか許してほしい。
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