予測不能

 月曜日。

 今日も今日とて登校し、授業を受け、放課後。


 今日は、今週木曜日に控えているホワイトデーのため、バレンタインデーにもらったチョコのお返しを買いに行く。

 ネットで調べたら、サンシャインシティの噴水広場にて、ホワイトデーのお返し用お菓子の特設販売会場ができているらしいので、ちょっと行ってみることにした。

 悠斗は、コンビニで売っているホワイトデー用のお菓子を買うとか言っていた。

 僕もそれでいいと思ったが、特設会場がちょっと気になったので、財布と相談して安いものがあれば、そこで買ってみようと考えている。


 という訳で、帰り支度をして、隣の席の毛利さんに別れの挨拶をしようと立ち上がった。


「じゃあ、今日は用があるから帰るね」


「待って」


「え?」

 僕は、呼び止められるとは思わず、ちょっと驚いて尋ねた。

「なに?」


「服部さんと話、まだしてないよね?」


「服部さん?」


 何だっけ…?

 そうだ! 思い出した。


 “P” からの怪文書の謎のままの部分、“CROWNから盗む”の件。

 それについて、新たな “P” の犯行予告があった。

 どうやら、 “P” は3月14日に何かやらかすらしいのだが、怪文書に書いてある “CROWN”が、毎年、学園祭で恒例のイケコン、ミスコンの優勝者に送られる王冠の可能性があるのでは? と推理する。

 今は、次の学園祭で使われる王冠はまだ作られてないはずだが、服飾部から何か盗まれるかもしれないということで、そのことを服飾部の部員である服部さんに注意喚起をしようと、以前、毛利さんと相談していたのだ。


 すっかり忘れていたよ。


 僕は答える。

「まだ、話してなかったよ」


「ごめん。私、用事があって、もう行かないといけないの。だから、聞いておいてほしいのだけど…」

 毛利さんは申し訳なさそうに言った。


「え? そうなの…。わかった、聞いておくよ」


 毛利さんが用事があるって珍しいな。

 毛利さんは、カバンを担ぐと立ち上がり、教室の前の方にいた雪乃と合流し、2人で教室を去る

 教室を去る前、雪乃が僕に手を振って別れの挨拶をした。

 毛利さん、雪乃とどこかに行くのか…?

 たまに、一緒に買い物に行ったりしているようだからな。

 まあ、いいや。


 さて、服部さんに話をするか。


 服部さんは、ちょっとぽっちゃしりしていて、丸メガネをかけている。

 髪は肩ぐらいの髪を二つ結びにして、地味で真面目な感じの生徒だ。

 僕は彼女とは同じクラスになって、もう1年にもなるが、ほとんど話したことがない。

 人見知りの僕にはちょっとハードルが高いが、仕方ないので話しかける。


 教室の前の方の席で、まだ椅子に座って帰る準備している服部さんに近づいて声を掛けた。


「あの…、服部さん」


「え? 武田君?」

 服部さんは僕に話しかけられて、とても驚いている様子。


「あのさ…」

 僕は、怪文書やそれに書かれた“CROWN”について詳しく説明をした。


 かくかくしかじか。

 話が少々長くなってしまったが、服部さんは状況を理解してくれたようだ。


「と、いうことは、3月14日に服飾部で何か盗まれるかもしれないってことね」

 服部さんは不安そうな表情で、僕の話の内容を確認した。


「そうなんだよ」


「わかった…。ほかの部員とも相談してみる」


「うん、よろしく」


 服部さんは、立ち上がって教室を後にした。

 まあ、あんな話をされたら不安になるだろうな。

 しかし、犯人は何を考えているのやら。

 新聞部の片倉部長が言っていたように動機がわからない。


 周りをみると、教室にはもう誰も居なかった。

 僕もサンシャインシティで用事を済ませないといけないので教室を後にした。


 下駄箱付近までやって来ると、新聞部の片倉部長、小梁川さんと他の部員たち数名が、また集まっていた。


 僕は彼らに声を掛ける

「こんにちは」


「やあ、武田君」

 片倉部長は笑顔で挨拶を返してきた。


「今日も、予行演習ですか?」


「そうだよ。犯人は学校の関係者なのは間違いないようだから、こうやって何回もやっているのを見せつけることで、プレッシャーになるはずだから。予行演習は、明後日、ホワイトデーの前日にもやるよ」


 片倉部長、慎重だな。


 ホワイトデー当日に何か下駄箱に手紙が置かれたりするかどうかはわからない。

 そして、服飾部から何か盗まれるかどうかも、わからない。

 “P”が何をしでかすか予測不能なのだ。

 そもそも、予告状のとおり3月14日に何かあるのだろうか?


 僕は、片倉部長たちに別れを告げると、学校を後にした。

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