暁を覚えない春眠編

サプライズを仕掛けよう

 はっ!


 目が覚めた。

 今回は夢を見なかったぞ。

 こういう日もある。


 時計を見ると、まだ、かなり早いのだが着替えて登校の準備をし、台所に向かった。

 台所に到着すると、両親と妹が朝食を取りながら団欒をしていた。

 妹が僕の姿を見つけると叫んだ。


「お、お、お兄ちゃん?!」


「おう、おはよう」


「自分で起きて来るなんて! そして、滅茶苦茶、時間早いんだけど?」


「なんか、目が覚めたらかな、そして今日は金曜日だし」


「ああ、そうか! 金曜日は、女子に貢ぐ弁当を作るんだっけ?」


「別に貢いでいるわけじゃない。物々交換だよ」


 そうなのだ。

 金曜日の昼休みは、雪乃と毛利さんと僕の3人で弁当の交換会を毎週やっている。

 というわけで、僕は弁当を作る準備を始める。

 昨日の残り―これは母親が作ったものだが―を詰め。冷凍食品をレンチンしてそれも詰めて完成。

 手抜きだが、僕の手間がかかっているので、僕の愛情入りだから良い、ということにする。それに、いつも2人は美味しいと喜んでくれてるし。


 父親が先に出勤し、共働きの母親も少ししたら出勤した。


 弁当作りが落ち着いて、ダイニングで座って朝食のパンを食べていると、妹が絡んできた。

「お弁当って、毛利さんと織田さんと交換してるんだよね?」


「そうだよ」


「二股だ」


「なんでだよ。だた、弁当を交換している仲だぞ」


「誰か1人にしたら? 織田さんはダメだけど」


「じゃあ、誰だった良いんだよ?」


「うーん…。歴史研の人たちなら良いよ」


「それは、毛利さん、伊達先輩、上杉先輩の3人とってこと?」


「3人じゃなくて、その内の1人ってこと! 3股とか、何考えてるの?!」


「だよな…」


「紗夜さんと付き合いなよ」


「一番可能性が無いな」


「紗夜さんが義姉さんになったら、楽しそうだなー」


「僕が地獄だよ」


 などと、アホな会話を適度に終了し、妹は中学に出かけて行った。

 そして、僕も徒歩5分で到着する高校に登校する。


 午前中の授業が終わり、僕と雪乃と毛利さんの3人は、いつものように体育館の観客席でそれぞれ持ち寄った弁当を交換して食べている。


 おもむろに僕は話題を振った。

「この弁当交換会だけど、2年になったらどうする?」


「2年もやろうよ!」

 雪乃は嬉しそうに言う。


「いいと思う」

 毛利さんも雪乃に同調する。


 まあ、いいか。

 僕としては、どちらでもよかった。

「じゃあ、2年も継続だね」


「「うん」」

 雪乃と毛利さんは嬉しそうに返事をした。


 昼食が終わり、僕らは教室に戻ろうとする。

 途中、雪乃が僕の腕をグイと引っ張った。

「純也、ちょっと。毛利さん、先に戻ってて」


 雪乃は中庭まで僕のを連れて来た。


「一体、なんだい?」


「来週、3月8日は、歩美の誕生日でしょ?」


「ああ、覚えているよ」


「私たちでサプライズのお祝いしてあげようよ」


「えっ? サプライズ? まあ…、良いけど」


 それにしても、みんな、サプライズとか好きだよな。

 ということは、毛利さんの誕生日プレゼントも考えないといけないな。

 3月はホワイトデーのお返しもあるし、出費がキツイ。


 先月のO.M.G.の名古屋遠征で物販の手伝いをしてバイト代をもらったが、それだけでは心許ないな…。

 そして3月の週末は、演劇部と映画研究部のショートムービーに出演しなければならず、週末はO.M.G.の手伝いはできない。

 よって、稼げないのだ。

 上手くやりくりしないと…。


 僕と雪乃は話し合いが終わると教室に戻って行った。

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