デートコース検討会議

 夜、僕は自室のノートパソコンの前で、頭を抱えていた。

 先日、雪乃の指令を受け、明日のデートコースを考えなければいけないのだ。


 以前、雪乃とは池袋とお台場で、毛利さんとは池袋でデートしたからなあ…。

 忘れてたけど、毛利さんとはクリスマスイブだけでなく、夏休みの最終日にも池袋でデートしたんだよな。その時のは、夏休みの宿題をやった後の“お疲れ様会”っていう名目だったけど。


 さらに、その前に伊達先輩とも豊洲に出かけたことがあったな。

 あれはデートとカウントできないだろうが、女子と一緒に出掛けることが、それなりにある。

 それなのに、あまり充足感が無いのは、一体、何なんだろうか。


 また池袋でもいいんだけど、合コンでも2回とも池袋だったし、ちょっと飽きてきた。

 そして、同じようなルートだとダメ出しが来そうだしなあ。

 地下鉄の雑司ヶ谷駅から乗り換えなしで楽に移動が出来て、人混みが無くて、お金がかからないところ。

 そんな都合のいいところあるんだろうか…?

 うーん…。

 その後も、しばらく悩む。


「お兄ちゃん」

 突然背後から声を掛けられた。

 振り向くとそこにはパジャマ姿の妹が立っていた。


「おお!  びっくりした! ノックしてから入って来いって、いつも言ってるだろ」

 エロいサイトを見てたらヤバかった。


「ノックしたよ。返事が無いから入って来たんだよ」


 全然気が付かなかったな。パソコンに集中していたからか?

 僕は文句を言う。

「返事が無いなら入って来るなよ」


「死んでたらいけないと思って」


「生きてるよ」


「何やってるの?」


「明日のデートコース考えているんだよ」


「やっぱり、デートなんだ」


「あ、いや…。お前も行くことになったから、デートじゃないな」

 僕は再びパソコンに向き直って尋ねた。

「どこか行きたいところないか?」


「夢の国」


「いや、無理だろ。あそこは、入場料が高すぎて破産する。それに、今の時期は人が多いだろうし」


「夢の国がいい!」


「無理だって。何でそんなに推すんだよ?」


「あそこにデートに行ったカップルは別れるっていうから」


「はあ? カップル? 別れるも何も…、雪乃とは、もう付き合ってないのは知ってるだろ?」


「予防だよ」


「なんだよ、それ…」


「じゃあ、どこでもいいよ、決まったら教えて」

 そう言うと妹は僕の部屋を出て行った。


『どこでもいい』っていうのが一番困るんだよな。

 そして、雪乃と毛利さんと妹は、興味のあるものがバラバラだろうから、全員が満足するような場所を決めるのはなかなか難しい。

 ちなみに、僕は行きたいところは無い。


 面倒なので、深く考えるのを止めた。

 適当に決めて、待ち合わせ時間と場所を決定する。

 そして、それを雪乃と毛利さんにLINEで伝える。


 雪乃に尋ねて、妹が行くのも、OKが出た。

 OKされなかったら、ひと悶着ありそうだったからな、よかったよ。

 妹にも直接、決まったことの内容を伝えた。


 一仕事終わったので、ベッドに横になる。


 最後に、泊りのなので持って行く荷物で少し悩む。

 妹や僕の寝巻は、織田さんと彼女のお父さんのを貸してくれると、先ほどLINEで言っていた。その分は荷物は少なめですむ。

 歯ブラシとか小物は、大した量ではないので負担は少ない。

 冬休みの宿題もやるって言ってたから、筆記用具とノートは持っていく。


 あとは、雪乃の家、明日は家族居ないって言ってたし…、何かあるもしれない…。

 雪乃に迫られて、僕の理性が性欲に負ける可能性も視野に入れておきたい。

 “付き合ってないから”、という理由は雪乃には関係ないみたいだからな。

 妹も泊まるから、そのよう事態が起こる事は無いのか?

 しかし、雪乃は見られてゾクゾクするとか言ってたよな。妹や毛利さんが居ても構わず迫ってくるかもしれない。

 それに、以前、雪乃と自室でイチャついていた時に、雪乃は『妹も一緒にイチャつけば良い』みたいなこと言ってたよな。

 まあ、さすがに妹とイチャつくような事態はないだろうが。

 そして、今回は毛利さんが居る。雪乃と毛利さんと3人で楽しい事…、いやいや、良からぬ事が起こるかもしれんないな…。


 ということで、何が起こるかわからない。

 何も起こらないかもしれないが、念のために、ゴム持っていこう。

 雪乃だけでなく、もし毛利さんも参戦してくるとなると、1つじゃあ足りないだろうから、箱で持っていくことにする。

 未経験なのにいきなり3Pとか、そんなエロ漫画のような事態が起こるのだろうか?

 僕は、期待と不安を胸に(ほとんど期待)、眠りに就いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る