パソコン

 僕は伊達先輩に連れられて生徒会室までやって来た。

 ここには初めて訪問する。

 校舎の2階、階段のすぐそばで、歴史研の4階の端の端の部室に比べると便利がよさそうだ。


 伊達先輩に促されて中に入ると、ロの字に並べた長テーブルがあって一番奥のテーブルの前に女子が3人いる。彼女らはパソコンを覗いていた。


「あっ、会長!」


 その内の一人が、伊達先輩が部屋に入ったのに気が付いて声を掛けた。


 その女子3人は見たことがあった。

 いつだっけ…?

 そうだ、生徒会選挙の時、校舎前で伊達先輩が選挙活動をしていた時、一緒に立っていた。そして、僕が応援演説をした打ち上げでファミレスにも一緒に行った人たちだ。

 名前は以前聞いたような気がするが、選挙以来、会ってなかったし、もう忘れた。


 僕は彼女らの名前を確認するために小声で伊達先輩に確認する。

「先輩、彼女たちの名前をもう一度教えてください」


 伊達先輩も小声で答えてくれる

「いいわ。まず、右は副会長の松前さん、真ん中は会計の津軽さん、左は書記の佐竹さんよ」


 ああ、ちょっと思い出してきたぞ。

 3人とも2年生。


 松前先輩は前髪を長く伸ばし、真ん中で分けていて、ちょっと神秘的な雰囲気。確か占い研究部の部長もやっているはずだ。


 津軽先輩は、天然パーマで、小柄で小太り、小動物っぽくて、ゆるふわ系。彼女は手芸部部長。


 佐竹先輩は、ショートボブで細長い縁のメガネを掛けている。放送部の部長だったかな。


 3人の名前を僕に教えてくれた後、伊達先輩はその3人に言った。

「武田君を連れて来たわよ」


「「「おおっ!」」」


 3人は同時に歓声を上げた。


「武田君! こっちこっち!」

 松前さんが手招きして僕を呼んだ。


 僕が近づくと、パソコン前の椅子に座らされた。


「実はパソコンの調子が悪いので、見てもらえないかな。私たちはパソコンには詳しくなくて」


「分かりました。見てみます」

 と言いつつ、僕もそんなに詳しいわけじゃあないのだが…。


 僕はマウスを手にして、パソコンの様子を探る。

 動きがかなり遅いが…。

 ハードディスクの空き容量を確認すると、もう一杯で空きがほぼ無い。そもそもハードディスクの容量が少ないパソコンだった。

 多分、これのせいだな。

 容量が少ないのは、パソコンはだいぶ古そうだからだ。見た目もだいぶ年季が入っている。


「なるほど。多分データがいっぱいだからですよ。要らないデータは削除するとか、他のメディアに移したほうがいいですね。それに、パソコン自体も古いようだから、新しいのに買い換えては?」


 伊達先輩がちょっと困ったように答えた。

「予算の関係上、パソコン買い換えは難しそうなのよ。他のメディアってどういうの?」


「USBメモリとか、DVD-Rとかです」


「ごめんなさい。良く分からないわ」


「そうですか…」


「そのメディアって値段はいくらぐらいなのかしら?」


「USBメモリも、DVD-Rも、1000円以下で済むんじゃないですか」


「そのぐらいの値段なら大丈夫ね」


 価格を聞いて伊達先輩がちょっと安堵したようだった。


「早速、池袋の家電量販店まで買いに行きましょうか」


 と続けて言ったのだが、僕に対していったとは思わず、ぼーっとパソコンの画面を眺めていたら、伊達先輩に肩を叩かれた。


「武田君に言っているのよ」


「僕ですか?」


「その、USAメモリとか、良く分からないから、一緒に言ってもらわないと買えないわ」


「USAじゃなくて、USBですよ」


 伊達先輩はPCの事は不得意らしい。彼女の不得意なことをまた知った。

 今日も優越感に浸れるな。いつもやられっぱなしなので、いい気分だ。


 そんなわけで、僕と伊達先輩は池袋に繰り出すことにした。

 副会長、書記、会計の3人もついて来るという、ついでに一緒に池袋でお昼ご飯を食べようということになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る