博多帯
増田朋美
博多帯
博多帯
雨が降っていて、何をするにも憂鬱になってしまいそうな日であった。こんな日はどんな人でも外出するのをためらってしまうだろう。どんな人だって憂鬱になるのは当たり前の天気であった。そういうわけで、客商売と言われている物販をやっている人にとっては、もっと辛いものがあった。ただでさえ雨が降って客が少なくなるし、売上だって、晴れの日と同じようには行かなくなるからだ。
「今日も人は来ないかなあ。」
雨が降っている外を眺めながら、カールさんはそうつぶやいた。
「まあねえ、呉服屋なんて、雨の日は来ないんじゃないんの?」
杉ちゃんはぼそりと言った。
「まあ、そうかもしれないね。昔の日本人は雨でも着物を着ていたのに、今は晴れの日だけの物に変わってしまったんだねえ。」
カールさんは一寸ため息をついた。
「まあ、それは仕方ないよ。着物が普段着というわけにはいかないでしょう。まあ、そんなもんだと思うよ。」
杉ちゃんはカラカラと笑った。
「それはそうなんだけどね。できれば、こういう時は、客に来てもらった方が、頭の中で考えている事も吹き飛んでさっぱりすると思うんだけどなあ。」
カールさんが思わず本音をいうと、
「まあそれもそうだけど、なかなか客を呼ぶのは難しいよ。着物っていうのはな。」
杉ちゃんは笑ってそう返したのであった。そうだねえと言ってカールさんは、売り台にある着物の整理に取り掛かった。
と、その時。
店の入り口についていたコシチャイムがカランコロンと音を立てなった。つまり客が来たということである。
「あ、いらっしゃいませ。お着物のご入用でございますか?」
カールさんは客に訪ねてみた。リサイクル着物屋というと、女性ばかりが来訪すると思われがちであるが、この客は女性ではなく男性であった。しかし、強そうな人という感じではなかった。背はさほど高くないし、何処か弱弱しいような感じだった。服装は、黒のブランド物のジャージ上下を身に着けている。まあいずれにしても、何かわけがある事は、確かだった。
「こんにちは。今日はご来店頂きありがとうございます。もしかしたら、舞台衣装とか、そういうものがご入用でしたか?」
カールさんはとりあえずそういってみた。
「あ、はい、えーととりあえず、男性の着物が一枚欲しいんです。」
という彼。カールさんは、すぐに分かりましたと言って、
「それでは、まず着物を選んで頂きますかな。着物と言っても、礼装用から普段着用までいろいろございます。どの着物を着たいのか、教えていただけますでしょうか?」
売り台にある、男物の着物を指さした。
「そうですね。普段着として着たいというか、一度着物を着てみたかったんです。」
と、彼が言った。カールさんは、はいはいと繰り返し、
「今の季節に普段着として着るなら、そうだなあ、紬がおすすめですよ。初心者の方でも着やすいし、うごいても破れにくい生地として好評です。色んなブランドの紬がありますが、初心者の方でしたら、牛首紬や、上田紬等がいかがでしょうか。どちらも丈夫な生地ですし、着やすいと思いますけどね。こちらなどいかがですか?」
と、黒色の紬の着物を売り台から取り出した。いわゆる、行儀小紋と呼ばれる、男性物でも女性ものでも、高級品と名前がついてもおかしくない代物だ。黒地に小さなXを隙間なく入れ込んだ着物の事を行儀小紋というのだが、江戸時代には、徳川宗家に使えた武将たちが着ていた着物である。
「はい。ありがとうございます。試しに着てみてもよろしいですか?」
と聞いてくる彼に、カールさんは、はいどうぞ着てみてくださいと答えた。その人が着物を羽織って、カールさんに渡された腰ひもを締めている様子は、とても楽しそうだった。杉ちゃんは、着物の説明をしたかったが、それはしてほしくなさそうだった。カールさんが、ついでに帯もご入用ですかと聞くと、彼は欲しいと言ったので、
「じゃあ、この角帯をもってけや。献上柄の博多だから、いろんなところへ使えるよ。」
と、杉ちゃんが、一本の博多帯を彼に見せた。確かに鎌倉時代にある、献上柄という物である。
「結び方は知っているか?知らなかったら僕が作り帯にしてあげるから、心配しないで。」
杉ちゃんが再びそう聞くと、
「そうですか、ありがとうございます。其れなら御願いしようかな。恥ずかしいことは無いですよね。」
と彼は言った。
「いやあ、何も恥ずかしい事はないよ。お前さんみたいに着物を着たいけど、帯が結べないという人はいっぱいいるよ。それに、たいして恥ずかしいと思わないことだ。邪道でもなんでも無いんだ。着物は楽しく着こなせれば、それでいいんだよ。」
杉ちゃんに言われて、彼はやっと嬉しそうな顔をしたのであった。
「じゃあ、お前さんの名前と、住所を教えてくれるかな。帯が縫いあがったら、連絡しなければならないもんでな。」
と、杉ちゃんがいうと、カールさんがメモとペンを出してきて、彼に渡した。
「はい、益子と申します。益子紳一郎です。住所は、富士市ではなく、静岡市です。」
「益子さんね。益子焼の益子かなあ。静岡市から、わざわざこんなところに来て、着物を欲しがるなんて、お前さんも変わってるなあ。」
男性が自分の名前を書いてそういうと、杉ちゃんはそういう事を言った。
「じゃあ、お前さんのところに電話をすれば、取りに来てくれるんかいな?」
と杉ちゃんが聞くと、
「はい、それでは御願いします。」
と、益子さんは答えた。
「分かったよ。じゃあ、完成したら電話するから、その日またここで取りに来てね。よろしくお願いしますよ。」
杉ちゃんがそういうと、
「ええわかりました。それでは、完成したら、その電話番号に電話をください。もしかして家族が出るかもしれないんですけど、それは伝えてもらうようにしますから。」
と、益子さんはにこやかに言った。
「はい、分かりました。ありがとうな。形はどうしたらいいかな?」
と、杉ちゃんが聞くと、
「ええ、それは、先生にお任せします。和裁の知識は何もないので、一般的に結ばれているという、貝の口で大丈夫です。」
と、益子さんは答える。
「はあ、そうなのね。」
と杉ちゃんはいった。
「とりあえず作っておく。だけどね、本当は、行儀小紋となると、袴をはいて礼装として使った方がいい着物なんだけどね。行儀小紋に、貝の口は、合わないと思うよ。」
「杉ちゃん、一般的な人はそれくらいしか知らないと思うよ。とりあえず、そのくらいにして置いたら?」
カールさんは急いで杉ちゃんの発言をとめた。
「だけどねえ、着物の格というものは、守って貰わなければいかん。今から、三役について説明してあげるから、一寸、ここで聞いてみな。」
と、杉ちゃんがいうが、
「いえ、本当に、貝の口で大丈夫なんです。礼装というのは、着る機会がありませんから、普通に着流しで大丈夫です。そのまま、貝の口で作り帯にしていただければ。お金はちゃんと払いますから。それでいいじゃないですか?」
と彼は言った。
「いやあ、お金を貰うことと、着物を作ることは、別問題でしてねえ。」
と、杉ちゃんがいうと、
「あんまり着物の格に拘り過ぎるのも、今の時代は合わないと思うんですけどね。まあ、今の時代は、色んな着物の着方が流行っている時代ですから。それは、大目に見てあげてもいいんじゃないですか。今回は、とりあえず着物買ってもらって、其れからまた、何かのきっかけで着たくなるかもしれないですよね。まあとりあえず、この着物の代金である1000円と、帯の代金である、800円を払ってくれれば。あと、杉ちゃんの、」
と、カールさんは言いかけたが、杉ちゃんはすぐに、
「ああいいよ。作り帯を作るなんて、大したことじゃない。まあ、ただでいいや。」
とカラカラに笑って、打ち消した。
「ええ、そうですか。ありがとうございます。それでは、よろしくお願いします。納期はどれくらいでしょうか?」
と、益子さんがいうと、
「まあ、一週間くらいあればいいや。帯は、すぐできちゃうから。それでは、すぐに取り掛かれるから、出来上がったらお前さんに電話するよ。」
杉ちゃんは急いで言った。
「それでは、よろしくお願いします。じゃあ、この着物だけ先にもってかえってもよろしいですか?」
益子さんは着物を脱いで、急いでたたみながら言った。
「ああ。それは大丈夫だけどさ、帯なしで着物を着るわけにはいかないと思うけど?着物と帯は一緒に持って帰った方がいいのでは?」
と杉ちゃんがいうと、
「いえ、先に持って帰ります。何だか取り置きして置くのも悪いので。」
と、彼は言って、急いで1800円をカールさんに渡した。
「まあそういうことならそうしますよ。じゃあ、紙袋を差し上げますから、持って帰ってください。序に、領収書は要りますか?」
と、カールさんがいうと、
「いえ、領収書は必要ありません。連絡さえしてくれれば、必ず取りに来ます。」
益子さんはそういうのだった。カールさんは、分かりましたと言って、急いで着物を紙袋に詰めて彼に渡した。
「ありがとうございます。これを着られるようになるのが楽しみです。よろしくお願いします。」
「はいよ。」
と、杉ちゃんが、デカい声で言った。彼はカールさんから紙袋を受け取って、軽く頭を下げて、店を出ていった。またコシチャイムがカランコロンとなる。
「どうも、おかしな客だなあ。」
と、杉ちゃんが言った。
「なんで、着物だけ買って、帯を持って帰らなかったんだろう。まあ確かに、僕に帯を縫ってくれというのならわかるんだけどね。でも、行儀小紋に貝の口という組み合わせもおかしいよ。もう少し着物の事について、勉強しなくちゃ。どうも顔つきも変だったし。なんか訳ありだなあ。」
「まあ確かにそうかもしれないけどさ。もしかしたら、ほかの持っている可能性だって、あるよねえ。」
と、カールさんは杉ちゃんにいうが、
「いやあ、だって、一応さあ、着物だって、ルールとか、着用するとき何の帯をあわせるとか、そういうことはちゃんと伝えておかないと、いけないんじゃないの?何も聞かないで、着物だけ持って帰るかな?ほかの帯を持っているなら、結び方だって、知っているはずだ。それは、なかったじゃないか。」
と、杉ちゃんは話をつづけた。カールさんも、ああそういえばそうだなあと思う。
「それでもちゃんとお金は払ってくれたし。それでいいことにしようよ、杉ちゃん。たまにはそういう事もしなければならないことだってあるだろからねえ。」
カールさんはそう結論付けたが、杉ちゃんは一寸不服そうだった。
「まあ、いずれにしても、杉ちゃん、急いで作り帯を作ってあげてさ。あの益子さんが又取りに来るのを待つことにしよう。」
「そうだね。はいよ。」
杉ちゃんはため息をつきながらそういうことを言った。
其れから、杉ちゃんは、その博多帯を使って、貝の口結びの作り帯を制作した。作り帯の制作なんて、直ぐにできてしまうものである。すぐに彼の教えてくれた番号に電話をかけてみたが、いつまでたってもつながらないのだった。家族が出るといっていたはずなのに、おかけになった番号は現在使われていないというアナウンスが流れてしまうのだ。カールさんが、電話局に番号を問い合わせてみたが、電話局はやっぱりそのような番号は使われていないという答えしか帰ってこないのである。
「おかしいなあ、家族が出るって言ってたけど、電話局に電話しても、何も返ってこないのはおかしいよなあ?」
頭をひねりながら、又電話をかけているカールさんに杉ちゃんは言った。
「そうだねえ、幾らかけても留守ってことはないだろうしねえ。」
カールさんも頭をひねって、電話の受話器を又とって、再度ダイヤルしてみたが、やはりおかけになった番号は、現在使われていないとアナウンスが出てしまうのだ。
「何回やってもつながらない。もう10回目だよ。まあ、着物のお題は払っているから、そういうことはないと思うけど、商品を取りに来ないというのは、おかしいよねえ。」
カールさんは一寸ため息をついた。
「もう、一週間はとうの昔に過ぎているんだ。其れなのに、取りに来ないというのは、どういうことなんだろうな。あの人、帯が無くて、困るんじゃないか?着物だけでは着物姿にはなれないよな。」
と、杉ちゃんがいうと、カールさんもそうだねえといった。
「まあ、ほかの帯があるから良いとでも思っていたんだが、確かに商品を取りに来ないのは、困るなあ。」
「一体僕たちは何をしたんだろう?」
杉ちゃんもカールさんも、不思議な顔をした。
「それでは一体、僕たちはどうしたらいいのかな?」
「そうだねえ、このまま待っているわけにはいかないし、それでは、催促しようというわけにもいかないし、、、。」
カールさんは、スマートフォンを取って、もう一度益子さんの電話へ電話をかけようとすると、ニュースアプリが音を立てなった。またどうせ、くだらないニュースだろうと思ったが、その画面にはこう書いてあった。
「富士川にて、三人の男女の遺体を発見。三人は、家族と見られる。生活苦の為か。」
「どうしたの?」
と杉ちゃんが聞いた。カールさんは、杉ちゃんに質問されると答えが返ってくるまでやめない事を知っていたので、すぐに答えてしまった。
「いや、なんでもね、富士川で、男女の遺体がみつかったというんだ。えーと名前は、ああ、遺体のひとりの首にかかっていたヘルプマークに名前が書いてあったそうで、水でにじんで見えなかったようになっていたが、かろうじて益子と読めたそうだ。」
「益子。」
杉ちゃんもカールさんも顔を見合わせた。
「たしか、僕たちのところに、着物を買いに来た奴も、益子だったよな?変わったお客だから覚えている。で、遺体になってたのは、どんな人物とか、そういうことは書いていないの?」
杉ちゃんが急いでそう聞くと、
「ああ、なんでも、男性が二人と、女性がひとり。年齢は、60代前後の男女と、20代くらいの若い男性と書いてある。女性の方がヘルプマークを所持していたらしい。」
と、カールさんは答えた。
「つまり、一家心中でもしたってことか。なんか、ヘルプマークつけてるって書いてあると、切なくなるね。まあ、確かに必要なマークではあるんだろうけど、一寸、それは差別を促すようなマークでもあるよなあ。」
と、杉ちゃんは大きなため息をついた。
「そういう事だねえ。何とか三人で生きていくすべでもなかったのかな。行政も生きる権利はあるといっておきながら、こういう事件を出してしまうんだよね。」
カールさんは外国人らしい発言をした。
「それじゃあ、あの青年は、今頃、川に飛び込んじまったということか。あーあ、僕たちが、せめてとめてやればよかったよなあ。あの青年、多分きっと最後の晩餐みたいなつもりで着物を買っていったんだろ。せめて僕たちが、ここでまっているといってやればよかったんだ。なんか、直接事件に関わったわけじゃないけど、なんか悪いことした気分だよ。其れってどう表現したらいいんだか。僕にはわからないね。」
杉ちゃんがそういうことをいっているのを聞きながら、カールさんも、何だか複雑な気持ちになった。ということはつまり、あの時着物のお金を払ってくれた青年は、もう帰ってこないということになるのだから。
「不思議なお客というか、何だか悲しいお客だね。」
と、カールさんはそうつぶやいた。
丁度その時。
からんころん、と、店の入り口にぶら下げてあった、コシチャイムが音を立ててなる。
「はい、いらっしゃいませ。」
と、気持ちを切り替えようとしながらカールさんが言うと、そこには、先日やってきた男性となんとなくだけどよく似た面持ちをした男性が立っていた。でも、あの青年のような、弱弱しい感じでは何もなかった。ただ、顔つきが似ているので、兄弟であることは分かった。
「あの、どちら様でしょうか?」
と、カールさんが聞くと、
「はい、益子と申します。あの、自殺を図った、益子紳一郎の実兄です。」
その人はそう答える。でも、なんとなく形式的で、事務的で、もしかしたら、迷惑を被っている
と思っているのかもしれない、そんな顔であった。
「ああ、あの、お兄さんだったのか。あのねえ、弟さんは、僕たちのところで、着物を一枚買っていったよ。そして、僕が作り帯を作ろうかと言って、帯を一本あずかったけど、結局来なかったので
、どうしたのかなと思ってた。其れなのに、さっきニュースアプリで、弟さんが川に飛び込んだと聞かされた。高齢の男女も一緒だったという。もし、彼のご両親だったら、それはお前さんのご両親ということにもなるよなあ?」
と、杉ちゃんが早口にそういうと、益子さんは、はい、そうですと小さい声で言った。
「まさか、ああなるとは思いませんでした。あんな暴力的な父が、弟と母と一緒に死ぬとは思いませんでした。僕は結婚することによって、家を出て、家族とは決別したつもりだったんですが、弟がこんな事をやらかして、僕たちが、お二人に謝罪をしに回る羽目になるとは思いませんでした。」
「なるほどねえ。つまりお前さんは、逃げられて、幸せになれたということだねえ。それで、ご両親を、弟さんに押し付けて、結局、弟さんは、富士川に飛び込んだのか。」
杉ちゃんは、一寸彼をとがめるように言った。
「そういうことになります。確かにその通りかもしれません。ですが、あんな昔気質の父のそばにいるなんてとても耐えられませんでした。僕は成績が悪いとかそういう事でよく叱られてましたけど、弟は、父にかわいがって貰っていたから、それほど自分と追い詰めることはなかったと思っていたんです。」
「なるほど。思ったことを口にしないで、お互いの事を言い合うこともしない、黙っているのが素晴らしいなんて、馬鹿なことを思っている日本人らしい事件ですな。」
カールさんが、大きなため息をついた。
「僕からしてみれば、お互いの事を平気でしゃべりあうような環境にいるのが幸せだと思うんですけど。逃げるよりも、完全におかしくなって逝ってしまうよりも。日本人というのはどうも変なところで拘っているようで、おかしいと思うんですよね。お互いの事をしゃべりあう文化が在れば、こうならずにも済んだのかなあ。」
つまり、紳一郎さんが、着物を買いに現れたのは、もしかしたら、この世とさようならをするための儀式のような物だったのではないか、と、いうことが言えるだろう。其れこそ、何とも切ない話しでもあった。
「多分きっと、弟は、覚悟を決めてやったんだと思いますが、僕はやってくれてよかったという気持ちがしないわけでもないです。あんな、昔気質の父と母は、絶対この世では誰かの助けなしでは生きていけなくなっても、人に迷惑かけるだけで、何もなりませんから。まあ確かに、弟がこの店へ来て、迷惑をおかけしたと思いますけど。でも、ひとつの解決でもありますよね。」
そういうお兄さんに、杉ちゃんもカールさんも無力感を感じた。何だか、きっと、そういう風にするしか解決方法のない事件なのかもしれなかった。
「あのなあ、悪いけど、これ、弟さんだと思って持って行ってくれないかな?」
不意に杉ちゃんがそういうことを言って、貝の口を作った博多帯の入った袋を、お兄さんに突き出した。
「もしかして、弟さんの最後のメッセージだったのかもしれないよな?」
杉ちゃんの一言は少しきついようであったが、お兄さんは、それを受け取ってくれた。
博多帯 増田朋美 @masubuchi4996
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