一緒に地獄に落ちてくれ
『一緒に地獄に落ちてくれ』
「…居心地の良さに、甘えてた自覚は有るんだよ」
「うん?…あぁ、まぁそりゃあなぁ」
回想を遮る様に発せられた言葉は如何せん投げかけた問の答えとしては嚙み合っていない。迂遠な語りでも沈黙に勝る白金と思うことにする。午後の授業はフケようと早々に覚悟を決めた。
「傍から見てたって先ず『和気藹々』って言葉が浮かぶ程だ、其れ自体は悪い事じゃあるまい?」
其の有様を見ていなければ誰がこうまで面倒な役回りに立つほど彼らに入れ込むものかよ。
「俺と風紀が少しずつでも歩み寄って、気兼ねない冗談を飛ばし合う様にまでなって、それをアイツは…」
「楽しそうに見てたな、其れは間違いなく本心からだよ」
「…そう、言ってたか?」
「あぁ」
「…」
得難い確信であっただろうに、其れでも彼の表情は険しさを増したように見えた。
「俺の、思う所って言うなら…」
「…うん」
「ずっと、このまま三人で居られれば良かったよ」
―――その言葉を、待っていた。
脳裏に過るが早いか、口に出すのが早いか、いや何よりも早く隣に腰掛ける彼の頭を両腕で抱きかかえていた。
「へぇあっ!?」
素っ頓狂な声を上げる彼。
「君の気持ちは良く分かった。其の上で、驚かないで聞いて欲しい」
「いや、それはいいけど、へ?え?何で抱き締められてんの?」
絶対に守り抜こうと思った。烏滸がましいにも程があるが、独り善がりでもそうする事が自身の務めと確信していた。
~~~~~
「…一つ、考えが有るんだ」
背後の寝台で泣きじゃくる彼女を振り返り声を掛けた。
「上手く行くかは分らんが、それでも試す価値は有る」
「…ウチは、何したらいい…?」
純潔を失しても純粋さは衰えず、寧ろ弥増すようにすら見える瞳が私を捉えていた。
~~~~~
「君の望む関係からは少し変化が生じるかも知れない。其れでも、均衡の乱れは正せると確信してる。俺を信じて、乗ってくれるか?」
~~~~~
「お前は…そうだな、その前に聞いておこう。俺を信用して、事の成り行きを預けてくれるか?」
~~~~~
「…あぁ」
~~~~~
「…うん」
~~~~~
わかった、それなら
一緒に地獄に落ちてくれ
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