第6話

今日は土曜日。翔太さんと、日向さんと一緒にお出かけする約束の日です。待ち合わせ場所は渋谷のモヤイ像前とのことでした。あ、ありました!

彫りの深い独特のフォルムをした彫像、そして、その傍らには__目が窪んで、クマが出来て、げっそりとしたまるでモヤイ像のような顔色の‥‥‥あれは‥‥‥翔太さん?


「あの、翔太さん‥‥‥ですよね?お待たせししました」

「はっ、春香さん!久しぶり」

「お久しぶりです!今日はお誘い頂きありがとうございます。あの、お顔色がすぐれないようですが、大丈夫でしょうか?もし具合が悪いようでしたらまた日を改めて‥‥‥」

「え?いやいや!元気元気!全然大丈夫!これはちょっともんもんというか、もやもやが溜まってしまったというか‥‥‥」

「もやもや、ですか?」

「いやっ!もやというか、あ、えと、そう!

もやい!もやい像のまねみたいなものなんだよ、今流行ってて」


なるほど、その様な文化が流行っているのですね。

これが渋谷カルチャーというものなのでしょうか?

私もモヤイ風にしてくれば良かったです。


「翔太、、あんた何いってんのよ」


私達の背後から、声が聞こえてきました。


「日向!」「日向さん!お久しぶりです」

「春香ちゃんやほ!ついでに翔太も」

「ついでって!」

「ついでよ、ついで、出会い頭に春香に嘘教えてんじゃないわよ」

「嘘、ですか?」

「そ、モヤイの下り、流行ってるとかあれ全部翔太の冗談だから間に受けなくて良いからね」

「え!?そうだったんですか?翔太さんひどいです」

「(怒った顔も可愛いな‥‥‥)」

い、いやーごめんね春香ちゃん、ちょっと場を和ませようとして」

「ふふっ、冗談です、モヤイのモノマネとっても素敵でした」

「お茶目な春香ちゃんもかわいいな(ボソッ」

「かわいい?ですか?」

「あ、いや!?服装!そう服装がかわいいなって」

「そうですか?ドレスコードがないと伺ったもので、少しカジュアルにしすぎたかと思って、心配だったのですが、そういってもらえて嬉しいです」

「うん、デザインがオリジナリティがあって素敵だなって」

「ありがとうございます、実はこれのデザインアイデア私が考えたんです」

「え!そうなの?すごい本当にセンスあるね、とっても似合ってる」

「翔太‥‥‥あんたさっきから顔にやけすぎ、ちょっときもい」

「そ、そんなことないって」

「‥‥‥ばーか‥‥‥ま、いいけど!さ、カラオケはやくいこ!」

「お、おう」

「‥‥‥‥‥‥私もお洒落したんだけどな、翔太のばか(ボソッ」



そんな風にわいわいやりとりしながら、私達は目的地へ向かいます。今日はカラオケという場所に連れてって下さるとのこと、なんとなくのイメージは翔太さんから教えて頂いたものの、実際は一体どんな場所なんでしょう。楽しみです。


一つだけ確信していることは、どんな所でも

お二人と一緒ならきっと楽しいに違いありません。


カラオケに到着した私達は、受付で入館手続きを済ませた後、小さな部屋に通されました。


5畳ほどの広さの中に、簡単な腰掛けとマイクと液晶画面が配置されています。


ここは待合室でしょうか?


それにしては狭すぎるので、恐らく本来はペット同伴の方のための犬小屋として使用されているのでしょう。


受付の方もお忙しそうでしたし、手違いで犬用のお部屋へ案内してしまったのですね。ふふっ、うっかりさんですね。


「よっしゃー春香ちゃん歌お!」

「歌う、のですか?犬のお部屋で歌っても大丈夫なでしょうか?」

「犬の部屋?犬のお巡りさんのこと?春香ちゃん童謡好きなんだ、なんかぽいかも!そうえば、春香ちゃんはカラオケ初めてだったね?この部屋で各々好きな歌を歌うって感じなの!何歌ってもOKだから、好きなやつ入れてこー!」


そうなのですね、今時の日本では、犬用サイズの部屋で歌う事がトレンドだったとは!!

ミニマリズムの思想を、遊戯の場所にすら早急に取り入れる柔軟さ‥‥‥!なんて素晴らしいのでしょう!

本当に日本文化には驚愕するばかりです。

また一つ勉強になりました。


「私から歌っちゃうよー」

「~♪~♪」


伸びのある歌声が部屋中に響き渡ります。日向さんの歌はとても涼やかで、まるで本物の歌手のようでした。


「すごい!素敵ですね」

「そ、そう?へへ、ちょっと歌には自信あるんだ」

「歌が上手な方って素敵ですわ」

「!お、俺も!歌おうかな」

「~♪~♪愛してる~♪」


翔太さんが歌っているのは俗にいうラブソングというものでしょうか?とっても情熱的に歌われていて素敵です。日向さんは、飲み物を取ってくるといって丁度、席を外しています。


「ふう、どうだったかな?」

「好きな方に愛をささげる歌なのですね、ロマンティックで素敵です」

「そ!そうかな?実は今ちょっと気になっている人がいて、その人の事を考えながら歌ったんだ」

「まあ、翔太さんの想われ人さんは幸せものですね」

「本当にそう思う?」

翔太さんが何かを訴えるように私を見つめながら、真剣な顔たずねます。何でしょう、まるで何かを察して欲しいような‥‥‥


!!!!!


次の瞬間、私は全てを理解しました。




翔太さんの、想いを

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財閥令嬢・阿部野宮春香は美男達を魅了する ヒモートワーカーズ @himohimo1234

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