第2話




今日の任務はなんだったか…そんな事をぼやぼやと考えていると、後ろを歩いていたリーダーが任務の内容を教えてくれる。


「……リーダー心の声でも聞こえるの?」


ちょっと引き気味に問いかけると「どうだろうね」とにこやかに返されてしまった。

あ、これ以上は踏み込まない方が良い感じですね……

俺は引き際を間違えない男だからな…これ以上の追求は辞めておこう。と再び前を向くと後ろからクスクスと笑う声が聞こえた。

…本当に聞こえてるんじゃないのかこれ…?


「うおっ!」


リーダーの心の声問題に頭を悩ませていると唐突に頭を押さえつけられる。


「石なんて投げて人に当たったらどうするんだい?」


馬鹿力に涙目になりながらリーダーの見つめる先に視線をやる。

そこには十数人の子供達がいた。


「う、うるさい!!お前らなんか人じゃない!!!ばけもの!!!」


先頭に立つ少年が声を上げるとそれに続くように後ろにいる子供達も叫び出す。


「…ばけもの…ね、」


かおるがちいさく呟く。

ばけものあながち間違っていない表現だ。

だからこそこんな子供達の癇癪かんしゃくのような怒りに対しても反論することが出来ない。


「じゃあじゃあー君たちは化け物に対して石投げたって事だよね??」


にこやかな笑みを浮かべて蛇ノじゃのめが子供達の方へ歩き出す。

二者の距離と比例するように子供達から先ほどまでの威勢が消え失せていく。


「あ…来るな……くるなああああああ!!!」


あと一歩と言うところで子供の1人が叫びながら石を投げる。


ゴッ…


デタラメに投げた石は蛇ノじゃのめの頭に見事的中。

普通の人間ならば気絶くらいはするだろう。


「いて…」


ノーダメージ。

正確には多少は喰らっているのかもしれないが、少なくとも子供達にはそう見えた。

次の瞬間子供達は全身を恐怖の沼の中に浸からせてしまったかのような。言い知れぬ感覚を覚えた。

それはまさしく恐怖なのだが、ここまでの絶対的な恐怖を感じたことがなかった子供達はそれすら分からない。

ただひたすらに目の前にいる存在から逃げなくては。と全身が危険信号をならす。


「人が喋ってるのに石なんて投げちゃだめじゃーん」


また一歩近づく


「…蛇ノじゃのめ…」


「なーにー??」


リーダーの制止に蛇ノ目が振り返る。


「それ以上は辞めておけ。」


「えーーでもこいつら・・・あり??」


後ろを向いている間に逃げたのか蛇ノじゃのめが前を向くとそこには大量の石が積まれているだけだった。


「あーあー!!ルゥくんが邪魔するからどっかいっちゃったじゃーーん!!」


ふてくされたよう言うと、積み上げられた石を蹴り飛ばす。

ガラガラと大きな音を立てて崩れていくのに気分を良くしたのか、鼻歌交じりに戻っ

てくる。


「では、先を急ごうか。今日中に南沙羅町なさらちょうに到着しないといけないからね。良いかな?かおる?」


先ほどから俯いたままだった薫の肩に触れるとリーダーは再び歩き出した。


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