第1章

第1話



「なぁ、知ってるか?」

君が笑顔で問いかける

「外の世界はーーー」


「……」


寝ていただけの身体は汗でじっとりと湿り頭は割れるように痛い。

15年前から同じ夢を見て、15年前から寝起きの悪さは変わらない。

見知らぬ少年がこちらに笑いかける夢。

名前も顔も知らないはずなのに何故か罪悪感と後悔を覚える。


「…外の世界は……か…」

拳を握りしめる。


握りしめた拳を見る事は出来ないがきっと血が出ている。


「…ごめんな…さい…」


膝を抱え何度目か分からない謝罪をする。

何が悪いのかも誰に対してなのかも分かって居ないのに毎朝毎朝……自分でも滑稽だとは思うがそうせずには居られない。


「…」


その時部屋のドアをノックする音…いやノックと言うより殴ってる音が聞こえてくる。


海人かいと起きてるの!?もう出発するわよ!」


うるさい。

これ以上部屋の前で騒がれるのは御免だしそろそろ出るか…


「ちょっときいてるの!…!!」


扉を勢いよく開けると自分よりずっと低い位置にある瞳が睨みつけてくる。


「おはよう海人もう出発の時間だけど準備は出来ているのかしら?」


顔を引き攣らせながら話す彼女に部屋の奥にある荷物を見ろと顎で示す。

ドヤ顔で見下ろしていると彼女…蜜薗みつぞのかおるは部屋へ入り荷物を持ち上げる。


「準備できてるなら良いわ。全く可愛げがないんだから…もう出発するわよ。」


呆れ顔で話す薫は自分と同い年のようには見えない…


「お節介ゴリラおば…」


腹に強烈なパンチが飛んできて後ろによろめく。

俺じゃなかったら死んでるぞこれ。


「私達みんな同い歳のはずだけど……なんか言った???」


「…なんでもない」


これ以上からかうと任務に支障が出そうなので大人しくすることにした。


「そう?それならいいわ!ほらみんな待ってるわよ!」


薫に後ろからグイグイと押されながら宿屋の外に出ると本当に全員揃っていた。


「あれ、蛇も居るじゃん…」


いつも起きるのが遅い蛇・・・蛇ノじゃのめ太一たいちまでこの場にいるとはどうやら本当に寝過ごしたらしい。


「ボクより起きるの遅いなんて海人くんダメダメだねぇ〜」


ケラケラと笑う顔にイラッとしたので1発蹴りを喰らわせる。


「あ〜海人くんが蹴ったァ〜」


今度はメソメソと泣くふりをする○○に面倒臭くなったので放置することにした。


「では出発しようか」


静かに会話を聞いていたリーダー神眼かみがルーが声をかける。

今日もかったるい一日が始まる。

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