第11話 長くて太くて硬くて黒い物 Part2

山賊を移送しながら人里に向けて移動中。

移動中に危険な獣と遭遇した時に、遠距離からの攻撃が可能な俺とフェムトが先頭を歩いている。

最後尾には、ナノとピコが歩いている。

そして、ナノとピコの二人の前を、山賊に捕らえられていた人達が、山賊から取り上げた武器を持って歩いている。


今の所は、危険な獣との遭遇は無い。

人里に向けて移動して、標高が低くなればなるだけ、危険な獣との遭遇は減るそうなので、運が良ければ、そんな獣と遭遇しないで、人里に辿り着けるかも知れないそうだ。


一緒に行動しているフェムトから、人里に関する情報を聞き出し、山賊のリーダーからは、何故 山賊行為をしていたのかの理由を聞いた。


そして、今は脳内でシムと会話をしている。



なあシム?さっき設置した【基地局】を“超特大”って言ってたけど、色んな大きさの【基地局】が有るんだね。

全部で何種類有るの?

生きるのには関係無いから、【基地局】とかの情報が後回しなんだろうけど、教えて欲しいなぁ・・・・・・


[わかりました。【基地局】の大きさは、特殊タイプを除き、八つです。最初に起動した“極”が一番 大きいです。これは二つ設置箇所が在り、もう一つは、この星の真裏になります。次に二つの“極”【基地局】の中間地点に六つ設置箇所の在る“特異点”が次に大きいサイズです。それでも高さは“極”の約半分と、“極”と比べたら、かなり小さくなります。次に大きいのが、先程の“超特大”です。“超特大”は“極”の周囲には多いですが、“極”から離れると、疎らにしか設置点がありません]


ふ〜ん・・・・・・そうなんだ?特殊タイプって?


[【基地局】には、特殊タイプが存在する事は解っていますが、それがどんな物なのかの情報は、まだ開放されていないので、私にも解りません]


そっか?残念・・・・・・


で、さっき設置した“超特大”の【基地局】よりも、ずっと大きな“特異点”なんて【基地局】が有るんだね。


[はい。そうです。そして、六つの設置箇所が在る“特異点”と同じく、“極”も特異点でもあります。この特異点とは、大地が著しく魔力を貯めている地点を言います。宜しければ、【基地局】の設置点を、マップの中に表示可能にする変更を行いましょうか?]


うん。ヨロシク。それと、【基地局】のサイズが比較出来る図か何かも準備して欲しいかな。


[了解しました]


マップを見ると、大小の黒い点が加えられていた。


しかし、六つとは言っても、あの大きな“超特大”の【基地局】よりも、ずっと大きな【基地局】が有るのか・・・・・・

“超特大”でさえ、電信柱並みの大きさだったのになぁ・・・・・・

かなり長くて太いと思ったのだが・・・・・・名前的にも、“超特大”が最大なのかと思っていたのに・・・・・・

独りでそのサイズの【基地局】の設置は、かなり大変だったんだけどなぁ・・・・・・

ああ、マップ上の設置点を見ると、かなりの数を設置する必要が有る様だ。


[いいえ、この点全てに設置をする必要は無いだろうと思います。何故なら、このポイントには、海の中も含まれているからです。海の比較的浅いポイントまでには、設置出来るかも知れませんが、深海等の人が行く事の無い地点は、設置をする必要は無いかと思います]


あ、なるほどね・・・・・・海の中になる所も含まれているのか・・・・・・って、それでも多いじゃん!


[はい。しかし、アユム様が必要としない所には、陸上でも【基地局】の設置は必要無いのではないでしょうか?]


確かにね・・・・・・

俺が行かない所に設置しても仕方無いよね。


その海とかの水で覆われている所が、マップ上に表示が無いけど、これは表示出来ないのかな?


[はい。“極”の【基地局】だけによる広範囲のマップ表示では、水の様に流体で覆われている所は、その水の下の土や岩などの固い部分を表示するのが限界です]


そっか・・・・・・

マップ上のどこから海なのか、もっと【基地局】や【中継器】を設置しないと、可視化出来ない訳ね・・・・・・


[はい。申し訳御座いません]


いや、仕方無いよ。

確かに“極”の【基地局】一つだけで、この星の半球の情報を、全て把握するのには、かなり無理が有るだろうって思うからね。


この異世界で初の電話と言う文明の利器だ。

まあ、正確には、電力では無くて、魔力で機能している物だから、魔話まわと言うのが正しいのかも知れないけど、何か慣れないから、取りあえずこれからも電話と呼称しよう。


しかし・・・・・・

マップ上の設置点を見ると、歩いて来た道から、かなり離れた所も在る。

こんな魔物の存在するジャングルの中に、自分で設置していかなきゃならないのか・・・・・・

しかも、“極”【基地局】の周囲の設置点は、“超特大”の【基地局】の所が多い。

電信柱サイズの物を、こんな中世程度の文明の所で・・・・・・かぁ・・・・・・

厳しいなぁ・・・・・・

きっと交通手段は、在っても馬車なんだろうな・・・・・・

どうやって設置しよう・・・・・・

あんな長くて太い物を・・・・・・

さっき設置した【基地局】も、最初に起動した“極”の【基地局】と同じ様に、ツヤツヤと黒く光を反射して輝いていた。

あんな大きな物を・・・・・・かぁ・・・・・・




「もう少しで集落に着くよ」


フェムトが教えてくれた。

でも、その「もう少し」を信じられない。

きっとこちらの世界の人と、現代人の俺とでは、距離の感覚は大きく違う筈だ。


まあ・・・・・・頑張って歩くか・・・・・・



「みんな水分を補給しなくても大丈夫かな?」

移動途中 それぞれ持っていた水分と、途中の崖の湧き水の所では、みんな水を飲んでいたが、渓流くらいの川や小さい泉では、何故か水辺にさえ近付こうとしない。

理由を聞くと

「水の多い所には魔物が多くいるから」

と言う。

でも、人は生きる為に水分の補給は不可欠だ。

歩いた距離を考えると、みんな水分の摂取量が足りない。

これがこの世界の常識なのかな?


「やっぱり水辺は怖いかな・・・・・・ 一番 魔物に襲われやすい所だからね」


フェムトの言葉からすると、かなり水辺は魔物が多いらしいが、移動途中の水辺には、魔物は見当たらなかった。

運が良かったのかな?


やはり、フェムトが人里まで「もう少し」と言ってから、それなりに歩いた。

うん。やっぱり東京育ちの現代人とは、距離に対する感覚が大きく異なる様だ。


あ、でも正面から人が歩いて来ている。


「あら?こんにちは。ねえフェムト?どうしたの?この人達?」


フェムトの知り合いらしい。


「あ、モビュ 隣のアユムは、遠くから来た旅人なんだって。後ろの集団は、山賊と、その山賊に囚われていた被害者の人達だよ。山賊を捕まえたから、領主様の所に連れて行くんだ。それを領主様に伝えて貰えるかな?お願い出来る?」


「えっ!?山賊!?うん。良いよ。今から先に行って伝えておくね!」


折角 ここまで用事で歩いて来ただろうに、前から歩いて来た娘さんは、フェムトに頼まれて、来た道を戻り、領主様に伝言してくれる様だ。

凄く助かるが、申し訳無く思ってしまう。


「友達だったんだね?」


「うん。家が近い」


「伝言を受けてくれて良かったね。良い娘だね」


「うん。真面目な良い娘だよ。さあ、もう少しだから頑張ろう」


「ああ、そうだね」


後少しで、本当に人里に着くらしい。

さて、もう一踏ん張り頑張って歩くかね。

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