第12話 読み書き算数とスマホ操作と【アイの誕生】
やっと到着した。
そこは、外周を3メートル程の高さの木製の塀で囲まれた村?人里だった。
この塀の目的は、人では無くて、魔物から守る為なのだろう。
何度も修繕をした跡が無数にある。
爪痕の様な傷も、塀には刻まれていて、魔物が何度も襲って来た事が解る。
「ふぅ・・・・・・ 着いたかぁ〜 やっとだよ!」
本当に疲れた。
体力的には余裕だが、精神的に疲れた。
特に、山賊を引き連れて移動する様になってから、一気に精神的な疲労が増した。
「お疲れ様」
「本当に疲れたよ。ははは・・・・・・」
半分 苦笑いをしながら、フェムトに言葉を返した。
「ようフェムト こいつ等か!?」
村の入口に立っていた男が声を掛けてきた。
「そうよ。話を聞いているみたいね」
「ああ、さっきモビュがな。で、その横に居る男はなんだ?」
俺を不審そうに見ている。
「アユムだよ。遠くからこっちに来たんだって。山賊に襲われた時に助けてくれたんだよ」
「おう、そうか。それは ありがとうな。俺はゴジだ」
男が俺に手を差し出し、お礼を言ってきたので、俺も手を差し出し握手をする。
「いえいえ、無事で良かったです」
「今 山賊を拘束する準備をしている、取りあえず受け入れが出来るまで、ここで一緒に待っててくれるか?」
「良いですよ。じゃあ先に山賊に囚われていた人達の事をお願いします」
「おう。解った」
「よろしくお願いします」
「ああ、任せろ」
「おい、お前等 山賊に捕まってた奴を手助けしてやれ」
ふぅ・・・・・・
やっと一つ問題が解決した。
さて、仕方が無い。山賊の事は準備が出来るまで少し待つか。
待つ間に、シムが変更してくれた事でも確認するかな・・・・・・
「よっと・・・・・・」
ザクッ!
地面に手に持っていた大剣を突き刺し、スマホをいじる。
なあ?シム?この大剣 良いんだけど、持ってるとスマホをいじれなくなるのは困るね。
[そうですか?こうしてコミュニケーションが取れるので問題無いかと思います]
そうかもだけど、ほら、やっぱり画面を見れないとね・・・・・・
[わかりました。大剣を右手に持って頂けますか?]
ん?良いよ。
右手に地面に突き刺した大剣の柄を持つと、剣全体が光り輝いた。
[変更 終了しました]
ん?なにが?
[剣にスマホを組み込めるギミックを加えました]
は?えっ?
あっ!本当だ!スマホ位の窪みがある!
[はい。そこに嵌め込む事が可能です。これで簡単に画面を確認出来ます]
えーーーーっ!いや、そうかもだけど、剣にって!剣と一体化するって!剣と一体化!?もうそれスマホじゃ無いじゃん!
[いえ、スマホです。一体化後も通話出来ますから]
えっ!?そこ!?通話がスマホかの判断基準!?
[はい。フォン ですから]
はぁ・・・・・・ さいですか?まあ良いや・・・・・・
シムが剣と一体になっても、良いんなら良いや。
おっ!?本当にLIMEとかアプリが増えてる。
でも、まだやっぱり少ないね。
動画が無料で観れるアプリは全滅だし。
[そもそもこの世界では動画が存在しません。同期や最適化が済めば この端末だけは
うん。ヨロシク頼むよ。
「ねぇ?フェムト?待ってる間に、三人に少しスマホの使い方を教えるよ」
シムとの話が終わったので、フェムトに声を掛けた。
三人が近くに来たので、三人にあげたスマホでアプリストアのアプリをタップして貰う。
「ここでスマホに機能を追加するアプリってのを増やせるよ」
キョトンと三人がしている。
「機能を追加するって、もっと凄くなるの?」
ピコが不思議そうに質問してきた
「そうだよ。使う人の好みで機能を増やせるのがスマホの良い所だからね」
でも、使ってみないと分からないよな。
「取りあえずLIMEってアプリを追加しようか」
三人のスマホのアプリストアに表示されたLIMEと言う、大多数の日本人が使っているメッセージングアプリを、それぞれの端末にインストールする。
「これを使うと言葉じゃなくて、文字で情報交換が出来るよ」
「えっ?文字で?」
「うん。そうだよ」
「でも、私達 話すのは出来るけど、文字を書くのは苦手だよ・・・・・・」
「えっ!?そうなの?」
そうだった。識字率がどの位か確認してなかった!そうだよ。ここは異世界だから、識字率が元の世界の日本より、識字率が低い可能性が高い事を忘れてた!
「うん。そう。私は少し読み書き出来るけど、ナノは読み書きが凄く苦手」
「うん。私は読み書き苦手・・・・・・」
そうなんだよな。会話が出来ても、文字が書けるとは限らない。こんな当たり前の事を失念していた。
「この文字はなに?こんな文字知らない」
あっ!そうだ!文字は日本語で記載されてた!
フェムトの言葉で気が付いた!
「あ、これは俺の住んでいた所の文字だよ。遠いから違うんだろうね」
「そうなんだね。私達には読めないよ」
「そうなんだ?」
メッセージ交換系のアプリは、諦めるしかないか・・・・・・
でも、識字率を上げたら、使える様になるけど、そこからか・・・・・・
しかし!快適なスマホライフって考えたら、そこ大事だよな。
うん。識字率を上げよう。みんな日本語を知らないなら、日本語を普及させれば良い。
どうせそもそも識字率が低いんだし良いよね。
「じゃあ最初はアプリは要らないね。文字を教えるから、覚えたら使える様になるよ」
「「「えっ!?読み書きを教えてくれるの!?」」」
「うん。そんなに驚く事?」
「うん。私達は王族の血を引いているから、少し教えて貰えたけど、普通 簡単には教えて貰えない」
と、フェムトが驚いている。
「そうそう。って、そう言えば、こんなに色んな事を知っているアユムって、やっぱり私達と同じで王家の血を引いているのかな?」
ピコが質問してきた。
「えっ!?いや、俺 普通の庶民だよ」
「そうなんだ?そんな庶民が博識な所も在るんだね」
ナノが驚いている。
「まあ、俺の住んでいた所の文字になるけど、それで良ければ読み書きを教えるし、算数とか他の事も教えるよ」
「「「えっ!?アユムは算数とかも出来るの!?」」」
「えっ?うん。俺の住んでいた所では普通だよ」
「そうなんだ?凄い所だね。私 教わりたい」
勉強を教える事に、フェムトが特に食い付いている。
「うん。良いよ。俺の知っている事なら、何でも教えるよ」
「あっ!?アプリって魔法のが有るんでしょう?私の無いよ」
「えっ?そうなの?」
フェムトが自分のスマホを見せてきた。
「本当だね」
ねぇ?シム どうしてなの?
[魔法のアプリ化はアユム様の場合は特別だからです]
そうなの?
俺以外には無理なの?
[出来ますがスマホ所有者の身体情報の登録が必要になります]
身体情報の登録?
[はい。アユム様の場合は私と繋がって同期されていますので自動的にアプリ化が可能でしたがアユム様以外は私と繋がりが有りません。なので身体情報が無いのでアプリ化されません。身体情報が登録されたなら可能になります]
なるほどね・・・・・・
「あのね?身体情報の登録ってのが必要なんだ。まだ三人はしてないからアプリになってないんだよ」
「そうなんだ?じゃあ登録してくれる?」
「うん。良いよ。他の二人はどうする?」
「「もちろんする!」」
って事で、三人の身体情報の登録を、シムに脳内で説明を受けながら、それを三人に教えた。
「これで出来たよ」
「「「ありがとう!」」」
[三人の身体情報の登録が行われましたのでAIのサポート機能を開放します]
ん?なにそれ?
[私はアユム様の分身なのでアユム様のスマホには 私というサポート機能が有りますが 私が作成したスマホには私の様なサポート機能は有りません。それだと読み書きの出来ない人には使用が困難でしょう。身体情報が取得出来ましたのでAIを組み込む事が可能になりました。AIは機能は制限されていますが私の能力を擬似的に再現したものです。この機能を開放する事で音声によるサポートを付加する事が出来ます]
つまり、シム程の能力や機能は無いけど、音声でスマホの使用が可能になるって事?
[はい。あくまでもAIによる擬似的なものなので 私の様に自律した事は出来ませんが 音声で機能を使用出来たり音声での読み上げ等のサポートが可能になります]
なるほど・・・・・・
[そこでサポートAIの名称を決めて下さい。その名前を使用者に呼ばせる事で機能がアクティブになります]
了解。名前はアイかな。
安直だけど他にAIがこの世界には存在しないから問題無いよね。
[了解しました。サポートAIの名称は【アイ】。その名を使用者が呼べばアクティブになります]
「あのさ、身体情報の登録で機能が向上したんだ。「ねえ?アイ?」ってスマホに呼び掛けると声でアプリなどの機能を操作出来る様になったよ」
「「「なにそれ!??」」」
「まあ、良いからスマホに「ねえ?アイ?」って呼び掛けてくれる?」
「「「えっ?うん・・・・・・ じゃあ・・・・・・せいの・・・・・・」」」
「「「ねえ?アイ?」」」
「「「はい。初めまして。アイです。私の使用方法の説明をしますか?」」」
三人が同時にスマホに呼び掛けると、三人のスマホからアイが返事を同時にした。
それに驚く三人は、見ていて凄く面白い。
「えっ!?」
「なに!?」
「えっと・・・・・・」
「「「はい!お願いします!」」」
「「「『ねえ?アイ?カメラを起動して』と言ってみて下さい」」」
「「「ねえ?アイ?カメラを・・・・・・」」」
アイが説明を終えると、三人が一斉に詰め寄って来た。
「なんですか!?あれは中に人が入っているんですか??それともアイって人と通話したんですか!?」
「いや、落ち着いてフェムト。中に人は居ないし、通話でも無いよ・・・・・・」
「落ち着けるか!!じゃあ人じゃないなら何なのよ!」
「ナノ いや、それでも落ち着いて・・・・・・ あれは人工知能って言うねアプリみたいなものだよ・・・・・・」
「ジンコウチノウって何ですか!?人の名前ですか!?」
「いや、ピコも落ち着いて・・・・・・ 人の名前じゃ無いよ。アプリの名称みたいなものだよ・・・・・・」
「「「わかんない!そもそもアプリってなに!?」」」
すっげぇー目を白黒させて質問してくる。
鬼気迫る って言っても言い過ぎじゃ無い位の感じで質問をしてくるから、正直 逃げたい。
プログラムって言っても、プログラムってのも解らないのだから、アプリって言ってるけど、何も解らない人に説明をするのは、凄く難しい。
「まあ・・・・・・ 魔法の様なモノって事で・・・・・・」
「「「えーーーーっ!?」」」
「説明が難しいの?」
「うん。ごめん。ゆっくり色々と教えるから、今はそんな物だって思ってて。ごめんね」
「「「うん・・・・・・」」」
「あ、魔法がアプリ化されてない?」
フェムトだけが確認している。
「あっ!アユムに有ったのと同じアプリが有る!」
「良かったね。じゃあ使い方を説明するね」
「先ずは魔法のアプリをタップして・・・・・・」
【魔法】とアプリ名が日本語で書いてあるアプリをタップして貰う。
他の二人も興味津々に覗き込んでいる。
「うん。タップ・・・・・・」
「次に使う魔法を選択・・・・・・」
「何て書いてあるの?」
「えっと、これが【加熱】で、こっちが【送風】で・・・・・・」
「じゃあ【送風】かな・・・・・・」
フェムトが左手の平を前に向けて【送風】をタップすると、扇風機の強風位の風が手のひらから起きた。
しかし・・・・・・
魔法の名前が【加熱】や【送風】って!家電かっ!
って、心の中でツッコミを入れても虚しいなぁ・・・・・・
「「「凄い!簡単に魔法が使えた!」」」
三人共 凄く驚いて喜んでいる。
「魔法を使うの凄く集中力が必要だったのに、これなら一発だったよ」
「うん。見てて思った」
「凄いね」
「喜んでくれて良かったよ」
[アユム様 前にお見せした身体能力の可視化をスマホ内に表示可能な様にアプリ化出来ますがどうしますか?]
えっ?それって つまり、ステータス表示が出来る様になるって事だよね?
[はい。そうです]
異世界でステータス表示は
是非 アプリ化して下さい。
[了解しました。アプリ化を行いました]
ありがとう シム。
「あ、今 機能が更にアップデート・・・・・・つまり、機能が向上して、スマホに自分の身体能力の表示が可能になったよ」
「「「えっ?なにそれ!?」」」
「ほら、このアプリが追加されたから、これをタップすると・・・・・・」
「ごめん。読めない」
ナノが謝ってきた。そうだった文字が読めないんだった。
「何て書いて有るの?」
「えっと、これが名前の項目で・・・・・・って、名前が未記入だね。入力しよう。良かったら正式な名前を教えてくれる?」
「私は、ナノ・ドワーズだよ」
「私は、ピコ・ゲノーモス」
「私は、フェムト・ゲノーモス。私とピコは
「そうなんだ?じゃあ三人の名前を入力するね・・・・・・」
「はい。オッケー」
「ねえ?この文字はなに?」
「これは数字って文字だよ。数を示す文字だよ。これは体力でナノが10で三人の中で一番高いよ。どの位 長く走ったりとかが出来るかって数値だよ」
「そうなんだ?この同じ数字のは?」
「これは筋力で力の強さ」
「へー!凄い!」
「ねぇ?ここはなに?」
「えっ?BにWにH・・・・・・ えっ?もしかして・・・・・・スリーサイズ・・・・・・」
「それってなに?」
フェムトの質問に返答に困る。
「ちょっと待ってね・・・・・・」
なあ?シム?この B W H って・・・・・・
[はい。スリーサイズです]
何でそんな数値を入れるの!?
[アユム様が興味が有るかと思いまして]
いや、有るけど!説明に困るじゃん!
[それぞれの説明を【アイ】に任されたら良いかと思います]
あ、そうか・・・・・・
「あ、あのさ、スマホの使い方に慣れる為に、俺から説明を受けるんじゃ無くて、【アイ】に説明させようよ」
「そうだね。そうしよう」
「うん。じゃあ、三人 それぞれ解らない所の説明を【アイ】にさせてみよう」
「おう、待たせたな」
ゴジが声を掛けてきた。
「引き継ぎの準備が出来たから、山賊を縛って拘束して、牢の代わりの所に連れて行くよ」
「あ、良かった。よろしくお願いします」
「山賊を捕らえてくれたアユムとナノ ピコ フェムトの三人は、領主様が会ってお礼を言いたいってよ。良いか?」
「あ、良いですよ」
「「「私達は・・・・・・」」」
「おじさんに怒られないかな?」
「うん。恐いね」
「「恐い・・・・・・」」
「絶対 怒るよね・・・・・・」
「「だよね・・・・・・」」
「「「行きたくない・・・・・・」」」
三人は凄く行きたく無さそうだ。
「おじさんって親戚なの?」
「うん。私達の遠い親戚のおじさん」
とフェムトが俯きながら答えてくれた。
「まあ、怒られそうなら俺がそのおじさんをなだめてあげるよ」
「「本当!?」」
「良いの?」
「ああ、良いよ」
「じゃあ・・・・・・行こうか?」
「「うん・・・・・・」」
一番 年長のフェムトに促されて、三人は一緒に行く事にした。
「じゃあ、行こうか?」
「うん。案内するよ」
フェムトが先頭に、ピコ ナノ と続いて、その後を俺が行く。
さて、領主様と会って、どうなるのやら・・・・・・
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