第9話 スマートフォンとは通話の出来る電話だがココは異世界

捕まえに捕まえた山賊、大人の男だけで50人を超えている。

それ以外に、大人と一緒に山賊行為をしていた少年(一部 少女も含まれる)も数名。十人弱じゃないかな?

それと、山賊の拠点に居た女子供は、山賊の家族と分かる。


家族を置いて逃げる訳にいかないから、山賊は大人しく降伏した。

俺が殺さないと思った様だしね。


問題は、この多くの山賊を、どうやって領主とやらの所に連れて行くのか・・・・・・だ。


ナノ達三人だけで、連れて行って貰おうとすると、山賊が逃げようとした時に、対処が出来ないから、俺も一緒に行って、監視をしなきゃいけないのは、変更出来ない決定事項だ。


でも、山賊に捕まっていた人達を、無事に人里まで連れて行かなきゃならないってのもある。

取りあえずは、ナノ達三人に、山賊から取り上げた武器類を、山賊に捕まっていた人達、ほとんどが女性の十数名に配って貰った。


それで、ナノ達三人と、山賊や捕まっていた人達の事で、話し合いをする。

俺は、山賊の移送要員なのは決定事項なので、三人をどうするかだ。

全員 山賊の移送を手伝って貰う。

全員 捕まっていた人達の護衛をする。

三人は山賊の移送と捕まっていた人達の護衛とで分かれる。

山賊の人数が多過ぎなんだよ。


もう一つの問題は、山賊に捕まっていた人達が、人里に向かうタイミングだ。

山賊の移送より先に行くのか、山賊の移送と一緒に行くのか、後にするのか。


で、なかなか決まらない。

山賊と、山賊に捕まっていた人達は、一緒に移動する事と、

捕まっていた人達も、山賊の移送の協力をする事は決まった。

ただ、俺がどの位置で歩くのか・・・・・・だ。


先頭を俺が歩けば、後方で山賊達が逃げたり暴れたりした時に、対処が遅れる。

後方を俺が歩けば、前方の護りが弱くなる。

真ん中を歩くと、前後の護りが弱くなる。


一旦 話し合いを休憩と言う事で、その間に周辺の動植物や景色をスマホのカメラで撮って記録する。

何しろ、この世界の動植物は、元の世界の動植物より、何倍も大きいのが普通だから、カメラで撮っていて飽きない。


「ねえ?アユム?それなにしてるの?」


フェムトが声を掛けてきた。


「魔法の道具できれいな絵を作ってるんだよ」

中世程度の文明じゃ写真と言っても解らないだろうからな。


「えっ?見せて」


フェムトが覗き込んで来た。


「ほら、こんな感じ」

スマホの画面を見せてやる。


「凄い!絵なの!?本物みたい!」


感動してくれた。

まあ、ここではオーバーテクノロジーだからなあ・・・・・・


「地図も表示出来るよ」

全体的には、地形程度しか表示されていないが、歩いた所は、【中継器】を設置済みなので、詳細な地図が表示される。

それを見せてやった。


「絵だけじゃないんだ!?地図も凄い!他にも出来る事があるの?」


「うん。有るよ。俺の故郷だと、これを使って遠くの人と話したりも出来たよ」

流石に通話は出来ないからなあ・・・・・・


[通話も可能です]


えっ?出来るの!?


[はい。スマート“フォン”ですから]


フォンの部分を強調してきた。


確かに、電話なんだから、通話が基本機能だけどさ、端末一台だけじゃ通話する相手が居ないじゃん。


[先程拾った黒い石 魔石や魔鉱や魔鉱石を材料にして、私の分身を作成可能です。分身も私に準じた機能を利用出来ます]


マジか!?


[マジです]


と言うか、あの黒い石って魔石とかだったんだ!?


[はい。魔力を貯めたり通したり変換したり等の性質を持つ石材や鉱物です]


そっか?落ち着いたら、もっとしっかりと教えてね。


[了解しました]


脳内でシムと会話をしながら、ナノにスマホの画面を見せている。


「魔法もこれで使えるよ」

アプリ化された魔法を、自分自身のテストも兼ねて使ってみる。

魔法を使う手順も、アプリ内に説明が書いてある。


説明通りに、魔法を使いたい対象に向かってスマホのカメラを向けて、アプリ内のボタンをプッシュ。


ボッ!!


カメラを向けていた落ち葉に火が点く。


「凄い!簡単に魔法が使える様になるのね!?良いなぁ〜 私も欲しいなぁ〜」


山賊を移送する時に使えるよな。

何か起きたら通話で知らせて貰えば、あっという間に対応が可能になる。


「うん。あげようか?」


「えっ!?良いの?」


「うん。ナノ達三人にあげたら、山賊を領主の所に連れて行くのに役立つしね」


エコバッグの中の石を持って、

「シム スマホを作成して」


[了解しました]


手の中の黒い石が光り輝き、光が消えた後には、スマートフォンに変わっていた。


「はい。どうぞ。通話の仕方 離れた人との話し方を教えるね」


「えっ!?どこから出したの!?あれ?黒い石を持ってなかった!?えっ?あれ?それは良いとして、私 こんな凄いのの代金や代わりにあげられる物が無いよ!」


あ、そうか、石がスマホに変わったら、そりゃ驚くよね。


「石じゃ無くてスマホを取り出したんだよ。代金とか物々交換とか気にしなくて良いよ」

ナノは目を白黒させている。


「じゃあ・・・・・・貰うね!」


何とか受け取ってくれた。


「他の機能は、山賊とかの件が終わってから教えるから、今は通話の仕方を教えるね」


[それぞれの端末の番号はどうしますか?]


あ、そうか・・・・・・番号・・・・・・

って、それぞれに最初から割り振られているんじゃないの?


[はい。通話をする事は可能ですが、その為には番号の割り振りが必要です]


あー

俺は面倒だから1234-1234

で良いや。頭の数字はシムに任せるよ。


[了解しました]


フェムトは最初に渡した相手だから、0000-0001で良いんじゃない?

次がナノなのかピコなのか分からないけど、二番目に渡す相手の番号を0000-0002にして、次は末尾を3にすれば良い。


[畏まりました]


「じゃあ使い方は・・・・・・」

フェムトに通話アプリの起動の方法と、通話の仕方を教える。

取りあえず、電話帳に俺の番号を入れて保存まではしてやった。


「それじゃ試そうか?」


「うん」


俺からフェムトに電話を掛けてみる。


{プルルルルゥー}


掛かった!


「じゃあ取ってみて」


「うん。はい。もしもし」


「もしもし。こんな感じだよ」


「凄い!声がスマホ?これから聞こえる!」


「だろ?(笑)」

通話で感動してくれた。

実は、俺自身も感動していた。

シムは通話出来ると言っていたが、異世界の・・・・・・しかもこんな山奥だから、本当に掛かるのか、少し不安だった。


「じゃあ、フェムトから掛けてみてくれるかな?」


「うん」


{プップップッ プルプルプルゥー}


「はい。アユムです」


「あ、聞こえた」


「だろ?(笑)」


「あんた達 何やってるの?」


ナノとピコが来た。


「ああ、山賊を連れて行くのに、スマホって魔法の道具を三人が持っていると便利になるから、今 フェムトにあげていた所だよ」


「なにそれ?」


「これよ」


怪訝そうなナノに、フェムトが自分のスマホを見せる。

それを見たナノは、変な物を見たって感じで、キョトンとしている。


「ただの板じゃない」


「違うよ。凄くきれいな絵を作ってくれたり、地図を表示してくれたり、魔法を使うのを補助してくれたり、遠くの人と話せる様になる便利な道具だよ」


「フェムト 何か変な物でも食べた?そんな事が出来る訳が無いよ!」


ナノはフェムトがおかしくなったと思った様だ。ピコも不思議そうな顔をしている。


「えっと・・・・・・ほら・・・・・・」

仕方が無いので、二人にもフェムトに見せた物と、同じアプリを動かして見せた。


「えっ!?なにこれ!凄い!」

「うん。凄いね・・・・・・話せるってのは?」


「あ、それは今からスマホを渡すから、それで試そう」


三人に見えない様に、また袋から黒い石を二回 取り出し、シムに生成を頼む。

そして、出来た端末を二人に渡す。


「はい。どうぞ」


「「ありがとう!」」


「じゃあ、フェムトと同じく、通話以外の機能は、山賊の件が終わったら教えるから、今は通話の仕方だけ教えるね」


「「はーい!」」


で、教えてから通話を二人とも試してみる。


「こんな感じだよ」


「凄い!」

「うん。凄いよね」

「これ どの位までなら離れても話せるの?」


三人共 スマホに興味津々だ。


「かなり遠くても話せるよ」

で、シム 実際はどうなの?


[マップに地形の表示されているエリアは、全て通話可能ですが、要所要所に【基地局】や【中継器】を設置したら、その近辺は、より通話が安定します]


凄いね。

つまり、今現在でも不安定ながらも、この星の半球は通話が可能なんだね。


[はい。要所に【基地局】や【中継器】が無い所ですと、かなり通話で声が掠れたり、ブツブツと音声が切れたりするかも、知れませんが、この星の半球は一応 通話は可能です]


うん。ぶっ飛んだ性能のスマホだ。


人里に着いて落ち着いたら、色々と確認しなきゃな。


「さて、三人共 スマホを持ったから、これで山賊の移送がしやすくなったね」


「「「うん!そうだね!ありがとう!」」」


「じゃあ、まだ決めて無かった移動時の配置とか決めようか?」

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