第6話 第一異世界人発見
こっそり と ゆっくり と 息を潜めて 忍び足 で、人影らしいものに、木々に隠れながら、近付いて行く。
「どんな相手か解らないから、堂々と近付くのは危険だけど、隠れて近付くにしても、危険な獣と間違えられて、攻撃されるのも危険だから、本当 気が付かれるのは危険だ・・・・・・」
そう、元の世界の日本でも、猟師などのハンターに、シカやイノシシ、クマに間違わられた人が、銃で撃たれてしまうなんて事件が起きる程だ。
こんなジャングルの中なら、尚更 獣に間違わられたら、悪意無く攻撃を受けてしまうかも知れない。
慎重に近付かなきゃな。
少し近くなって、人影らしい から 人影 だと判断可能になった。
良かった。本当に二足歩行の危険な獣じゃ無くてさ。
「えものがとれちょらんのやかぃまだかえれんちゃ」
「でもこれいじょうもりんおくにいくんはあやういちゃ」
「もちょびっときばってみる?」
声が聴き取れる程に、近くまで忍び寄って、三人の若い女性?少女?なのが、分かった。
でも、何と言っているのかは解らない。
一番 背が高い人でも、150センチ無い感じだ。
120〜140センチ位の身長の三人だ。
何だよ。異世界語の翻訳スキルとか、あの神様っぽいのは授けてくれてないのかよ。
三人共に手に弓などの武器を携帯している。
一番 身長の高いやつが、大き目の斧かな?
二番目に身長の高いやつは、小刀?大き目のナイフ?そんな感じの物を持っている。
一番 身長の低いやつが、弓を持っている。
やはり、不用意に近付くのは危険だろう。
[アユム様 アユム様の目と私のカメラとの同期の設定を推奨します]
小さな声で、シムが話し掛けて来た。
「うん。良いよ。そんな事が出来るんだね」
[同期 完了しました]
あれ?何か目の感じが変だ。
目で見た物に説明が入る様になった。
木を見れば、その木の名前や材として性質など、草を見れば、同じく名前や有用な物か、毒は無いのかなど、食用の可否なども含めて、どんな物なのか解る説明が、その物の付近に表示される。
鳥などの動物でも確認したが、やはり名前や説明などが表示される様になった。
[なあ?シム?目に映る物に、何故か名前や説明とかが表示される様になったんだけどさ・・・・・・]
「はい。同期の効果です」
「なるほどね・・・・・・って!ビックリするだろっ!」
「だれかおるん!?」
あっ!やっちまった!
ん?今 日本語っぽくなかったか?
やはり翻訳のスキルでも有ったのかな?
相手は子供の様だが、一応 用心して見付かりたく無い。
気のせいと思って貰えないかと、静かにして身を潜める。
「こっちかな?」
「きのせいじゃねえん?」
やっぱり日本語っぽい。
そして・・・・・・
「あんただれなん?」
はい。見付かりました。
凄く不審がられている。
そりゃそうだ。こんな深い山奥に、見知らぬ男が独りだけ。
しかも、手には山程の石を入れた袋を沢山沢山持っている。
これで地元の人間に、不審に思われない方が変だ。
「さんぞくじゃねえんね?あんぜんんためにつかまえようちゃ」
「でもさんぞくとはかぎらんし、つかまゆるんはやりすぎじゃねえね?」
小さな三人の中で、一番 大きい少女が、他の二人に話し掛け、それに一番 小さい少女が返事をしていた。
この感じじゃ殺される事は無さそうなのかな??
「あの・・・・・・俺 あゆむ 須磨 歩って言います。俺の言葉は解りますか?」
「わかるちゃ。とおいところからきたひとなんやろうか?」
真ん中の背丈の少女が答えてくれた。
「そうなんです。遠くからここに来ました」
「こんげやまおくになゅしちょったん?」
一番 大きな少女が話し掛けてきた。
「あの?もう一度 お願いします。何と言いましたか?」
「こんげやまおくになゅしちょったん?」
翻訳が不完全なのか、よく言っている言葉が解らない。
スキルをくれるのなら、もっとちゃんとしたスキルをくれよ!
でも、多分 何をしていたのかとか、ここに居た理由を聞かれている気がする。
「あの・・・・・・迷子になってました。私を皆さんの村?集落に連れて行ってくれませんか?」
迷子って!でも、他に何と言って説明すりゃ良いんだ?異世界から来たとか、それで突然 この場所に居たとか、説明難易度高過ぎだろう!
「・・・じゃが・・・まこち・・・」
「・・・ないと?・・・じゃ・・・ね?」
「・・・まこち・・・じゃが・・・よかじゃ・・・」
三人が俺の事で話し合いをしているっぽい。
上手く翻訳されてないのか、部分的に解る語句も有るが、全体的には言っている事がよく解らない。
巨木が生い茂る山奥に転移されるし、翻訳スキルは不完全だし、どれだけハードモードにすれば気が済むんだろうね?あの神様っぽいヤツはさ・・・・・・
「まこちあんぜんんためにしばってつれていくことにしたかぃわるうおもわんでくんない」
一番 小柄な少女が言ってきた。
よく解らないが、敵意は無さそうなので、されるがままに縛られる。
「わしゃフェムトちゃ」
一番 小柄な少女はフェムトと言うらしい。
そして、三人は少女の様な見た目だが、目に映った物に付く様になった説明によると、このフェムトと言う少女は、元の世界での基準では、20歳相当の年齢らしい。
「わしゃピコちゃ」
「わしゃナノ」
三人の中で、中間の体格の少女は、ピコと言う名らしい。この娘も元の世界では19歳相当の年齢と表示されている。
一番体格の大きい少女は、ナノと言う名らしく、元の世界での基準では、18歳相当の年齢だと表示されている。
「本当に敵意や害意は無いから、宜しくお願いします」
無事に人里まで連れて行って貰える事を、祈る様に期待するしか無い様だ。
「わるうおもわんでくんない さいきんやまんにはいったんがかえらんなるんがおうなっちょるかぃあんぜんんためにどんげしてんしんするわけにはいかんっちゃ」
フェムトと言う少女の様な女性が何か言っているが、意味がよく解らない。
でも、表情が申し訳なさそうな雰囲気なので、安全の為の対策として、俺の事を縛っているのだろう。
しかし、痛い。何かのツタを編んだのだろう縄で縛られているので、かなり硬くて痛みが有る。
「いこうちゃ」
一番 体格の良いナノって娘が、先頭に立って移動を促しているのが解る。
その言葉に従い、三人が移動を開始したので、一緒について行く。
「あっ!」
少し進んだ所で、ナノが何かを見付けた様で、動きを止めた。
あ、蛇だ。目にはマムシと表示されているが、大きさが明らかに2メートルを超えている。
少なくとも3メートルは有るんじゃないかな?かなり大きい。
それが約5メートル程度先で丸まって道の真ん中に居る。
「わしにまかせて」
一番 後ろを歩いていたフェムトが両手を前に差し出し、蛇に掌を向けた。
すると、数秒後 大きな蛇の周囲の草が燃え出した。
蛇の表面も少し焼け焦げている。
あれ?これって【魔法】ってやつか?
[加熱の魔法を学習しました]
[【魔法】をアプリ化しました]
えっ?見ただけで覚えたの?えっ?もしかして、俺もさっきの魔法を使える様になったの?しかもアプリ化!?えっ?手軽に使える様になったって事?
[はい。使える様になりました。アプリでの使用だけでなく、フェムト様と同じ様に使用する事も可能です]
声に出さずに考えたら答えてくれた。
あ、そう言えば、声を出さなくても、シムには伝わるんだった。
さっきもそうすれば良かったのに、俺って馬鹿だな。
[私の声も、アユム様の脳に、直接 伝えておりますので、周囲の人には聞こえておりません]
えっ!?そうだったの!?
うっわぁー!俺 やっちゃってたよ!
俺が声を出さなきゃ捕まらなかったって事じゃん!
あ、そう言えば、炎の魔法じゃ無くて、加熱の魔法なんだね。
[はい。魔力を使って、対象の周囲の熱量を増大する。そうやって熱エネルギーで攻撃を加えた様でした]
なるほどね。
加熱の魔法で攻撃された蛇は、身を捩り逃げる様にジャングルの中に消えて行った。
炎で攻撃して殺すと言うより、ダメージを与えて、自身への攻撃を抑止する、そんな使い方をしている感じだ。
もっと炎がブワッと出て、一瞬で蛇を焼き尽くす様な魔法での攻撃だと、異世界魔法のイメージとして合うのになぁ・・・・・・
レベルが上がると、そんな攻撃魔法が使える様になるのかな?
[この世界は、
えっ?そうなんだ?そんな所は
「いこうちゃ」
大きな蛇が居なくなったので、ナノが移動を再開する。
三人共 動揺していなかったから、あの位の大きさの蛇は、普通に居るんだろうな。
しかも、マムシなんて毒蛇があんなに巨大だなんて・・・・・・勘弁してくれよ。
三人と移動をしながら、こっそり と作ってあった【中継器】を、要所要所で落として設置しておく。
三人は、周囲への警戒で、俺にはそんなに目を向けないから、こんな事も出来る。
でも、気が付かれると、不審に思われてしまうかも知れないから、バレない様に、こっそり と設置をしなきゃね。
[マップをスマートフォンの画面を見なくても、希望される時に、視界に表示される様に同期しますか?]
あ、そんな事も出来るんだ!?
もちろん。宜しく頼むよ。
で、早速 マップを表示してくれるかな?
視界にマップが表示された。
ARかの様に、目に映る景色の中に、半透明なマップが重ねて表示されている。
一人での移動より、かなり移動速度が落ちてしまった。
俺の事を気遣って、三人が移動速度を落としてくれたのかな?
でも、三人共に、息を切らせて、大汗をかきながら歩いているので、これで精一杯の移動速度なのかも知れない。
あれ?現代っ子の俺の方が、この世界の三人よりも体力が有るのか?
俺 汗一つかいていないのだが・・・・・・
荷物も俺の方が、かなり多い。しかも石の入ったエコバッグを十袋と旅行かばんを持っている。しかも、縛られてさっきより歩き難いのに、俺には余裕だ。
さっき【最適化】とかシムが言っていたが、それが影響しているのだろうか?
ねぇ?シム?そこの所はどうなの?
[測定した三人の身体能力とアユム様の現在の身体能力を比較されますか?]
うん。宜しく頼む。
[三人の説明の中に、数値化された身体能力を表示します。アユム様の身体能力は、「ステータス表示」と意識して頂ければ、それに合わせて表示される様にしました]
三人の説明の中に、それぞれの名前と数値化された身体能力が追加された。
ナノは
体力:10
知力:2
魔力:?
筋力:10
ピコは
体力:5
知力:5
魔力:?
筋力:5
フェムトは
体力:2
知力:10
魔力:?
筋力:3
あれ?魔力の所が【?】と表示されている。
[しっかりと触れたら測定可能だろうと推測します]
あ、測定が現在は出来てないのね。
で、俺は・・・・・・
おいっ!なんだこりゃっ!
体力:1000
知力:1000
魔力:測定不能
筋力:1000
[アユム様の現在の能力は、測定が困難な程に巨大なので、示させて頂いた数値は、最低限 この数値以上と言う、暫定的なもので御座います。体力も筋力も、こちらの世界に再構築された際に、
あれ?この三人の娘達が、こちらの世界の平均的な人達より、大きく身体能力が劣っていない限り、俺って人外のレベルで、身体能力が高過ぎないか?
[その通りで御座います]
あれ?・・・・・・チート?
[身体能力以前に、スマートフォンをお持ちの時点で、チートと呼べる状態かと思われます]
あ、だよねぇーっ!
あれ?スマートフォンって、俺の魔力をエネルギーとしてバッテリーに供給するんだったよね?
つまり、俺の魔力が測定不能な程に膨大って事は、こちらの世界では、俺のスマートフォンは、バッテリー切れの心配が無いに等しいって事だよね?
[はい。そうなります]
マップだけでも、こちらの世界では大きな力となるだろう。
今もマップの詳細なエリアが、【中継器】の設置と同時に拡がっている。
[マップは詳細表示のエリア内なら、ナビの機能も使用可能になります]
マジかっ!?ナビ!?ナビゲーションですか!?
こんな一本道なら、ナビが無くても良いけど、枝分かれした道が多い、こんな何も目印が無い様な所なら、ナビが使える様になるって、大きな力となるよね。
凄いな。
欠点は、【基地局】と【中継器】の設置を自分でしなければ、機能をフルに使えないって事かな。
捕まりながら、シムとの脳内会議を進めている。
うん。これなら殺されそうになったとしても、何とか逃げ出せそうだ。
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※ 独自用語説明:
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