第5話 設置 と マッピング そして当然の徒歩での長距離移動

人里

何かに襲われる前に、人の居る所に移動しないと、多分 GAME OVER。

キャンプや山菜採り等のアウトドアが大好きとは言っても、東京都出身者の俺が、こんなジャングルの中で、独りで生き残れる訳が無い。

問題は、この世界に【人】が存在するのか、解らないって事だ。

巨大な塔の【基地局】の周囲で見た動植物は、元の世界のものと、よく似てはいるが、だからと言って、【人】が存在する所とは限らないし、

元の世界の【人】とよく似た生物が存在したとしても、その生き物が文化的な生活をする知的生命体とは限らない。

元の世界だって、数百万年前は、猿と大して変わらない人類の祖先しか存在しなかった訳だから、この世界に【人】が存在しても、猿の様な、文明を発達させていない生き物の可能性もある。


そもそも、こんなジャングルが存在する所なのだから、【人】が存在しても、元の世界と同水準の文明を期待するのは、かなり難しいだろうと思う。


それでも、ここより安全な場所に移動しなきゃいけない。

そして、もし存在するのなら、この世界の【人】と早く接触して、協力して貰った方が良いだろう。


何しろ、同期と最適化が済んだ情報で、この世界には元の世界より遥かに巨大な生き物が生息している事が【理解】出来たからだ。

人の背丈より巨大な生き物が、この世界ではゴロゴロ存在する様だ。

【理解】しても信じ切れないが、数メートル以上、特に大きなものだと、十メートルを超えるものまで、生息している様なのだ。

ラノベ定番の異世界の様に、魔物 それが存在するのかは、まだ情報が無いが、魔物では無かったとしても、その巨大さなら危険なのは確実だ。


石を入れた十袋のエコバッグと旅行かばんを持って、唯一 見付かった道を進む事にする。

獣道かも知れないから、この道を作った獣と遭遇する可能性も有るが、道の無いジャングルの中を進むのは、不可能だ。

警戒しながら、この道を進むしか無い。


俺は拾った黒い石を【中継器】に加工しては地面に設置して、最大の警戒をしながら、ジャングルの中の道を歩いて進んだ。


【中継器】を設置した所は、数十メートルの範囲がスマートフォンのマップで詳細な地図となる。

今 進んでいる道も、道としてマップに記録されていく。


「なあ、シム?この世界に人類と呼べる存在が居るのか、情報は同期や最適化は済んでないのかな?」


[今 その情報の同期と最適化が終わりました。文明の水準は低いですが、人類と呼べる様な存在が有ります]


良かった。

人類は存在する様だ。


「えっと、それは元の世界、地球の人類と同じ様な姿なのかな?」


[はい。よく似た生物の様です]


「そっか?良かった・・・・・・」

「低いって水準の文明は、どの程度なのかな?」


[金属の加工は出来る様です。鉄も利用している様なので、元の世界の中世程度かと思われます]


「そう?その程度の文明は存在するんだね」

本当に正直 ホッとした。もし火も使えない様な原始人以下の状態なら、この世界で生きるのが、かなりキツかっただろうと思うから・・・・・・


「ねぇ?シム?「元の世界」って長いから、「元の世界」を示す単語を創作しよう。故郷こきょうならぬ故界こかいってどうかな?」


[了解しました。「元の世界 = 故界こかい」とします]


「うん。ヨロシクね」


しかし、かなり歩いたのに、その文明どころか、人と呼べる存在とさえ、まだ遭遇していない。少なくとも十キロ近くは歩いた。

スマホの中のマップでも、十キロ程度は歩いた事になっている。

道とは言っても、周囲と比較して、ただ木々が無く少し開けていて、草も少ないと言う程度で、舗装が無いどころか、デコボコの土や砂利や岩の道を、十キロも歩くと、かなり疲れる。

とは、言っても、思ったより疲れていない。こんなに荷物も有るのに不思議だ。


「ねぇ?シム?十キロ位 歩いているのに、そんなに疲れていないんだけど、どうしてか解る?」


[はい。解ります。アユム様の身体が、この世界に最適化された状態で、再構築された為に、と言うのが一つの理由です]


「あ、そうなんだ?」


[はい。もう一つの理由が、この星の重力が、故界よりも軽い様です。大きさは故界と同じですが、自転速度が故界の地球よりも少し速い様です]


「えっ!?そうなの!?」


[はい。この星の一日の長さが、約23時間の様です]


「一時間程度も短いんだ!?」

そりゃ重力も軽くなるよ。

自分の身体が変わってた事も驚いたが、一日24時間の常識が崩れたのも驚いた。


一日が23時間位と言う事で、異世界に来た実感が深まった。


[アユム様 スマートフォンの時間の設定はどうしますか?一日を23時間に変更するか、1時間の長さを短くして、こちらの一日を24時間に変更するか、どちらにしましょうか?]


「後で再度 変更可能だよね?取りあえず一日を23時間に変更しておいて」


「了解しました。一日を23時間に変更します」


そんな感じで移動をしていたら、道の先に人影らしき物が見えてきた。

いや、人とは限らない。故界でも人の様に二本足で立つクマ等の獣が存在した。

同じく人では無くて、二足歩行の獣かも知れない。

人だとしても、こんなジャングルの中だ、友好的な温和な人だとは限らない。

隠れながらゆっくりと人影の様なものに近付いて行った。

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