第175話 男同士の会話

その男は、かなりの筋肉質で、景虎と良い勝負だった。


腕には、いくつかの傷跡が残っていた。


「住まいは、ここらへんなんですか?」


景虎は、その男に聞いた。


「いやいや。


普段は、甲斐に住んでいるんです。


諏訪にね、俺の愛している女がいてね、その女に月に一回逢いに行くって感じですわ」


「それは楽しみですね。


普段は会えない関係なんですね」


「そうなんですよ。


なかなかね。俺は逢いたいんだけど、そう簡単にはいかないんですよ」


「逢いたいのに逢えないなんて、切ないな」


「お! この気持ちわかってくれるか!


さすが、旦那。


会った瞬間、ビビッときましたよ。


何か通じるものがあるって」


「俺も。


感じましたよ」


「俺はね、本当は諏訪の女に毎日会いたいんだよな。


でもな、俺には他にも女がいてな。


諏訪の女に逢いに行ったら、その女が怒るんよね。


でもねぇ、諏訪の女は、1番、かわいいんだ。外見もそうだけど、中身の面でも。


なんというか、ほっとけないっていうか、守ってやりたいっていうか」


「あー。そういう女は、手放したくないよな。


ずっとそばにいてやりてぇって思う」


「そうなんよ!


だから、口実つけて、月に一回は逢いにいってるんだけどな。


本当はもっと逢いたいけどな」


「難しいよな。


男女の仲って。


出会った順番で、ほぼ決まっちゃうもんな。


出会ったのが、早かったら遅かったら、また関係性も変わるだろうに」


「そうそう!


家柄とか、同盟の関係とか、めんどくさいやつもあるしな」


「わかるわかる。


旦那は、今日は1人なんか?」


「いや、妻と2人できてる。


いまは、その妻の友達も一緒に帰宅途中で、温泉に入っていたところなんよ」


「ほほぅ。


どこまで、帰るん?」


「越後」


「ええ!!


遠すぎやろ。


でも、越後は良いところよな。


魚美味いし、青苧たくさんとれるし」


「よく知ってるな!


行ったことあるん?」


「いや、ないな。


行ってみたいとは思う」


「是非。


おもてなすぞ」


「それは、嬉しいな」


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