第25話 譲るのか!?

「景虎様。上杉様が景虎様にお話したいことがあると!」


「えぇ。もっとゆっくり休んでいればよいのに。なんだろな。話って」



謙信が渋々広間に向かうと


上杉憲政が既に座っていた。



「景虎殿。私に代わって関東管領職を継いでくれんか? そして、北条氏康を倒してくれぬか?」



「はい!?


関東管領職を譲るって……」


宇佐美定満は、驚きを隠せない。


謙信は言う。


「落ち着いて考えてください。いくら、北条に追われているからといって、そこまでなさらなくても。


一緒に関東管領職に返り咲くやり方を考えましょう」


「や、もう俺にはできん。昨日見せた上杉家の文書全部あげるから。頼む。お願い」


憲政は弱気だ。



「いくら、景虎様でも。越後と関東の両方を治めるなんてこと……」


本庄実乃は、不安そうな顔だ。


謙信は、やれやれという顔をしている。


「とりあえず、頭はお上げください。



少し、考えさせてください」


「ちなみに、上杉様にはお子さんがいませんでしたか?」


「います。10歳です。


いま、龍若丸は、安保泰広(あぼ やすひろ)に預けて、御嶽(みたけ)という山奥の小さな山城に隠してある。


しかし、それも見つかるのも時間の問題。


どうか、景虎様、よろしくお願いします」


「それ……早く対処しないと取り返しのつかないことになりますよ?」


「は、はぁ」


憲政は、なんとも頼りない声を出した。

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