第20話 甘い夜

 日は沈み、辺りは真っ暗になった。


謙信と好花は、寝巻き姿になっている。


床には、布団が2つ。綺麗に並んでいる。


2人を1つの光がほんのりと照らしている。


「好花。急に結婚なんて言い出してごめんな」


「急にどしたん。


まぁ、びっくりはしたけど」


「俺さ、好花を見た瞬間から、俺の女にしたいって思っちゃったんだよね」


「なにそれー一目惚れ?笑」


「そうなるのかな。こんな気持ち初めてでさ。でも、急に結婚を言い出してごめんな」


謙信は、好花をじっと見つめる。


「実はね、うち景虎のこと知ってるの。知ってるとかおかしいと思うけど、未来から来たから知ってる。


それでね、うちは、前いた世界で景虎のこと憧れてたの。というか、ファンだったの。


だから、結婚してびっくりしてるけど、できて嬉しいし今幸せだよ。


うち幸せだから、申し訳ないとか思わないでよね」


好花が言い終わるか終わらないかの時、謙信は好花のほっぺたに手を添えた。


添えた手は、筋が入っていて、何箇所か傷がある。


戦の傷だろう。


好花の雪のような真っ白なふわふわしたほっぺたと謙信のこんがり日に焼けた筋肉質の手。


その手の指先が好花の唇をなぞらえる。  


好花の少し空いた口の中に指が入りそうで入らないもどかしさ。


唇から指が離れ、彼女は少し寂しそうに口を閉じ、謙信の目をじっと見る。


謙信と好花の唇が少しずつ近づき、触れ合う。


触れ合うと同時に好花は謙信の体に手を回す。


「このか、好きだよ。結婚してくれてありがとう」


と謙信が好花の耳元で言う。彼女は、照れたように


「わたしも好き」


と言う。


2人で求め合うように抱き合い、2人の寝巻きがどんどん、はだけていく。


好花の肌は、まるで雪のようで触ると溶けてしまうようなそんな儚さがある。



謙信は好花を布団の上に寝かせて、彼は彼女のショートの髪に触れる。


「かわいいな。おまえは」


「恥ずかしい。そんなこと言われたの初めてだから」


「嘘つけ。ったく、このかは」


このかは、にやっとして、くりくりした目で謙信を見る。


まるで、子どもがこれからイタズラをするようなそんな笑み。




2人は、手を絡めた。一本一本確実に。


そして、抱き合った。






2人で過ごす初めての夜は、甘く忘れられない夜となった。

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