第10話 春日杯
「よし! 乾杯しよう!」
謙信が盃を持つ。
「乾杯!!」
一同が声を合わせて乾杯する。
謙信が持っているの立派な盃だなぁ。え! 待って。
あの盃は!
全体が綺麗な赤で塗り尽くされている盃。
光に反射して、キラッと光るような美しい光沢。
こ、これは!!
「景虎様、これって、春日杯ですよね?」
好花は思わず聞いてしまった。
「好花! よくわかったな! これは俺の愛する盃、春日杯だ」
「景虎様は毎日のようにこの盃で酒を飲んでいますもんね」
定満は苦笑している。
謙信は赤い春日杯を見つめながら、好花に言う。
「天目茶碗の良さが好花にわかるのか」
「分かるもなにも! 天目茶碗とは、室町から安土桃山時代に隆盛を極めた茶道の茶碗で最上のものですよね!
当時、中国からの輸入に頼っていた天目茶碗は非常に希少性が高く、相当の身分と権力を持った将軍、大名のみが用いることができた大変格式の高いうつわですよね!?」
「好花ちゃん、酒盃に詳しいんだねぇ。びっくらぽん」
鬼小島弥太郎は、好花をみて、ニヤニヤしている。
「よく知ってるな。その通り。俺な、天目茶碗に興味があってな。
だから、つい、この酒盃を天目茶碗形式で作らせちゃったんだよな」
謙信がそういうと、
「景虎様の酒好きには困りましたねぇ」とみんなが口を合わせて言う。
「いいんだよ!
酒を愛すは、戦を制す!」
ん? あってるのか、あってないのか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
いやー、まさか謙信が愛用してた本物の春日杯が見られる日がくるとは。
好花は、驚きを隠せないでいた。
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