的当教授の復活
誰もが、そう信じている。
「真島様!的当教授を求め人々が集まってきました!生産が追いつきません!」
従業員が慌てた様子で、僕に報告してきた。
「では、限界まで生産スピードを上げて下さい。」
「無茶です!これ以上上げると工場が持ちません!」
従業員は首を横に振った。
「工場などどうでもいい!誰もが的当教授を望んでいるんだ!早くしろ!」
俺は従業員の首に掴みかかり、訴えた。
「ひぃ!分かりました!」
従業員は逃げ帰るようにゴロゴロと転がっていった。この世界で一番大切なのは的当教授なのに、それ以外の事を優先することが僕には分からなかった。
「あああああ!」
ガコン!ガコン!ガコン!
僕のいるこの執務室からは工場の様子がモニターとスピーカーで確認できる。
今聞こえてきたのは、さっきの従業員の叫び声だろうか?そんなに発狂するような事ではないだろう。
ガコン!ガコン!ガコン!ガコン!
生産ラインのスピードが見違える程に上がっていく。やればできるじゃないか!これできっと、幸せになれない人は存在しなくなるだろう。
バリーン!
『警報!警報!従業員は速やかに退避して下さい!』
警報を知らせる自動音声が部屋に鳴り響いた。
「何が起こったんだ!」
モニターを確認すると、的当教授貯蔵タンクが破裂していた。虹色に光る油のような液体が床にしみでているのが分かる。
「全従業員に次ぐ!早急に設備を停止させ、予備タンクに切り替えて下さい!」
僕は早急に従業員を向かわせた。
「大変です!」
早速、従業員から連絡があった。
「何がありました?」
「的当教授の匂いを聞きつけたのか、人々がすごい勢いで押し寄せてわー!」
プツン…
急いでモニターを確認する。
人、人、人、人の群れがタンクに群がっているではないか!
僕はただ見守ることしか出来なかった。見続けていると次第に、人間と的当教授の境界が分からなくなった。臨界まで達した境界は暴発し、超新星爆発の如く閃光が僕の目を焼いた。
…視力が元に戻る、工場だったものは跡形も無く吹き飛んでいた。普通なら僕も死んでいただろう。だが、この通り無傷で生きている。
「久しぶりだね。真島君。」
僕の目の前にいるのは紛れもない的当教授本人。
そう、奇跡は起きたのだ!
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