第25話 決断

 今回の件で、改めて(仕事)(女性)(結婚)(不倫)について考え込んだ。


 今していることは(不倫)で悪いこと。

 (女性)を選択すれば(結婚)になるだろう。

 でも(女性)を選択すれば(仕事)を失う。


 思いは同道巡りで結論に至らなかった。

 それでも考え続けたら、ひとつの思いに至った。


「僕、血の繋がらない子供を育てていけるかな?」


というものだった。これは彼女を愛し続けて行く上でとても重要なことに思えた。そして結婚は相手を愛し続けていく努力をするものだと思った。彼女はそれを怠った。思い違いは覚悟の上でそう思い込むことにした。時間をかけてもすべてが丸く収まらないと確信した。



 閉店後、店の電話から連絡した。

 そして彼女に一切合切告げた。

「そういう訳なんだ。もう今までのようなことはできない」

「いやよ」

「僕だっていやだよ。でも仕方ないんだ」

「好きなのに……どうして?」

(やばい。気持ちが折れそうになる)

「どうしてもだ」

「どうしても……?」

「そうだ。出会ったのが遅すぎたんだ」

「そんな……」

「冷たいようだけど切るよ」

「切らないで……」


 僕は受話器を置いた。

「……………………」

 何とも言いがたい嫌な気持ちだった。

 入り口に公衆電話があるのだが、それが鳴っていた。いつまでも………。




──────────────────♡


 それから彼女と会ったことはない。

 仕事も辞めたと聞いた。


 当時、僕がした決断が正しかったのかは神のみぞ知る、かな!


 今、振り返ると26歳の僕はモテ期だった。とにかくモテた。16歳から35歳と守備範囲も広かった(笑)N店に異動するときも手紙で35歳の方から告白された。僕は今だに女心が判らない男なので当時も手紙を頂くまでは全く気づかなかった。N店を異動するときには16歳の女子高生から、これも手紙で告白された。

 

 今となったら笑い話がある。笑いにしたら相手の方に失礼なのだけれど……


 食材を切らし、近隣の店舗に借りに行った。そしたらその店の女の子から、

「山口さん、付き合ってもらえませんか?」

「え?僕のこと知ってるの?」

「はい。一度一緒に働いたことあります」

「あっそうですか。ありがとう。でもね今、両指ふさがってるんだ。ごめんなさい」


「足の指は空いてませんか?」


「うそだろ!」


借りたアイスを落としそうになった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天網恢恢疎にして漏らさず~第21話ラブストーリー(sigh with love) 嶋 徹 @t02190219

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ