第23話 テ-ブル上での愛

 N店に異動した。この店は通常の料理プラス焼き肉を提供した。焼き肉店舗は経験済みなので物怖じすることもなかった。

 大型ス-パーが近くにあり、駐車場も広かった。大きな木がうっそうと茂り、雑草が伸びていた。


 僕は研修時代、この店で1週間勤務していた。朝、来てから帰るまで一日中草むしりだった。(また、草むしりの日々だ)時にはポスティングに行かされた。一日中、チラシをポストに入れた。近くに高級住宅地があった。店に乗り付ける車は外車ばかりだったのを覚えている。



 N店は赤字店舗だった。平日30万円、土曜、日曜100万円と勝負は週2回、ディナータイムだけの店だ。


 田口店長がなぜ、僕を呼んだのかわからないが、必要とされていると考えると、またやるかと思わざる得なかった。また、田口店長がやってもダメなら閉店するとの噂も聞こえてもいた。


 その日は珍しく店長が遅くまでいた。W/S

の線を引いていたのかな?そして23:00帰って行った。

 僕はまだ、仕事が残っていた。

「ピン-ポ-ン-」

「うん?店長?警備?誰だよこんな時間に……」


 裏口を開けた。坂口さんだった。

「坂口さん……どうしたの?こんな遅い時間に?」

「うふふ。お弁当作ってきた!」

「お弁当?ここはレストランだよ(笑)ありがとう。本当に……うそだろ。こんなことしてくれるなんて……」

「えへん」

「店長帰るまで待っていたんでしょ?」

「まあね!」

「いつもは遙かかなたに帰るんだけどね!」

「うふふ」

「中にはいりなよ」

「え? いいの?」

「誰もいない」

「うん」

「N店初めて来た?」

「うん」

「電気付けてみようか?」

「うん」

 最小限度のスイッチを入れた。

「真ん中にサラダバーがあるんだ。

真鍮を沢山使っているから、豪華にみえるでしょ」

「本当ね。これ光らすの大変そう」

「さすが。ピカ-ルを使わないとだめだね」

「ふ~ん。とにかく大きいね」

「この県では3番目におおきな店だよ。もう電気消すよ!」

「うん。ありがとう」


 8月の中旬頃の話だ。節電のためにエアコンは早めに切って事務所でだけにしていた。

 坂口さんは少し汗ばんでいた。シャツは胸元までボタンを開けていた。

(旦那様との裁判。血が繫がない子供の養育。)

 そんなことが時の僕には不安であった。(まだ、世間知らずのガキだった)

 不安ではあったが彼女の気持ちに報いたかった。

 「ここが従食室。テ-ブルも広いでしょ!」


 ここで彼女が抱き着いてきた。僕も抱きしめた。キスして遊んだ。


 テ-ブルにバスタオルを広げた。そこに彼女をやさしく横にした。彼女に触れたがもう充分になっていた。

「カタ、カタ、カタ」とテ-ブルがリズミカルに音を刻んだ。

 彼女が何か叫んだが声になっていなかった。ゴムも付けていなかったがもう、いいやと思った。僕は彼女にすべてを流しこんだ。そしてすぐにトイレットペーパーを取りに行き彼女をきれいに拭いた。


「お弁当、ありがとう。今から食べるよ」

「うん。美味しく出来てますように!」


 裏口で抱き合ってキスをした。本当に唇がはれるくらいキスを重ねた。本当に好きだよ、坂口さん。本当に……いつまでも。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る