第8話(小学4年生・完)
小学4年生だった私は、剣道を高校3年生まで続けた。
小学生当時は試合が毎週のようにあった。うちら三教堂と対戦する相手チームはパンフレットを見て「勝った」と喜ぶくらいのポンコツチームだった。団体戦は5人で戦うのだが男3人、女2人がうちのメンバーだ。
1回戦で負けてすぐに道場に帰っていた。そして道場内で野球、ホッケーなどをして遊んだ。これらの遊びは伝統化されて引き継がれルールが確立されていた。「負けては遊ぶ」その繰り返しだった。強くなりたい、悔しいなどは皆無だった。
ある試合で三教堂のともちゃんが女子個人戦決勝まで勝ち進んだ。
決勝。強豪チーム北安がうちらと並んで応援してくれた。男子団体、男子個人で優勝していた。チームは違っても学校は同じだし
「いっしょに応援してくれると?」
「あたりまえたい。おまえたちも負けてもさっさっと帰らず人がやっているのをみたら?」主将、原から言われた。返す言葉がない。
ともちゃんは接戦のすえ優勝した。泣いていた。嬉しそうだった。「がんばっていたもんね」3弱男子にも考えなければならない時が来たよう気がした。
それから三教堂の女子は強いといわれるようになった。パンフレットで女子三教堂だったら相手がガッカリするところまで来た。
しかし長谷部先生は試合の勝ち負けに関して何かおっしゃることは一切なかった。
大将の英ちゃんが頭角を現し始めたのもこの頃だ。練習への取組方が変わった。ついで秀も。私はふたりに合わせる程度でやっていた。
うちらの2学年下の男の子が2名入門してきた。潤と田中だ。ライバル同士で成長も早かった。
私達も小学6年生終わりになり、部活をどうするかが話題となった。中学校も全国有数の強豪チームで練習が厳しいと聞いていた。道場の先輩はバスケ部でうちにおいでよと言ってくれた。
英ちゃん、秀は剣道部に入ると言った。
「徹はどうすると?」と英ちゃん。
「一人だけ違うのはいやだよ。剣道でいいよ」
この年になっても自分の意思で物事を決められないのは「弱さ」として一生引きずることになる。
それでも三教堂から北安メンバーがいる中学剣道部に入り、高校剣道部というラインを作ったのは僕たちだった。
潤と田中も僕たち通りに中学剣道部に進んだ。ふたりは北安から来た連中に揉まれながらも3年生ではふたりともレギュラーを勝ち取った。そしてその年の中体連で日本一になる。
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