第2話(35歳)

 地方の大学にしてはやたらと偏差値の高い大学を卒業し、外食産業に就職した。マスコミ希望だったがバブル期が一年前に終わり就職氷河期だった。外食産業で10年勤めて辞めた。お金はあったので当時の妻は何も言わなかった。


 失業手当をもらいながら国家資格の勉強をした。試験が終わったので結果が出る前に軽い気持ちで就職した。それが失敗だった。合格率9%の試験に受かってしまった。

 合格発表の日、会社のパソコンで確認した

「合格した」それで満足だった。がんばって勉強して幸いにして結果が残せた。

なのに……


入社以来お世話になっている後藤課長が偶然後ろを通りかかったのでついつい偉そうに、

「しかじかの試験に合格しました」と報告した、

「フ~ン、あっそ。よかったじゃん」との返事。

その資格は弁護士や司法書士ほどメジャーではなかったのでその先輩社員はその資格の難度を知らなかったのだと思う。

「言わなければよかった」

 言ってしまったこの自尊心からでた一言が今後の私の人生を大きく大きく狂わせてしまう。

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